[11月6日12:26.天候:晴 東京都新宿区西新宿1丁目 新宿駅・都営地下鉄新宿線(京王新線)ホーム]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今、私は助手の高橋とBOWリサ・トレヴァー『2番』と一緒に新宿駅に向かっている。
BOW(人工生物兵器)とはいえ、うちのリサは私に懐いてくれて、上手く人間に化けて一緒に付いて来ている。
着ている服は学校の制服だが、荷物が少し大きい。
一体、中に何を入れているのやら……。
本人曰く、『着替えとか』らしいが。
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、新宿、新宿です。お出口は、右側です。新宿より京王新線直通、急行、大沢……失礼しました。急行、橋本行きをご利用のお客様は、降りたホーム4番線でお待ちください。12時30分の発車です」〕
愛原:「取りあえず新宿駅に着いたな」
高橋:「はい」
電車は1面2線のホームに到着した。
都営地下鉄新宿線の終点駅であり、京王新線の始発駅でもあるこのホームは1面2線になっており、4番線と5番線になっている。
これはこの駅を京王電鉄が管理しており、地上の京王線ホームからの続きの番号になっているからである。
基本的には都営地下鉄と相互乗り入れを行う電車がこのホームを使用するが、たまに京王新線始発の京王線直通電車が出たりすることもある。
〔「ご乗車ありがとうございました。新宿、新宿、終点です。京王線直通、急行、橋本行きは4番線から発車致します」〕
私達は電車を降りると、他の乗客達と共に改札口に向かった。
もちろん、中には次の急行電車を待つ者もいる。
愛原:「よし、着いて来いよ」
高橋:「うス」
リサ:「うス」
高橋:「真似すんな!」
リサ:「ハハハ!」
今やすっかり兄妹のような関係になった2人。
高橋には実の妹が田舎にいるらしいが、どうも気軽に会えない関係であるらしい。
別にケンカしたとか、そういうわけではないらしいのだが……。
[同日12:55.天候:晴 新宿区新宿3丁目 JR新宿駅・湘南新宿ラインホーム]
愛原:「キップは1人ずつ持とう」
高橋:「ありがとうございます」
リサ:「私、先生の隣がいい」
愛原:「ああ、分かった」
高橋:「2人席っスよね?」
愛原:「そうだな」
自動改札機からJR線のコンコースに入り、そこで昼食の駅弁を購入する。
愛原:「俺は鮭はらこ弁当だ」
高橋:「海鮮系行きますか」
愛原:「最近、海鮮行ってないしな」
リサ:「わたし、これ」
リサは牛すきと牛焼肉弁当を所望した。
高橋:「おい、先生より高いモン選ぶんじゃ無ェ」
愛原:「といったところで、50円高いだけだろ?いいよいいよ。高橋も好きな物選べ」
高橋:「はあ……。じゃあ、俺も先生と同じので」
愛原:「いいのか?」
新宿駅も特急列車が多く発着している駅なだけに、駅弁のバリエーションは豊富だ。
上野駅や東京駅に引けを取らない。
むしろ、小田急ホームでも、ロマンスカー向けに独自の駅弁を扱っているくらいなので、その点では新宿駅に軍配が上がるかもしれない。
愛原:「それじゃ、行くか」
駅弁や飲み物を購入すると、私達は乗り場に向かった。
高橋:「車内販売あるんスか?」
愛原:「確かJRと相互乗り入れしている特急は無いと聞いた」
高橋:「マジっスか!?」
愛原:「だから、ついでにキヨスクでお菓子とかジュースとか買っていいよ」
高橋:「そうします」
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。6番線に停車中の列車は、13時ちょうど発、東武線直通、特急“きぬがわ”5号、鬼怒川温泉行きです。……〕
キヨスクやら自動販売機やらで足りない物を買うと、私達は列車に乗り込んだ。
GoToキャンペーンが実施されているはずだが、案外乗客は少ない。
恐らく、東武スペーシアよりスペックが低く、車内販売も無い新宿発着の列車は人気が無いのかもしれない。
観光目的なら、恐らくインパクトの強い東武スペーシアを狙うだろうから、これはビジネス利用としての客層だろう。
時間帯的には、ホテルや旅館のチェックインの時刻になる15時過ぎに到着はできるのだが。
愛原:「えーと……ここか」
先頭車の1号車が指定されていた。
オレンジ色のシートが並んでいる。
運転席に1番近いデッキ側の座席が指定されていた。
これは恐らく、リサ対策だろう。
万が一リサが暴走した時に、すぐに電車を止められるようにし、また、BSAAなどが強硬手段に出る場合、先頭車を脱線させれば良いという考え方だ。
その為、善場主任からは、リサと一緒に電車に乗る時は、なるべく先頭車ないしは最後尾に乗るように言われている。
最後尾でも電車を止めることはできるし、何より外からリサを攻撃しなくてはならない場合、長編成の列車の中間車は狙いにくいが、先頭車や最後尾は狙いやすいからである。
愛原:「こうして向かい合わせにしよう。高橋はリサの向かいに座ってくれ」
高橋:「ハイ」
リサは進行方向向きの窓側に座り、私はその隣、高橋はリサの向かい側に座った。
ここで少し困るのが駅弁などの置き場。
東武スペーシア等では窓の下に折り畳み式のテーブルが付いているのだが、JRの車両だと座席の背面またはひじ掛けに小さなテーブルが収納されているだけなのである。
リサ:「いただきまーす」
高橋:「もう食うのかよ」
リサ:「お腹ペコペコだよー」
愛原:「うん。リサの場合はガマンしない方がいい」
この車両が指定されたメリットが発揮されては困る。
〔「ご案内致します。この列車は13時ちょうど発、東武線直通、特急“きぬがわ”5号、鬼怒川温泉行きです。座席は全て指定となっております。お手持ちの指定席特急券の座席番号をお確かめの上、指定の席にお掛けください。新宿を出ますと、池袋、浦和、大宮、栃木、新鹿沼、下今市、東武ワールドスクウェア、終点鬼怒川温泉の順に止まります。お待たせ致しました。まもなく発車致します」〕
列車の外から微かに発車メロディの音が聞こえてくる。
曲名は“See you again”。
正しく曲名の通り、この駅とは暫しの間、さよならだな。
上りの列車については、まだ聞かされていない。
恐らく、霧生市での状況次第なのだろう。
最悪、満身創痍でヘリに乗せられ、そのまま帰京して入院なんてことも有り得る。
そう考えると、とても民間の探偵の仕事とは思えないが、これも報酬の為である。
私達の乗せた列車は、定刻通りに新宿駅を発車した。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今、私は助手の高橋とBOWリサ・トレヴァー『2番』と一緒に新宿駅に向かっている。
BOW(人工生物兵器)とはいえ、うちのリサは私に懐いてくれて、上手く人間に化けて一緒に付いて来ている。
着ている服は学校の制服だが、荷物が少し大きい。
一体、中に何を入れているのやら……。
本人曰く、『着替えとか』らしいが。
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、新宿、新宿です。お出口は、右側です。新宿より京王新線直通、急行、大沢……失礼しました。急行、橋本行きをご利用のお客様は、降りたホーム4番線でお待ちください。12時30分の発車です」〕
愛原:「取りあえず新宿駅に着いたな」
高橋:「はい」
電車は1面2線のホームに到着した。
都営地下鉄新宿線の終点駅であり、京王新線の始発駅でもあるこのホームは1面2線になっており、4番線と5番線になっている。
これはこの駅を京王電鉄が管理しており、地上の京王線ホームからの続きの番号になっているからである。
基本的には都営地下鉄と相互乗り入れを行う電車がこのホームを使用するが、たまに京王新線始発の京王線直通電車が出たりすることもある。
〔「ご乗車ありがとうございました。新宿、新宿、終点です。京王線直通、急行、橋本行きは4番線から発車致します」〕
私達は電車を降りると、他の乗客達と共に改札口に向かった。
もちろん、中には次の急行電車を待つ者もいる。
愛原:「よし、着いて来いよ」
高橋:「うス」
リサ:「うス」
高橋:「真似すんな!」
リサ:「ハハハ!」
今やすっかり兄妹のような関係になった2人。
高橋には実の妹が田舎にいるらしいが、どうも気軽に会えない関係であるらしい。
別にケンカしたとか、そういうわけではないらしいのだが……。
[同日12:55.天候:晴 新宿区新宿3丁目 JR新宿駅・湘南新宿ラインホーム]
愛原:「キップは1人ずつ持とう」
高橋:「ありがとうございます」
リサ:「私、先生の隣がいい」
愛原:「ああ、分かった」
高橋:「2人席っスよね?」
愛原:「そうだな」
自動改札機からJR線のコンコースに入り、そこで昼食の駅弁を購入する。
愛原:「俺は鮭はらこ弁当だ」
高橋:「海鮮系行きますか」
愛原:「最近、海鮮行ってないしな」
リサ:「わたし、これ」
リサは牛すきと牛焼肉弁当を所望した。
高橋:「おい、先生より高いモン選ぶんじゃ無ェ」
愛原:「といったところで、50円高いだけだろ?いいよいいよ。高橋も好きな物選べ」
高橋:「はあ……。じゃあ、俺も先生と同じので」
愛原:「いいのか?」
新宿駅も特急列車が多く発着している駅なだけに、駅弁のバリエーションは豊富だ。
上野駅や東京駅に引けを取らない。
むしろ、小田急ホームでも、ロマンスカー向けに独自の駅弁を扱っているくらいなので、その点では新宿駅に軍配が上がるかもしれない。
愛原:「それじゃ、行くか」
駅弁や飲み物を購入すると、私達は乗り場に向かった。
高橋:「車内販売あるんスか?」
愛原:「確かJRと相互乗り入れしている特急は無いと聞いた」
高橋:「マジっスか!?」
愛原:「だから、ついでにキヨスクでお菓子とかジュースとか買っていいよ」
高橋:「そうします」
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。6番線に停車中の列車は、13時ちょうど発、東武線直通、特急“きぬがわ”5号、鬼怒川温泉行きです。……〕
キヨスクやら自動販売機やらで足りない物を買うと、私達は列車に乗り込んだ。
GoToキャンペーンが実施されているはずだが、案外乗客は少ない。
恐らく、東武スペーシアよりスペックが低く、車内販売も無い新宿発着の列車は人気が無いのかもしれない。
観光目的なら、恐らくインパクトの強い東武スペーシアを狙うだろうから、これはビジネス利用としての客層だろう。
時間帯的には、ホテルや旅館のチェックインの時刻になる15時過ぎに到着はできるのだが。
愛原:「えーと……ここか」
先頭車の1号車が指定されていた。
オレンジ色のシートが並んでいる。
運転席に1番近いデッキ側の座席が指定されていた。
これは恐らく、リサ対策だろう。
万が一リサが暴走した時に、すぐに電車を止められるようにし、また、BSAAなどが強硬手段に出る場合、先頭車を脱線させれば良いという考え方だ。
その為、善場主任からは、リサと一緒に電車に乗る時は、なるべく先頭車ないしは最後尾に乗るように言われている。
最後尾でも電車を止めることはできるし、何より外からリサを攻撃しなくてはならない場合、長編成の列車の中間車は狙いにくいが、先頭車や最後尾は狙いやすいからである。
愛原:「こうして向かい合わせにしよう。高橋はリサの向かいに座ってくれ」
高橋:「ハイ」
リサは進行方向向きの窓側に座り、私はその隣、高橋はリサの向かい側に座った。
ここで少し困るのが駅弁などの置き場。
東武スペーシア等では窓の下に折り畳み式のテーブルが付いているのだが、JRの車両だと座席の背面またはひじ掛けに小さなテーブルが収納されているだけなのである。
リサ:「いただきまーす」
高橋:「もう食うのかよ」
リサ:「お腹ペコペコだよー」
愛原:「うん。リサの場合はガマンしない方がいい」
この車両が指定されたメリットが発揮されては困る。
〔「ご案内致します。この列車は13時ちょうど発、東武線直通、特急“きぬがわ”5号、鬼怒川温泉行きです。座席は全て指定となっております。お手持ちの指定席特急券の座席番号をお確かめの上、指定の席にお掛けください。新宿を出ますと、池袋、浦和、大宮、栃木、新鹿沼、下今市、東武ワールドスクウェア、終点鬼怒川温泉の順に止まります。お待たせ致しました。まもなく発車致します」〕
列車の外から微かに発車メロディの音が聞こえてくる。
曲名は“See you again”。
正しく曲名の通り、この駅とは暫しの間、さよならだな。
上りの列車については、まだ聞かされていない。
恐らく、霧生市での状況次第なのだろう。
最悪、満身創痍でヘリに乗せられ、そのまま帰京して入院なんてことも有り得る。
そう考えると、とても民間の探偵の仕事とは思えないが、これも報酬の為である。
私達の乗せた列車は、定刻通りに新宿駅を発車した。
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