報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「霧生市への旅」 1

2020-11-10 20:02:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月6日10:00.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はいよいよ霧生市へ入る1日前だ。
 今日からもう動くことになる。
 まず私と高橋は、善場主任の待つNPO法人デイライトの事務所へ向かった。
 そこで事前の打ち合わせを行う。

 善場:「今日は霧生市の近隣自治体まで行き、そこで前泊します。霧生市には明朝、出発します。立入制限区域にBSAAがいますので、そこでBSAAの車に乗り換えて入ります」
 愛原:「一応、BSAAの護衛付きなんですね」
 善場:「それはもう。愛原所長方が歴戦の猛者だということは分かっていますが、やはり一般人ですので。あくまでも今回の目的は、霧生市並びにその周辺に潜伏していると思われるリサ・トレヴァー『1番』の捜索です。情報によりますと、他のリサ・トレヴァーも潜伏していると思われます。掃討はBSAAに任せて、愛原所長方は捜索に協力して頂ければと思います」
 愛原:「それでも護身用に銃は持ってていいんですよね?」
 善場:「それは許可されます」
 愛原:「さすがにもうゾンビはいないですか?」
 善場:「はい。BSAAや“青いアンブレラ”が何度も市内を探索していますが、もうそのようなクリーチャーの遭遇は無いとのことです」
 愛原:「分かりました」
 善場:「問題はリサ・トレヴァー達です。彼女らの掃討が完了次第、町は安全宣言が出されます。これは復興への第一歩なのです」
 愛原:「それは責任重大ですね。それで、まずはどこまで行くんですか?」
 善場:「所長方は新宿駅13時ちょうど発の特急“きぬがわ”で、まずは下今市駅まで行って頂きます。栗原姉妹とは下今市駅で合流する形となります」
 愛原:「? 何か手間掛かりますね?浅草駅から一緒に行けばいいのに……」
 善場:「これは栗原姉妹に対する配慮です。どうしても愛原リサは、栗原蓮華さんを襲った『1番』と同族の『2番』であり、そして妹の愛里さんを愛原リサは襲いましたね?イジメという形で」
 愛原:「ああ……」
 善場:「あの姉妹は浅草駅から特急で下今市駅まで行きます。そこで合流するわけです」
 高橋:「結局同じじゃね?」
 善場:「少しでも顔合わせの時間を少なくする配慮です」
 愛原:「ちょっと待ってください、主任」
 善場:「何でしょうか?」
 愛原:「愛里さんは銃刀法違反で捕まったはずでは?」
 善場:「そこは……私達の方で『何とか』しましたよ。霧生市内の探索において、かつて住民だった人達の土地勘は活用できます」

 司法取引でもしたか。
 霧生市探索に協力すればすぐに釈放するし、逮捕ではなく、補導とすると。
 例えすぐに釈放されても、逮捕であれば、それだけで学校は退学になる。
 恐らく、『凶器所持の廉で補導した』ということにしたのだろう。
 日本刀でリサを刺したことについては、『リサは人間ではないから』ということで不問としたか。
 そもそもリサの傷の回復の速さが人外であり、今現在は傷痕すら無い状態だ。
 つまり、証拠は無い。

 高橋:「さすが姉ちゃん達だ」
 愛原:「逆らわない方がいいぞ」
 高橋:「うス」
 愛原:「私と高橋とリサで向かうわけですね?」
 善場:「お願いします。栗原姉妹は私が連れて行きますから、下今市で落ち合いましょう」
 愛原:「分かりました」

[同日12:07.天候:晴 墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線1101T電車先頭車内]

 私達は一旦帰宅すると、荷物をまとめた。
 リサは今日、学校は午前中だけである。
 リサの帰宅を待って、それから菊川駅に向かった。

 リサ:「お昼はどうするの?」
 愛原:「駅弁を買って、車内で食べよう。今から行けば余裕で新宿駅に着くから、ゆっくり駅弁買えるよ」

 高野君が同行しないのは、あくまで高野君はうちの事務所の事務員だからだ。
 私的には高野君にも同行してもらうと良かったのだが。
 何しろ、一緒にあの霧生市の地獄を潜り抜けた仲間なんだからな。

〔まもなく1番線に、各駅停車、新宿行きが10両編成で到着します。黄色いブロックの内側で、お待ちください。終点、新宿で、京王新線直通、急行、橋本行きにお乗り換えができます〕

 電車が到着する。
 緑色と紺色が目立つ東京都交通局の車両だった。
 今はホームドアがあるので、ホームドアの開閉がある分、電車のドア開閉のタイミングにブランクが発生するようになった。

〔1番線の電車は、各駅停車、新宿行きです。きくかわ~、菊川~〕

 私達は先頭車に乗り込んだ。
 電車は比較的空いていて、私達は空いている緑色とクリーム色の座席に座った。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 JRの通勤電車と同じ、2点チャイムが3回鳴ってドアが閉まった。
 それものそのはず。
 都営地下鉄仕様にはしているが、基本設計はJRの車両と同じだからである。
 なので、JRの通勤電車の面影がそこかしこに見受けられる。
 もっとも、この電車は規格上、JR線を走ることは絶対に無い。

〔次は森下、森下。大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Morishita.S11.Please change here for the Oedo line.〕

 リサは私の隣に座り、スマホを取り出して何やらやり取りしていた。
 どうやらラインを交わしているらしい。
 もちろん相手は斉藤絵恋さん。
 どうやら斉藤さんは、私達と行けないことが大変残念らしい。
 気持ちは分かるが、霧生市とは全く関係の無い斉藤さんを危ない目に遭わせるわけにはいかないからな。
 リサ曰く、

 リサ:「サイトーは絶対(血肉が)美味しいから、他のリサ・トレヴァー達の餌食になっちゃうよ」

 とのこと。
 もっとも、うちのリサが『マーキング』しているとのことだが、『マーキング』とは?

 高橋:「先生。何か俺達の方が遠回りさせられてるって感じですね」
 愛原:「まあ、そうだな。藤野の時は栗原さんが挑戦者だったから、向こうが不利な条件になるよう仕向けたんだろう。しかし今は『協力者』だ。逆に今回は気を使ったってことなんじゃないの?」

 今度のプロジェクトにおける重要度は、私達よりも栗原蓮華さんの方が大きい。
 これは善場主任達が追跡しているリサ・トレヴァー『1番』に直接襲われながら、唯一の生存者であり、その現場検証に協力してもらえる上、彼女自身が自分で戦える力を持っているからである。
 それに対し、我々はただ『2番』であるうちのリサを連れて行くだけに過ぎないのだから。
 うちのリサの役割は、同族として他のリサ・トレヴァーを呼び出すこと。
 そして、その力を駆使して、退治に協力することである。

 高橋:「それでも報酬はもらえるんですよね?」
 愛原:「そりゃもう。今回の経費だって、デイライトさん持ちだよ」

 この地下鉄の運賃はどうだか不明だが、まあ細かく請求すれば支給してくれるのだろう。
 新宿駅で乗り換える特急列車については、既にキップごと渡されている。

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