報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「代替修学旅行の終わり」

2022-03-11 14:16:21 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月25日17:10.天候:晴 東京都台東区上野 JR上野駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、上野です。山手線、京浜東北線、常磐線、地下鉄銀座線、地下鉄日比谷線と京成線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。上野の次は、終点東京です〕

 列車は日暮里駅から地下トンネルに潜り込んだ。
 修学旅行生達は荷棚から荷物を下ろしたり、降りる準備をしている。
 中には寝ている同級生を起こしたり、この期に及んでイタズラを企てる者も。

 愛原:「皆さん、そろそろ降りる準備をしてください」

 私は車内の生徒達に降りる準備をするよう、声掛けして回った。

 絵恋:「あーあ……。リサさんとの楽しい旅行も、これで終わりかぁ……」

 私の後ろの席に座っていた絵恋さんが言う。

 リサ:「楽しい時間はあっという間。今日はちょっと邪魔されたけど」
 絵恋:「上野凛さんって、凄い能力持ってるのね」
 リサ:「同じBOWでも、わたしとは少し違う。それは分かっていたけど、まさか姿を消せるとは……」
 愛原:「厳密には姿を消せるわけじゃないみたいだよ。厳密にはね」

 特異菌感染者の特技の1つ、姿隠し。
 でも、本当に姿を消しているわけではない。
 人間やBOWの錯覚を利用しているだけ……のはずなのだが、凛さんにあっては、本当に姿を消しているかのようだ。

 リサ:「入学してきたら、『先輩からの洗礼』を受けさせてやろう」
 絵恋:「お手伝いします!」
 愛原:「“花子”先輩から、『イジメ、ダメ!ゼッタイ!』という指導を受けたはずだが?」
 リサ:「い、イジメじゃないです。『洗礼』『歓迎』『イジリ』です」
 愛原:「はい、加害者の言い分!」
 絵恋:「『イジメは無かったです』」
 愛原:「頭の悪い学校と教育委員会の言い訳」
 絵恋:「『イジメは少しあったかもしれないが、それが自殺の原因とは限らない今日この頃です』」
 愛原:「狡賢い教育委員が1人でも紛れ込んでいる教育委員会の言い分」
 高橋:「取りあえず、ムカついたらボコしとけ」
 リサ:「うん、わかったっ!」
 愛原:「高橋君くん、後でちょっとお話ししようか~?」

 列車は地下深いホームに到着した。
 日本でも珍しい地下にある新幹線ホームである。

 愛原:「停車時間は1分です!慌てず且つ速やかに降りてください!忘れ物と落とし物に注意してください。もしも忘れ物や落とし物をした場合、東京駅まで取りに行くことになります。東京駅日本橋口、東京車掌区の隣まで取りに行くハメになりますからね!気をつけてください!」

 JR東日本東京駅の遺失物センターの場所は、本当に分かりにくい。
 JR東海のそれは八重洲中央口改札を出た所にあるので分かりやすいが、JR東日本の場合は口でも説明できないような場所にある。
 強いて言うなら、JR東日本日本橋口改札の裏手。
 東京車掌区の入口の手前を右。
 この説明で辿り着ければ、あなたは東京駅の全てを攻略できるだろう。
 良いか?日本橋口というと、JR東海ばかりが目立つが、ポツンと1つだけあるJR東日本の改札口が目印だ。
 え?JR東海とJR東日本の区別が付かない?
 最寄りの鉄ヲタへご一報を!
 ウザい説明をされますw

〔ドアが開きます〕
〔「ご乗車ありがとうございました。上野、上野です。車内にお忘れ物、落とし物の無いよう、お降りください。……」〕

 ドアが開くと、地下ホームに構内放送が響き渡った。
 ぞろぞろと一斉に生徒達が降りて行く。

 愛原:「降りましたら、エスカレーターでコンコースに上がってください!」

 私も誘導員として活動する。
 こういう時、鉄ヲタの知識が役に立つ。
 上野駅の新幹線コンコースには、団体が集合できる広いスペースがあり、そこに集まって解散となる。
 但し、団体乗車券の都合上、改札口を出るまでは団体行動である。
 改札口を出てから、本当の解散である。

 絵恋:「あーあ……。大宮駅で降りれば楽なのに、メンドくさい……」
 リサ:「サイトー、実家に帰るの?」
 絵恋:「ええ」
 リサ:「また新幹線?」
 絵恋:「御冗談を。パールが電車のキップを買ってくれているから、それで帰るの。何か、特急に乗るとか言ってたけど……」
 愛原:「“スワローあかぎ”1号か。今日は平日だもんな」

 確かに17時を過ぎたこともあり、駅構内はちらほら夕方のラッシュの始まりかけを見ることができる。
 コロナ禍ということもあり、まだ17時台始めは電車は空いている。
 作者も17時上がりの日勤の時、帰りの京浜東北線は東京駅から着席できるとのこと。
 そして、コンコース上の広場に集合して帰りの点呼を取る。
 さすがに今度はリサが違和感を感じることは無かったし、名簿の数と実際の数が合わないなんてこともなかった。

 リサ:「先生は学校に行くの?」
 愛原:「いや、俺も帰るよ」

 引率の教員達は教員達で、学校に戻って色々とやることがあるらしいが、私はあくまでもPTA会長代理なので。
 会長本人なら、学校でもやることはあるのだろうが、そこまでは委託されていない。

 愛原:「明日、お家にお邪魔させて頂くよ」

 私が絵恋さんに言うと、絵恋さんは……。

 絵恋:「リサさんも来ますか!?」
 愛原:「あくまでも、キミのお父さんに報告書を持って行くだけなので、リサは連れて来ても意味がない」
 絵恋:「!」

 すると絵恋さん、はらはらと涙を流す。

 リサ:「先生……」

 リサ、ジト目で私を見る。

 愛原:「……のだが、リサのたっての希望なので、リサも連れていこう」
 リサ:「おー!さすが先生!」
 高橋:「てめぇら、先生に御礼言わんかい!」
 絵恋:「アンタもう何キャラよ!」

 その後、私は電話で斉藤社長に無事到着の報告をする。
 絵恋さんは迎えに来ていたメイドのパールと共に、在来線乗り場へ。

 パール:「愛原先生、こちら旦那様からです」

 と、何故かタクシーチケットを何枚か渡される。
 これで明日は報告に来いということか。
 東京と埼玉、両地域で営業しているタクシー会社のチケットである。
 私は既に1枚頂いているタクチケを手に、上野駅のタクシー乗り場に向かった。
 正面玄関口に優良タクシー乗り場があるので、そこから乗ることにする。
 黒塗りセダンタイプだったので、トランクに荷物を乗せ、高橋には助手席に乗ってもらった。

 愛原:「墨田区菊川1丁目までお願いします」
 運転手:「はい、かしこまりました」

 車が走り出す。
 もう夕方の時間ということもあり、車の数も多くなっていた。

 リサ:「あー、疲れた」
 愛原:「リサでも疲れること、あるの?」
 リサ:「あるよ、そりゃ」
 高橋:「明日は大雪だな」
 リサ:「何でよ?」
 高橋:「善場の姉ちゃんに、報告はいいんスか?」
 愛原:「善場主任は、明日明後日は休みだろう」

 今日は金曜日である。
 明日、斉藤社長へ報告に行くのに社長の自宅まで行くのは、土曜日だからである。

 愛原:「それに、別に善場主任から何か業務委託を受けたわけじゃないから」
 高橋:「それもそうっスね。あくまでも、今回のクライアントは斉藤社長ですよね」
 愛原:「そういうことだ」

 すっかり暗くなった東京の道を、私達のタクシーは家に向かって走って行った。

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