報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“ユタと愉快な仲間たち” ボツネタ

2014-02-01 15:23:51 | 日記
[2月3日16:00. 東京都内の大学→藤谷のベンツ車内 稲生ユウタ&藤谷春人]

「はぁ……」
 取りあえず、今日の講義は終わった。
 ユタは大学構内から外に出て、最寄りに向かう。吐く溜め息が白い。
 と、そこへ1台の車が横に止まり、パッパーッとクラクションを鳴らした。
「よう、どこへ行くんだ?乗せてってやろうか?」
 左ハンドルの車から顔を覗かせたのは、
「藤谷班長。どうしてここへ?」
「アミューズメント・ビルディングの建設、うちが担当することになってさ、その現場の視察に行ったところさ」
 藤谷は得意げに車の後ろを指さした。そこには何も見えなかったが、テレビでも話題になった複合ビルは確かその方向だった。
「ま、この信心をやってて、ようやく……ってところかな」
「いいですね」
「ん?」

[同日16:30.都内の首都高速を走るベンツ ユタ&藤谷]

「大学は威吹君達と一緒じゃないんだな?」
「あの2人が来ると目立ってしょうがないですから」
「おいおい、個性的な大学生も多くいるんだから、別にいいんじゃないか。大学って所は、高校までと違って開かれた場所なんだし。……まあ、女子大に俺達が行ったら大変だけどな」
「はは……」
「建築の仕事でも無けりゃ、一生女子大に出入りできんよ。それより、何か最近、覇気が無いじゃないか。どこか体の具合でも悪いのか?」
「い、いえ、そういうことじゃ……」
「勤行ちゃんとやってるか?」
「はい!」
「威吹のヤツ、稲生君が宗門に来てから霊力が落ちたって騒いでたからな。もしかすると、信心の妨害でもしてくる魔に変化したかと思ってさ」
「信仰の意思は尊重されます。それを妨害することは、獲物取扱規定に反するそうです」
「霊力が落ちる原因ってのは、お前らみたいな人喰い妖怪に狙われないための防衛だって言ってやれよ。C級だか何だか知らんが、キミの霊力とやらが弱かったら、今頃ヤツは石像の中だったんだろ?」
「まあ、そういうことになりますね」
「恩着せがましいことは言わんが、勝手なことはするなってさ」
「ですよね……」
 しばらく会話が無くなった。
 先に口を開いたのは藤谷。
「威吹君と仲が悪くなったんじゃないか?」
「い、いえっ……!どうしてですか!?」
「大学はともかく、寺にも一緒に来てるのは威吹君じゃなく、弟子のカンジ君だけだ。何かあったのか?」
「威吹はカンジ君に、“獲物”と一緒に行動することに慣らせる為に……」
 ユタは慌てて答えたが、
「……すいません。ちょっと、意見の食い違いがあって」
「まあ、そうだよな。人間と妖怪とじゃ、だいぶ思考回路も違うだろう。今はキミの味方のようだが、いずれは牙を剥くかもしれないことは想定しないと」
「そんなことは……!そんなこと、あるはず……」

[同日17:30.さいたま市中央区 ユタの家 ユタ&藤谷]

「稲生さん!」
 電車通学のはずのユタが、車で帰ってきたことに驚いたのはカンジ。
「威吹君はいるかい?」
「先生はお留守だ」
「えっ、威吹いないの?」
 ユタも驚くと、
「急に里から呼び出しが来まして、もしかすると今日はお戻りになられないかもしれません」
「ダメだな……。大事な“獲物”のテンション下げるなって説教してやろうかと思ったのに」
 藤谷は口元を歪めて首を傾げた。
 カンジはキッと藤谷を睨みつけたが、すぐにユタが遮るように言った。
「いつ頃出て行ったの」
「だいたい1時間くらい前です」
「謹慎処分解除のお知らせかな?」
 ユタは首を傾げながら言った。
「だったら呼び出しじゃなく、通知書送り付けた方が安いだろ?」
「あ、そうか」
「とにかく、夕食の用意ができてますので……」
「班長もどうですか?」
「いいのか?」
「カンジ君、いいかな?」
「ええ。どうぞ」
「悪いなー。後で何かごちそうするよ」
「えっ?」
「もし仮に、威吹君の謹慎解除のお知らせだったら、その祝いだな。まあ、昨日の競馬の勝ち分もあるし」
「そっちですか」

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