報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「『鬼の棲む家』地下探索」

2023-08-11 16:11:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月6日11時00分 天候:曇 栃木県日光市某所 某民泊施設]

 愛原「いや、物置部屋の方から行こう。こっちはあくまでも非常口。本来の出入口は向こうみたいだからな」
 高橋「分かりました」

 私達は再び家の中に入った。
 一応念の為、鍵だけは掛けておく。
 元は階段室だった物置部屋に戻り、そこから跳ね上げ式扉の中を覗く。
 マグライトを点灯させて、階段を下りる。

 愛原「チッ、ヒドい臭いだ」
 高橋「放置されてから、何年も経ってるって感じっスね」

 階段を下りた先には照明のスイッチがあったが、こちらをカチカチ操作しても、天井の照明は点かなかった。
 普通の蛍光灯だが、どうやらこちらは停電しているらしい。
 まあ、2階と共に地下室も減築しただろうから、通電させておく必要は無いのだろう。

 リサ「う……」

 リサは口元を押さえた。
 その理由は分かった。

 愛原「何だこれは?」

 コンクリートの壁はかなり汚れていた。
 その汚れ方は、尋常ではない。
 大きな黒い染みの汚れなのだが、まるで血しぶきが掛かってそのまんまといった感じであった。
 実際リサに言わせると、血の臭いだという。
 それも、人間の血の臭い。
 リサはついに第0形態から第1形態へと戻ってしまった。

 リサ「うう……人間の……血の匂い……」

 血の匂いにやられて、リサが暴走しかねない。

 愛原「リサ、もしも耐えられなくなったら、これを飲め」

 私はリサに水筒を渡した。
 中身は日本酒の“鬼ころし”である。
 人間にとっては普通の酒だが、鬼が飲めば、その力を封じる効果があるという。
 最近ではリサのような鬼型BOWの力を削ぐ効果があることが判明しており、暴走状態でも飲ませれば鎮めることができるとのことだ。

 リサ「わ、分かった……」
 高橋「一体、何があったんでしょうか?」
 愛原「分からんが、何かの惨劇があったんだろうな」

 もしも壁の黒い染みが本当に人間の血であるのなら、相当な量だ。
 恐らくこの血の主は、もうこの世にはいないだろう。
 しかも、1人ではないだろう。
 何人もの人間が、ここで血しぶきを上げ、壁に染みを作ったと思われる。

 高橋「先生、これを!」
 愛原「うわ……」

 血しぶきだけではなく、血の手形もあった。
 綺麗に手形を押したわけではない。
 多分、血まみれになった人間が、手探りで壁に手をつけながら歩いたのだろう。
 それで、血の手形がベタベタと付いた形になっているのだ。
 奥の方から、こっちの方……つまり、私達が下りて来た階段の方を目指していたといった感じだった。
 この血の主は、上手く地上へ逃げることができたのだろうか?

 愛原「えーと……」

 私は栗原重蔵氏から頂戴した、地下室の間取り図を確認した。

 愛原「やっぱり、この事務室からかな」
 高橋「え、でも、先生……」
 愛原「何だ?」
 高橋「鍵が掛かってますよ?」

 高橋は図面上、事務室になっている部屋のドアを指さした。
 ただの鍵ではなく、どうやらカードキーで開けるタイプのようだ。
 カードキーなんて、どこにあるのか……って、ああっ!?

 愛原「おい、これ……。アンブレラのマークだで?」

 私はカード読取機の上のマークを指さした。
 それは、開いた傘を上から見た図をデザイン化した物だった。
 明らかに、アンブレラのマークであった。
 或いは、ルーマニアのマザー・ミランダのマークか。
 アンブレラの創業者、オズウェル・E・スペンサーは医学生時代、ルーマニアにて特異菌を研究していたマザー・ミランダに師事していたことがあったという。
 アンブレラのマークは、そのマザー・ミランダの研究施設にあったマークを借用したものだということが“青いアンブレラ”の調査で分かっている。
 特異菌とは新種のカビのこと。
 しかしスペンサーはカビの繁殖力やその条件がネックと考え、より感染力の強いウィルスに勝るもの無しと判断し、マザー・ミランダの元を離れている。
 但し、けして憎んだというわけではなく、後に師事させてくれたことに対する礼状と勝手に師事から離れたことに対する詫び状を送っている。

 高橋「するとここは……?」
 愛原「天長会の施設であり、日本アンブレラの施設でもあったというわけだ。日光市といったら、他にも白井の出先があったくらいだからな」

 私は写真を撮った。
 それにしても、こう暗いのでは探索しにくい。
 それに、カードキーを開ける為の電源を確保しないといけない。
 1階部分は通電しているわけだから、どこかで何かを操作すれば、地下室も通電すると思うのだが……。

 愛原「分電盤を探せ!もしかしたら、ブレーカーが落とされてるだけかもしれん!」
 高橋「分電盤ですか?それなら……」
 愛原「知ってるのか?」
 高橋「あ、はい。この前泊まった時、1階の台所にありましたが……」
 愛原「それ、1階だけじゃなくて?」
 高橋「よくは見てませんでしたけど……」
 愛原「まあいい。ちょっと1階を見てこよう。リサも限界のようだし……」
 リサ「ウウ……!」

 リサの目は『鬼の目』となっていた。
 白目は赤黒くなっており、黒目の部分が逆に白っぽくなっている。

 愛原「リサ、“鬼ころし”を飲め!」

 リサは震える手で水筒のキャップを取ると、“鬼ころし”を一口、二口飲んだ。

 リサ「ふう……」

 効いたのか、リサの目が元に戻る。
 もっとも、白目と赤い瞳という第1形態の通常状態だが。

 愛原「一旦、地上に戻ろう」

 私達は地上に戻った。
 そして、台所に向かう。

 高橋「これなんスけどね?」

 確かに高橋が指さした所にはブレーカーがあった。
 しかし、どれもヒューズはONになっており、どうやら1階だけのようだった。

 愛原「いや、待てよ……」

 私は大広間に入った。
 布団などが入っている押し入れを開けると、分電盤の箱のようなものがあり、そこを開けると……。

 愛原「あったあった!これだ!」

 着脱式のヒューズが外れている箇所があり、その部分を見ると、掠れた文字で『B』とあった。
 他に『2』と『1』があり、それからすると、『B』とは、Basement(地下室)のBだろう。
 やはりこの家には、2階があったことを示す分電盤だ。
 しかも、もう2階なんか無いのに、『2』の部分にヒューズがはまっており、『B』の部分は外されていた。

 愛原「ヒューズを交換してやろう」

 私はゴム手袋をはめると、『2』のヒューズを外した。
 そして、代わりに『B』の部分にヒューズをはめた。

 愛原「これでいい。これで通電したはずだ」
 高橋「地下室に行ってみましょう」

 私達は再び地下への階段に向かった。

 愛原「やった!どうやら本当に通電したみたいだで!」

 階段下が明るくなっていた。
 私が入れっ放しにしたスイッチの照明だろう。

 愛原「これで、カードキーが使えるはずだ」
 高橋「でも先生、カードキーなんてどこに?」
 愛原「リサが持ってるだろう?ゴールドカードキー」
 リサ「はい」つ💳
 高橋「なるほど」

 私達は再び地下室へと向かった。

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