報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「リサが先に真相へ」

2023-12-01 20:40:49 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月2日22時30分 天候:曇 栃木県日光市某所]

 リサは仕方無く、医者の診察を受けていた。
 この場には他に老婆もいる。
 リサは浴衣の下には、黒いスポプラを着けていた。
 別に今日だけ特別というわけではなく、いつも寝る時には乳首が擦れて痛い為にスポブラを着けている。
 昔は聴診器を当てるのに上半身を全て脱がなければならなかったが、今は下着のままでも良いことになっている。
 実際この医者も、リサの上半身に聴診器を当てるのにスポプラまで脱がせることはしなかった。

 医師「ふむふむ……。じゃあ、次は背中です」
 リサ「…………」

 背中にもヒンヤリした聴診器が当てられる。

 老婆「先生、如何でしょう?」
 医師「通常の……人間と同じ心臓、そして脈拍です」
 リサ「そりゃ、そうでしょうよ」

 今のリサは人間形態である。
 ヘタに鬼形態になって、ここにいる鬼狩り隊を刺激するのはマズいと思ったからだ。

 老婆「鬼怒川の源流域に生息していた鬼共の大将は、心臓が7つ、脳が5つあったそうでございます」
 リサ「いや、もうそれ完全に化け物だし!てか、そんなに要る!?」
 医師「それでは喉を見させてください」

 医師は木のヘラを取り出した。
 紙包みをビッと破って取り出す。

 リサ「それ知ってる。アイスの棒みたいなヤツ」
 医師「はい、口を開けて」
 リサ「あ……ん」
 医師「フーム……」
 老婆「人間に化けているのに、牙は隠せないのでございますな?」
 医師「牙以外は異常なし」
 リサ「だいぶ前までは、牙も隠せてたんだけどね」
 医師「目にライトを当てます」

 医師はリサの喉を奥を照らしたペンライトを、今度は目に当てた。
 人間形態では比較的瞳の色が黒いリサだが、こうやって眩しい光を当てられると、赤く反射してしまう。
 あとは触診で甲状腺とか。

 老婆「先生、如何でございましょう?」
 医師「現時点では、この程度ですと、人間として振る舞えるレベルでしょう。何とも上手く化けれているものです」
 リサ「そりゃどうも」
 医師「それでは、最後に採血をしましょう」
 リサ「何で!?」
 医師「最低でも10本は取らせて頂きます」
 リサ「10本!?他の検査でも、3本がいい所だよ!?」
 老婆「鬼様、どうかご協力をお願いします」
 リサ「やだ!絶対ヤダ!」
 医師「やはりここは、事情を話してちゃんと協力を仰いだ方が宜しいのではないでしょうか?」
 リサ「協力?なに?」
 老婆「惣領に確認してきます」
 リサ「惣領?なに?」
 医師「それでは私は一旦、医務室に戻りますので……」
 老婆「御足労ありがとうございました」
 リサ「で、わたしは帰っていいの?」
 老婆「今夜はどうぞ御ゆるりとお休みくださいませ」
 リサ「ダメか……」

 眠くなったリサは、取りあえず布団に入ることにした。

[同日23時30分 天候:雪 同庵]

 しかし、それから1時間ほど経った時だった。

 老婆「お休みのところ、失礼致します」
 リサ「わあっ!山姥!?」

 鬼娘、山姥を怖がる。

 老婆「いえいえ、包丁は持っておりません」
 リサ「な、何だ……」
 老婆「惣領様の許可を頂きました。これより、事情を説明致します」
 リサ「いや、明日にしようよ、もう」
 老婆「事は急を要するのでございます。百聞は一見に如かず。直接、見て頂いた上で説明させて頂きたいと存じます。どうぞ、こちらへ」
 リサ「ええ……」

 リサは起き上がって布団から出た。
 浴衣がはだけて、下の黒いスポプラやプーマの黒いショーツが丸見えになってしまっている。
 リサは浴衣を直すと、老婆について行った。
 それは庵の奥で、鉄製の引き戸が閉まっていたが、それを開けると……。

 リサ「エレベーターだ!」

 何と、エレベーターがあった。
 それも普通のエレベーターではなく、扉が蛇腹の鉄格子タイプのものだった。
 老婆は慣れた手つきで、2つの引き戸を開ける。

 老婆「どうぞ」
 リサ「地下に行くの?」
 老婆「さようでございます」

 恐らく医師も、ここから出入りしたのだろう。
 老婆が外側の鉄扉と内側の蛇腹鉄格子扉を閉めると、レバーを操作した。

 リサ「レバー!?」

 それでエレベーターは地下に下りる。
 途中に地下1階や地下2階があったが、そこをスルーして最下階の地下3階まで下りた。

 老婆「こちらでございます」

 エレベーターの扉を開けると、電球の照明が点いた廊下が続いていた。

 リサ「ん?何か聞こえる……」

 それは音楽だった。
 そして、それには聞き覚えがある。

 https://www.youtube.com/watch?v=BayW7aXI0zI

 リサ「わたしのテーマだ!」

 白い仮面を着けて、日本版リサ・トレヴァーとして振る舞う時のテーマ。
 今現在は白い仮面は省略することが多い。

 老婆「こちらでございます」

 音楽が流れて来る所であろう、襖の前で止まった。
 と、同時に音楽も止まる。
 老婆が襖を開けると、そこは畳敷きの大広間になっていた。
 畳敷きではあるが、病院のベッドのような所の上に座っている者が1人。
 リサは見覚えがあった。

 リサ「鬼斬りセンパイ!?」
 栗原蓮華「久しぶりだね。人食い鬼のリサ。あれから、人を食べたりはしてないの?」
 リサ「してないよ。老廃物とか、血だけで我慢してるよ」

 蓮華は前身を包帯に包まれていた。
 顔も包帯が巻かれている。
 だがリサは匂いで分かった。

 リサ「鬼の男に……ヒドい目に遭わされたんだってね」
 蓮華「油断したよ。まさか、火炎を吐いてくるなんてね」
 リサ「わたしが一時期電撃を使えたのと同じで、そういう変な技を使って来る鬼もいるということだね。そいつの妹は逆に冷気を吐いてきたし」
 蓮華「今は電撃を使わないの?」
 リサ「また体質が変わったからね。せいぜい、静電気をちょこっと放てるくらいに弱まったよ。だから安心して」
 蓮華「どうだか……。うっ……!」
 リサ「痛むの?」
 蓮華「火傷が治っても、痕は残るし、神経だって……」
 リサ「さすがにこれは同情するな」
 老婆「同情して下さるのですね?」
 リサ「さすがにこれはね……」
 老婆「で、あるなら、あなた様の血を分けて頂きたい」
 リサ「だから何で?……はっ!」

 そこでリサは驚いた。
 ようやくこの老婆の言っていること、そして自分がここに連れて来られた理由に気づいたのであった。

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