報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「霧生市への旅」 2

2020-11-12 15:41:33 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月6日12:26.天候:晴 東京都新宿区西新宿1丁目 新宿駅・都営地下鉄新宿線(京王新線)ホーム]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今、私は助手の高橋とBOWリサ・トレヴァー『2番』と一緒に新宿駅に向かっている。
 BOW(人工生物兵器)とはいえ、うちのリサは私に懐いてくれて、上手く人間に化けて一緒に付いて来ている。
 着ている服は学校の制服だが、荷物が少し大きい。
 一体、中に何を入れているのやら……。
 本人曰く、『着替えとか』らしいが。

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、新宿、新宿です。お出口は、右側です。新宿より京王新線直通、急行、大沢……失礼しました。急行、橋本行きをご利用のお客様は、降りたホーム4番線でお待ちください。12時30分の発車です」〕

 愛原:「取りあえず新宿駅に着いたな」
 高橋:「はい」

 電車は1面2線のホームに到着した。
 都営地下鉄新宿線の終点駅であり、京王新線の始発駅でもあるこのホームは1面2線になっており、4番線と5番線になっている。
 これはこの駅を京王電鉄が管理しており、地上の京王線ホームからの続きの番号になっているからである。
 基本的には都営地下鉄と相互乗り入れを行う電車がこのホームを使用するが、たまに京王新線始発の京王線直通電車が出たりすることもある。

〔「ご乗車ありがとうございました。新宿、新宿、終点です。京王線直通、急行、橋本行きは4番線から発車致します」〕

 私達は電車を降りると、他の乗客達と共に改札口に向かった。
 もちろん、中には次の急行電車を待つ者もいる。

 愛原:「よし、着いて来いよ」
 高橋:「うス」
 リサ:「うス」
 高橋:「真似すんな!」
 リサ:「ハハハ!」

 今やすっかり兄妹のような関係になった2人。
 高橋には実の妹が田舎にいるらしいが、どうも気軽に会えない関係であるらしい。
 別にケンカしたとか、そういうわけではないらしいのだが……。

[同日12:55.天候:晴 新宿区新宿3丁目 JR新宿駅・湘南新宿ラインホーム]

 愛原:「キップは1人ずつ持とう」
 高橋:「ありがとうございます」
 リサ:「私、先生の隣がいい」
 愛原:「ああ、分かった」
 高橋:「2人席っスよね?」
 愛原:「そうだな」

 自動改札機からJR線のコンコースに入り、そこで昼食の駅弁を購入する。

 愛原:「俺は鮭はらこ弁当だ」
 高橋:「海鮮系行きますか」
 愛原:「最近、海鮮行ってないしな」
 リサ:「わたし、これ」

 リサは牛すきと牛焼肉弁当を所望した。

 高橋:「おい、先生より高いモン選ぶんじゃ無ェ」
 愛原:「といったところで、50円高いだけだろ?いいよいいよ。高橋も好きな物選べ」
 高橋:「はあ……。じゃあ、俺も先生と同じので」
 愛原:「いいのか?」

 新宿駅も特急列車が多く発着している駅なだけに、駅弁のバリエーションは豊富だ。
 上野駅や東京駅に引けを取らない。
 むしろ、小田急ホームでも、ロマンスカー向けに独自の駅弁を扱っているくらいなので、その点では新宿駅に軍配が上がるかもしれない。

 愛原:「それじゃ、行くか」

 駅弁や飲み物を購入すると、私達は乗り場に向かった。

 高橋:「車内販売あるんスか?」
 愛原:「確かJRと相互乗り入れしている特急は無いと聞いた」
 高橋:「マジっスか!?」
 愛原:「だから、ついでにキヨスクでお菓子とかジュースとか買っていいよ」
 高橋:「そうします」

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。6番線に停車中の列車は、13時ちょうど発、東武線直通、特急“きぬがわ”5号、鬼怒川温泉行きです。……〕

 キヨスクやら自動販売機やらで足りない物を買うと、私達は列車に乗り込んだ。
 GoToキャンペーンが実施されているはずだが、案外乗客は少ない。
 恐らく、東武スペーシアよりスペックが低く、車内販売も無い新宿発着の列車は人気が無いのかもしれない。
 観光目的なら、恐らくインパクトの強い東武スペーシアを狙うだろうから、これはビジネス利用としての客層だろう。
 時間帯的には、ホテルや旅館のチェックインの時刻になる15時過ぎに到着はできるのだが。

 愛原:「えーと……ここか」

 先頭車の1号車が指定されていた。
 オレンジ色のシートが並んでいる。
 運転席に1番近いデッキ側の座席が指定されていた。
 これは恐らく、リサ対策だろう。
 万が一リサが暴走した時に、すぐに電車を止められるようにし、また、BSAAなどが強硬手段に出る場合、先頭車を脱線させれば良いという考え方だ。
 その為、善場主任からは、リサと一緒に電車に乗る時は、なるべく先頭車ないしは最後尾に乗るように言われている。
 最後尾でも電車を止めることはできるし、何より外からリサを攻撃しなくてはならない場合、長編成の列車の中間車は狙いにくいが、先頭車や最後尾は狙いやすいからである。

 愛原:「こうして向かい合わせにしよう。高橋はリサの向かいに座ってくれ」
 高橋:「ハイ」

 リサは進行方向向きの窓側に座り、私はその隣、高橋はリサの向かい側に座った。
 ここで少し困るのが駅弁などの置き場。
 東武スペーシア等では窓の下に折り畳み式のテーブルが付いているのだが、JRの車両だと座席の背面またはひじ掛けに小さなテーブルが収納されているだけなのである。

 リサ:「いただきまーす」
 高橋:「もう食うのかよ」
 リサ:「お腹ペコペコだよー」
 愛原:「うん。リサの場合はガマンしない方がいい」

 この車両が指定されたメリットが発揮されては困る。

〔「ご案内致します。この列車は13時ちょうど発、東武線直通、特急“きぬがわ”5号、鬼怒川温泉行きです。座席は全て指定となっております。お手持ちの指定席特急券の座席番号をお確かめの上、指定の席にお掛けください。新宿を出ますと、池袋、浦和、大宮、栃木、新鹿沼、下今市、東武ワールドスクウェア、終点鬼怒川温泉の順に止まります。お待たせ致しました。まもなく発車致します」〕

 列車の外から微かに発車メロディの音が聞こえてくる。
 曲名は“See you again”。
 正しく曲名の通り、この駅とは暫しの間、さよならだな。
 上りの列車については、まだ聞かされていない。
 恐らく、霧生市での状況次第なのだろう。
 最悪、満身創痍でヘリに乗せられ、そのまま帰京して入院なんてことも有り得る。
 そう考えると、とても民間の探偵の仕事とは思えないが、これも報酬の為である。
 私達の乗せた列車は、定刻通りに新宿駅を発車した。

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