[2月25日14:00.天候:晴 福島県耶麻郡猪苗代町 野口英世記念館・駐車場]
出発の時間になり、バスに戻ってくる東京中央学園の生徒達。
当然、引率の教師達が点呼を取って、生徒が置き去りにされないようチェックをしている。
愛原:「先生、名簿と生徒さんの数は合いますか?」
1組担任:「合いますよ」
愛原:「知らない顔が乗ってきているなんてことはありませんね?」
1組担任:「当たり前ですよ。どうしてですか?」
担任教師の目は上手く誤魔化せている。
私は1号車に乗り、マイクを手に取った。
愛原:「1組の皆さん、私はPTA会長代理の愛原です。今、皆さんの周りで、見たことのない人が隣にいるなんてことは無いですか?」
ざわめく車内。
しかし、手を挙げる者はいなかった。
愛原:「名簿から1人ずつ名前を読み上げます。呼ばれたら手を挙げて返事をしてください」
私は1人ずつ名前を読み上げた。
愛原:「今、名前を呼ばれていない人はいますか?周りで、『この人、呼ばれてません』って人はいませんか?……いませんね。最後に、写真を撮ります」
私はデジカメで、もう1枚は同行のカメラマンが持っている一眼レフカメラで撮影してもらった。
同じことを2号車にもする。
しかし、2号車も同じだった。
一応、私達が乗っている3号車にも同じことをする。
しかし、リサは3号車からは違和感はしないという。
愛原:「やはり、ダメか……」
私は眉を潜めて首を傾げた。
リサ:「わたし、ウソついてないよ!?」
絵恋:「そうですよ!リサさんがウソをつくわけがないです!」
愛原:「分かってるよ。……ありがとうございます。出発してください」
バスガイド:「はい。それでは皆様、出発致します」
バスは再び国道49号線に入った。
バスガイド:「皆様、最後の観光、如何だったでしょうか?バスはこれより、猪苗代磐梯高原インターより磐越自動車道に入り、郡山市へと向かいます。……」
リサ:「分からない……。一体何なのか、分からない……」
リサも頭を抱えた。
気配はするのに、全く見えないのだ。
愛原:「もしかして、幽霊じゃないだろうな?」
絵恋:「ええっ!?」
愛原:「“トイレの花子さん”だって実在したんだぞ?怪しいじゃないか」
絵恋:「それは……」
[同日14:25.天候:晴 福島県郡山市熱海町玉川 磐越自動車道・五百川パーキングエリア]
本当なら郡山駅まで直行するはずである。
ところがバスは、途中で唯一のパーキングエリア、五百川(ごひゃくがわ)パーキングエリアに立ち寄った。
何でも、1号車で具合の悪い生徒が出たらしい。
担任教師に連れられて、トイレに向かう女子生徒がいた。
大沢:「何でも、不気味な人影を見たってことで、大声を上げて失神してしまったんです」
愛原:「ええっ!?」
1号車に添乗しているツアコンの大沢さんが、私に言った。
私は1号車に乗り込んだ。
愛原:「不気味な人影を見たというのは!?」
女子生徒A:「そこです……」
他の生徒達も、近くにいたコ達が動揺していた。
男子生徒:「そこ(9Cと9D)の席は空いてたんですよ。で、こっち(9B)に座っていた佐々木さん(叫び声を上げた女子生徒)が、そっち(9Cと9D)の方を見たら、黒い人影がそこ(9D)席に座っていたっていうんです」
男子生徒は8D席に座っていた。
愛原:「キミの真後ろだな。何か気配は感じた?」
男子生徒:「いや、話をしてたので、気が付かなかったです」
愛原:「そうか……」
女子生徒B:「佐々木さん、霊感強いもんね」
女子生徒C:「旧校舎に行くと、必ず何か見るって言うし……」
おいおい、本当に幽霊かよ……。
愛原:「リサ!ちょっと見てくれ!」
私は3号車からリサを呼び寄せると、件の座席を調べさせた。
リサは座席を見るだけでなく、モケットの匂いも嗅いで調べてみた。
リサ:「微かにBOWの臭いがする……」
愛原:「なにっ!?」
リサ:「でも、この匂いって……どこかで……」
愛原:「知っている匂いなのか?」
リサ:「多分……。でも、何だろう?よく思い出せない」
愛原:「でも、幽霊ではないんだな?」
リサ:「多分。“花子さん”は匂わなかったし」
自分もバリバリのBOWであるリサが、『BOWの臭い』だと判断したのだからそうなのだろう。
私は一応、その座席の写真を撮った。
もしかしたら、何か写るかもしれないと思ったのだ。
しかし、モニタで確認したが、それらしいのは写っていなかった。
[同日15:10.天候:晴 福島県郡山市燧田 JR郡山駅]
バスは無事にJR郡山駅に着いた。
パーキングエリアを出てからは、特に何事も無かった。
あのメモのある通り、本当に『今は』何もしないつもりなのだろう。
だが、まだ油断はできない。
バスを降りて、ぞろぞろと駅構内に入って行く。
その間、リサは眉を潜めていた。
聞くと、未だに違和感はあるという。
その違和感は、BOWの気配だということが分かった。
明らかにBOWがこの団体の中に紛れ込んでいる。
しかし、それは分からない。
愛原:「なあ?もしかしたら、姿を消せるBOWなのかもな」
リサ:「姿を消せる……。消せたところで、臭いや気配まで消せるわけじゃない。だから、本当は私の目や鼻は誤魔化せないはず。だけど、今は誤魔化されてる。……悔しい」
愛原:「うーん……」
時間まで、コンコース上に整列して待つことになった。
この間、トイレに行きたい人は行って良いことになる。
私は善場主任への連絡を行なった。
特に、五百川パーキングエリアでの出来事は重要だ。
善場:「そうですか。リサでも分かりませんでしたか……」
愛原:「そうなんです。ただ、どこかで覚えのある匂いではあるようですが……」
善場:「それは重要ですね。早いとこ、リサには思い出してもらう他ありません」
愛原:「どうしてリサは思い出せないのでしょうか?」
善場:「それは、記憶が曖昧になっているからでしょう。リサも色々なBOWと接してきました。その中には、今みたいにリサの目や鼻を誤魔化せる者もいたかもしれません。そういう時に限って、あまり印象が無かったのかもしれませんね」
愛原:「一体、どういうことなんでしょうな?『今は』というのは……」
善場:「分かりませんが、引き続き警戒は怠らないようにお願いします」
愛原:「分かりました」
出発の時間になり、バスに戻ってくる東京中央学園の生徒達。
当然、引率の教師達が点呼を取って、生徒が置き去りにされないようチェックをしている。
愛原:「先生、名簿と生徒さんの数は合いますか?」
1組担任:「合いますよ」
愛原:「知らない顔が乗ってきているなんてことはありませんね?」
1組担任:「当たり前ですよ。どうしてですか?」
担任教師の目は上手く誤魔化せている。
私は1号車に乗り、マイクを手に取った。
愛原:「1組の皆さん、私はPTA会長代理の愛原です。今、皆さんの周りで、見たことのない人が隣にいるなんてことは無いですか?」
ざわめく車内。
しかし、手を挙げる者はいなかった。
愛原:「名簿から1人ずつ名前を読み上げます。呼ばれたら手を挙げて返事をしてください」
私は1人ずつ名前を読み上げた。
愛原:「今、名前を呼ばれていない人はいますか?周りで、『この人、呼ばれてません』って人はいませんか?……いませんね。最後に、写真を撮ります」
私はデジカメで、もう1枚は同行のカメラマンが持っている一眼レフカメラで撮影してもらった。
同じことを2号車にもする。
しかし、2号車も同じだった。
一応、私達が乗っている3号車にも同じことをする。
しかし、リサは3号車からは違和感はしないという。
愛原:「やはり、ダメか……」
私は眉を潜めて首を傾げた。
リサ:「わたし、ウソついてないよ!?」
絵恋:「そうですよ!リサさんがウソをつくわけがないです!」
愛原:「分かってるよ。……ありがとうございます。出発してください」
バスガイド:「はい。それでは皆様、出発致します」
バスは再び国道49号線に入った。
バスガイド:「皆様、最後の観光、如何だったでしょうか?バスはこれより、猪苗代磐梯高原インターより磐越自動車道に入り、郡山市へと向かいます。……」
リサ:「分からない……。一体何なのか、分からない……」
リサも頭を抱えた。
気配はするのに、全く見えないのだ。
愛原:「もしかして、幽霊じゃないだろうな?」
絵恋:「ええっ!?」
愛原:「“トイレの花子さん”だって実在したんだぞ?怪しいじゃないか」
絵恋:「それは……」
[同日14:25.天候:晴 福島県郡山市熱海町玉川 磐越自動車道・五百川パーキングエリア]
本当なら郡山駅まで直行するはずである。
ところがバスは、途中で唯一のパーキングエリア、五百川(ごひゃくがわ)パーキングエリアに立ち寄った。
何でも、1号車で具合の悪い生徒が出たらしい。
担任教師に連れられて、トイレに向かう女子生徒がいた。
大沢:「何でも、不気味な人影を見たってことで、大声を上げて失神してしまったんです」
愛原:「ええっ!?」
1号車に添乗しているツアコンの大沢さんが、私に言った。
私は1号車に乗り込んだ。
愛原:「不気味な人影を見たというのは!?」
女子生徒A:「そこです……」
他の生徒達も、近くにいたコ達が動揺していた。
男子生徒:「そこ(9Cと9D)の席は空いてたんですよ。で、こっち(9B)に座っていた佐々木さん(叫び声を上げた女子生徒)が、そっち(9Cと9D)の方を見たら、黒い人影がそこ(9D)席に座っていたっていうんです」
男子生徒は8D席に座っていた。
愛原:「キミの真後ろだな。何か気配は感じた?」
男子生徒:「いや、話をしてたので、気が付かなかったです」
愛原:「そうか……」
女子生徒B:「佐々木さん、霊感強いもんね」
女子生徒C:「旧校舎に行くと、必ず何か見るって言うし……」
おいおい、本当に幽霊かよ……。
愛原:「リサ!ちょっと見てくれ!」
私は3号車からリサを呼び寄せると、件の座席を調べさせた。
リサは座席を見るだけでなく、モケットの匂いも嗅いで調べてみた。
リサ:「微かにBOWの臭いがする……」
愛原:「なにっ!?」
リサ:「でも、この匂いって……どこかで……」
愛原:「知っている匂いなのか?」
リサ:「多分……。でも、何だろう?よく思い出せない」
愛原:「でも、幽霊ではないんだな?」
リサ:「多分。“花子さん”は匂わなかったし」
自分もバリバリのBOWであるリサが、『BOWの臭い』だと判断したのだからそうなのだろう。
私は一応、その座席の写真を撮った。
もしかしたら、何か写るかもしれないと思ったのだ。
しかし、モニタで確認したが、それらしいのは写っていなかった。
[同日15:10.天候:晴 福島県郡山市燧田 JR郡山駅]
バスは無事にJR郡山駅に着いた。
パーキングエリアを出てからは、特に何事も無かった。
あのメモのある通り、本当に『今は』何もしないつもりなのだろう。
だが、まだ油断はできない。
バスを降りて、ぞろぞろと駅構内に入って行く。
その間、リサは眉を潜めていた。
聞くと、未だに違和感はあるという。
その違和感は、BOWの気配だということが分かった。
明らかにBOWがこの団体の中に紛れ込んでいる。
しかし、それは分からない。
愛原:「なあ?もしかしたら、姿を消せるBOWなのかもな」
リサ:「姿を消せる……。消せたところで、臭いや気配まで消せるわけじゃない。だから、本当は私の目や鼻は誤魔化せないはず。だけど、今は誤魔化されてる。……悔しい」
愛原:「うーん……」
時間まで、コンコース上に整列して待つことになった。
この間、トイレに行きたい人は行って良いことになる。
私は善場主任への連絡を行なった。
特に、五百川パーキングエリアでの出来事は重要だ。
善場:「そうですか。リサでも分かりませんでしたか……」
愛原:「そうなんです。ただ、どこかで覚えのある匂いではあるようですが……」
善場:「それは重要ですね。早いとこ、リサには思い出してもらう他ありません」
愛原:「どうしてリサは思い出せないのでしょうか?」
善場:「それは、記憶が曖昧になっているからでしょう。リサも色々なBOWと接してきました。その中には、今みたいにリサの目や鼻を誤魔化せる者もいたかもしれません。そういう時に限って、あまり印象が無かったのかもしれませんね」
愛原:「一体、どういうことなんでしょうな?『今は』というのは……」
善場:「分かりませんが、引き続き警戒は怠らないようにお願いします」
愛原:「分かりました」
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