報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「埼京線1344K電車」

2021-09-16 21:04:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月27日13:20.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 JR北与野駅→埼京線1344K電車10号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の1番線の電車は、13時22分発、各駅停車、新宿行きです。次は、与野本町に止まります〕

 斉藤絵恋さんを無事家まで送り、昼食まで御馳走になった後で、私達は帰路に就いた。
 その際、なかなか絵恋さんが放してくれなかったのだが、何とか引き離すことに成功した。
 大宮駅まで行くならタクシーを呼んでくれるとのことだったが、また世話になるのもアレだからと、そこは固辞した。
 最寄り駅の北与野駅まで徒歩で向かった。
 暑い上に強めに吹く風は、熱気を帯びていて全く涼しくない。
 タクシー車内の涼しさが恋しくなってくる。
 BSAAとの取り決めに従い、先頭車が来る辺りで電車を待っていると、私のスマホに着信があった。
 斉藤社長からかなと思ったが、善場主任からだった。

 愛原:「もしもし、愛原です」
 善場:「愛原所長、お疲れさまです。善場です」
 愛原:「善場主任、いつもお世話になっております」
 善場:「いえ、こちらこそ。突然で申し訳ないのですが所長、今日これからお時間ありますか?」
 愛原:「あ、はい。今、埼京線の北与野駅にいます。これから事務所に戻るところですが……」
 善場:「北与野駅ですか。それでは新宿で落ち合いませんか?リサのことで話があります」
 愛原:「リサのことですか」

 私はリサをチラッと見た。
 イケメンの高橋が、20歳前後の女性に逆ナンされている。
 高橋はLGBTのBであるが、どちらかというとGに近い方のBなのでウザそうにしていた。
 タイプの女性も、霧崎さんのようなボーイッシュな感じだ。
 しかし逆ナンしている女性は、池袋や渋谷辺りを歩いていて不思議が無い感じのタイプであった。
 恐らく、そこから帰って来た、或いはこれから行くところなのだろう。
 リサはそんな高橋を冷やかしては怒られている。

 善場:「先日の検査の結果はまだ全て出てはいないのですが、どうも再検査を行うことになりそうですので……」
 愛原:「えっ、再検査?」
 善場:「はい。そうなってきますと、ちゃんとした設備の整った所に行って頂くことになります」
 愛原:「それってもしかして、藤野とか?」
 善場:「そうですね。それも選択肢の1つです。とにかく、そのことについてお話しさせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
 愛原:「分かりました。これから向かいます」

〔まもなく1番線に、各駅停車、新宿行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。次は、与野本町に止まります〕

 愛原:「13時22分発の電車に乗ります」
 善場:「13時22分発ですね。了解しました。それでは新宿駅に着きましたら、またご連絡ください」
 愛原:「分かりました。失礼します」

 私は電話を切った。
 と、同時に電車がやってくる。
 往路に乗った高崎線と同じ形式の車両だが、まず車体の帯の色や座席の色が違った。

〔きたよの、北与野。ご乗車、ありがとうございます。次は、与野本町に止まります〕

 私達は先頭車に乗り込んだ。
 そして、モスグリーンの座席に腰かける。
 高崎線のはオレンジとグリーンの2色、いわゆる湘南色と呼ばれる塗装であった。

〔1番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 ドアチャイムも高崎線のと同じであるが、違うのはドアが閉まり切る時。
 高崎線など中京離電車のはガチャンと賑やかに閉まるのに対し、埼京線などの通勤電車はバンと閉まる。
 埼京線にはまだホームドアが設置されていないので、ドアが閉まればすぐに発車した。

 愛原:「よっ、色男。モテモテだねぇ」
 高橋:「やめてくださいよ。俺にとっては苦痛です」
 愛原:「贅沢なヤツめ」

〔次は与野本町、与野本町。お出口は、右側です〕
〔The next station is Yono-Hommachi.JA24.The doors on the right side will open.〕

 高橋:「それより、善場の姉ちゃん、何だったんですか?」
 愛原:「リサのことで話があるから、新宿で会わないかだって」
 高橋:「リサのこと?ついに殺処分っスか?」
 リサ:「!?」Σ(゚Д゚)
 愛原:「なワケねーだろ」

 私は否定したが、しかし善場主任は明確に否定したわけではない。

 愛原:「この前、リサのウィルス検査をしただろ?多分、想定外の数字でも出たんだろうな。再検査をしなくてはならないかもしれないから、そのことについて話をしたいんだって」
 高橋:「その数字によっては殺処分と……」
 愛原:「そんなことは言ってねーよ。どうせまた、藤野かどっかに行けって話だろ」
 高橋:「また藤野ですか……」
 リサ:「八王子ラーメン食べれる?」
 高橋:「その前に殺処分だろ」
 愛原:「だから違うって」

 やや不機嫌な高橋は、リサに八つ当たりしているようだ。
 因みに八王子ラーメンとは、長ネギの代わりに玉ねぎの入った、東京都八王子市名物のご当地ラーメンのことだ……と、私は思っている。

 高橋:「新橋じゃなくて新宿なんですね」
 愛原:「……そうだな。別に新橋の事務所に出向いてもいいのに、主任は新宿で落ち合うと言ったんだ」
 リサ:「新宿なら人が多いから、そこで殺処分されることはないよね?」
 愛原:「そうだな。だから安心していい」
 高橋:「甘いな。新宿歌舞伎町をナメんじゃねぇ」
 愛原:「昼間っから殺人事件が起きるほど危険な所でもないだろう?今は」

 警視庁がちゃんと仕事してくれているおかげで、今の私は新宿歌舞伎町がそんなに危険な場所だとは思わない。
 とはいえ、好き好んで行くつもりは無いがな。

 愛原:「多分、話をする場所は歌舞伎町じゃないと思うよ」

 おおかたJRの駅構内とか、南口とか、比較的待ち合わせしやすい場所になるだろう。
 尚、作者は新宿スバルビルの“新宿の目”の場所が分からず、完全に迷子になった田舎者である。
 婚活中に見合い相手が待ち合わせ場所に指定してきたのだが、ようやく辿り着いた頃には【お察しください】。
 それ以来、新宿には鉄道の乗り換えやバスタ新宿以外行きたくないのだそうだ。

 愛原:「まあ、再検査の話がメインであって、殺処分とか、そんな物騒な話ではないから心配するな。な?」

 私は不安がるリサの頭を撫でて言った。
 私が撫でてやると、リサはこくんと頭を縦に振った。

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