報恩坊の怪しい偽作家!

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原案紹介 11

2013-10-15 00:16:39 | 日記
 ユタはある夢を見て目が覚めた。それは、断片的な絵が現われては消える変な夢だったが、とにかくその主人公はマリアだった。キリスト教会で行われている葬式と思しき映像、墓の前で泣き崩れるマリア、その後で飛び降り自殺を図るも、地面に叩きつけられる直前に光に包まれ、一命を取り留めた映像。その後ろには、イリーナがいて……。
「……変な夢」
 そこで目が覚めた。ユタの異能の1つである。

 同じ頃、同じ屋敷の別の部屋では……。
「どうしたの?怖い顔して。マリア、低血圧だったっけ?」
 不機嫌そうな顔をして起き上がるマリアに、同室で寝ていたイリーナが話し掛けた。
「……あの男に、過去を覗かれた……!」
「あの男って?」
「私の師匠なら知ってるくせに」
「稲生君ね。魔道師の素質があっていいわね」
「男が魔道師なんて……」
「いやいや、おかしくないでしょ。だったら、“ハリー・ポッター”の立場、無いじゃんよ?」
「魔道師のくせに見てたのか……」
「映画も全部見たし、原作小説も全部揃えたわよ。新しい魔術のアイディア出しにいいね」
「さすがは師匠」
「ま、魔法学校みたいなものはちょっと無理だけど……」
「まだ起床時間まで先なので、もう1度寝る」
「はい、お休みー」
(師匠ぐらいの大魔道師になれば、睡眠だって強い魔術を使った時くらいしか必要無くなるだろうに……)

 翌朝……。
「おはよう!よく眠れた?」
 ユタと威吹が屋敷の食堂に向かうと、もう既にマリアとイリーナが席に着いていた。
「おはようございます。……イリーナさん、元気ですね」
 ユタは苦笑にも似た笑みを浮かべた。
「そう?いつもこんなもんよ」
「師匠は馬鹿に元気で、弟子は鬱か。面白いな」
 威吹は嫌味を言った。それほどまでに、マリアはユタ達の方も見ずにトーストを齧っていた。
「何かね、低血圧気味なのよ。気にしないで」
「そうですか。そうですよね」
「それで、どう?葉っぱを飲む気になった?」
「その前に1つ質問させてください」
「なに?」
「その死生樹の葉、マリアさんは飲んだ事あるんですか?」
「!」
 マリアはこめかみに努筋を浮かべた。
「そんなこと聞いて、どうするの?」
「夢を見たんです。マリアさんのことで」
「人の過去の記憶を勝手に……!」
 イリーナはそんな弟子の怒りを抑えた。
「あなた、何と言うか……魔力が付き過ぎてるわ。魔道師の修行なんてしてないわよね?威吹君の影響にしても、不自然だし……」
「ユタは生まれつき、霊力が強かったんだ。オレもそのおかげで、封印を解いてもらえたんだからな」
「修行と言えば、顕正会で仏法はやってましたよ」
「ああ、そのせいだ」
 イリーナは確信を持って言った。
「ヘタに変な修行をすると、魔力が贅肉のように付いちゃうからね。気を付けないとあなた、魔力が暴走して大変なことになるわよ?」
「ええっ!?で、でも、もう顕正会は辞めました」
「あ、そう?まあ、それならいいんだけど……」
「宗教をやると、霊力だか魔力だかが付くんですか?」
「一概に全部がそうとは言えないけどね。でも、ちゃんとした聖職者もいない新興宗教だと、変な力が付く傾向にあるみたいね」
「そうだったのか……」
「で、さっきのあなたの質問。マリアは飲んでないわよ」
「えっ?」
「確かにあなたが見た夢の通り、マリアもまた大切な人を失って悲しみに打ちひしがれたわ。だけど、大きな違いがあるの」
「大きな違い?」
「あなたは普通の人間で、マリアは魔道師だってこと」
「えっ?ちょっと仰ってる意味がよく分からないんですけど……」
「つまり、マリアが魔道師になる為には、逆に飲んじゃいけなかったのね」
「はあ……」
「あなたは魔道師になる気はある?」
「いえ。ちょっとそれは……」
「でしょ。じゃあ、飲んでも大丈夫」
「ユタ。無理しなくてもいいんだよ?」
 威吹が心配そうに言った。
「まず間違いなく、命の保証はするから。それと、普段の日常生活も大丈夫」
 イリーナは大きく頷いた。威吹はイリーナの言葉の真意を読み取ろうとした。が、できなかった。言葉の感じからして、嘘を言っているようには見えなかったが……。
「……飲みます。この為に、ここまで来たんです。飲ませてください」
 ユタは意を決したように答えた。
「あなた達、紅茶を入れてくれない?死生樹の葉っぱも、そこに混ぜてね」
 イリーナは給仕をしている人形達に命じた。
「紅茶?」
 ユタは目を見開いた。
「そのままで飲むより、紅茶に混ぜて飲んだ方が飲みやすいよ?」
「そういうもんですか」
 

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