報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「斉藤家の朝」

2022-03-27 14:25:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月6日07:00.天候:曇 埼玉県さいたま市中央区 斉藤家]

 私は訳の分からぬ夢を見て目が覚めた。
 どうも、枕が変わると眠りが浅くなるせいか、変な夢を見てしまう。
 今回の夢はどんなのかと聞かれても、口では説明できない。
 悪夢というわけではないのだが、かといって吉夢というわけでもない。
 とにかく、何とも言えぬ夢だ。
 私はベッドから出ると、洗面所に向かった。

 オパール:「おはようございます、愛原様」
 愛原:「ああ、おはよう」

 メイドのオパールが挨拶して来た。

 オパール:「愛原様の御用意ができ次第、御朝食の用意をさせて頂きますので、いつでもダイニングにお越しください」
 愛原:「ああ。ありがとう」

 顔を洗い、携帯用の自分の歯磨きセットで歯を磨き、旅行用の乾電池式のシェーバーで髭を剃る。
 そうしているうちに、30分は経つ。
 なので私がダイニングに行った時には、既に7時半にはなっていた。

 リサ:「先生、おはよう」
 愛原:「ああ、おはよう」

 ダイニングに行くと、既にリサと絵恋さんが朝食を食べていた。
 さすがに2人とも、昨夜の体操服から着替えている。
 リサは制服に着替えていたし、絵恋さんも御嬢様っぽい私服を着ていた。

 サファイア:「おはようございます。まずはコーヒーをどうぞ」
 愛原:「ああ、ありがとう」

 いい匂いがする。
 インスタントではなく、ちゃんと豆から挽いたレギュラーコーヒーだというのが分かる。

 リサ:「先生。サイトーも一緒に行くことになった。いいでしょ?」
 絵恋:「先生、よろしくお願いします」
 愛原:「俺は構わないけど、社長……キミのお父さんは?」
 絵恋:「父は朝早くに出ました。今日は帰らないそうです」
 愛原:「ええっ!?はい!?」
 リサ:「どうした、先生?何をそんなに驚いている?」
 愛原:「いや、社長にちょっとお話があったんだけど……。何か急用?」
 絵恋:「そのようです。なので、『家族団らんの為に週末は実家にいる』という必要も無くなったので」

 絵恋さんの母親も、今週はいない。

 愛原:「そうなのか……。いや、まあ、そういうことならいいけど……」
 絵恋:「ありがとうございます。交通費なら、自分で払いますから!」

 絵恋さんはアメリカンエキスプレスを取り出した。
 何色のカードかは、【お察しください】。

 愛原:「いや、せめてSuicaを用意しようね?」
 リサ:「その通りだ、サイトー。バスや電車に、アメックスで乗るバカはいない」
 絵恋:「え?でも、タクシーなら乗れますよ?」
 愛原:「まさか、菊川のマンションまでタクシーで行くつもりだったのか???」

 お金持ちの金銭感覚って……。

[同日08:50.天候:曇 同地区内 上落合公園前バス停→丸建つばさ交通“けんちゃんバス”車内]

 朝食を終えてから家を出ると、私達は最寄りのバス停に向かった。

 愛原:「悪いけど、電車とバスで行くよ?」
 リサ:「サイトー。先生の仰ることは絶対」
 絵恋:「もちろん、リサさんと一緒なら徒歩でもいいです」
 愛原:「いや、さすが歩いて菊川には帰りたくない」

 バスを待つ間、斉藤社長に電話をしたが、電話には出てくれなかった。

 愛原:「うーむ……。斉藤社長が出てくれない……」
 リサ:「あ、バス来た」

 往路と同じ車種の小型バス(日野・ポンチョ)がやってきた。
 これが大型バスなら、横断歩道に車体がはみ出してしまう危険なバス停になってしまうが、小型バスなら問題ない。
 それを知ってて、わざと交差点の角にバス停を設置したのだろう。
 バスに乗り込むと、空いている1番後ろの席に並んで座った。

〔「発車します。ご注意ください」〕

 バスは市道を南下した。

〔ピンポーン♪ 次は児童センター入口、児童センター入口でございます〕

 愛原:「絵恋さん、お父さんがどこに行くとか言ってた?」
 絵恋:「分かりません。ただ、週末はゴルフに行くことが多いです」
 愛原:「ゴルフかぁ……」
 絵恋:「色々と付き合いの為のゴルフらしくて……。でも、最近はコロナ禍でそれもできなかったんですよ」
 愛原:「だけどその場合、車がいるよね?」
 絵恋:「新庄がいた頃は、新庄の車でゴルフ場に行ってました」
 愛原:「すると、今は新庄さんがいないから……」
 絵恋:「ハイヤーで行くことになりますね。でも、コロナ禍でゴルフ接待とかも自粛になったので、結局一度もハイヤーでは行ってません」
 愛原:「それが急に行くことになったか……」

 私はスマホを取り出すと、揺れるバスの中、善場主任にメールを打った。
 さすがに日曜日の朝だからか、今度は返信が来るのは遅かった。

[同日09:10.天候:曇 埼玉県さいたま市大宮区 大宮駅西口バス停→JR大宮駅]

 善場主任から返信メールが来たのは、バスが終点近くの付近を走行している頃だ。
 大宮駅の東西は車が混みやすい。
 私達のバスもまた、そういった混雑にハマってしまった。
 考えようによっては、ゆっくり返信メールが見れるということではあるのだが……。

 善場:「斉藤社長が逃走したのですね?承知しました。すぐに私共の組織で追跡します」

 とのこと。
 な、何だか話が物騒になっていないか?

 善場:「何か新しい情報が入りましたら、すぐにお知らせください」

 と、締められていた。
 まさかこれは、タイーホなのか?
 前回は書類送検で済んだ斉藤社長、今度という今度はタイーホなのか!?

〔「お待たせ致しました。ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、大宮駅西口、大宮駅西口です。お忘れ物、落とし物にご注意ください」〕

 バスはかつて西武大宮線の廃線跡を走行する。
 中途半端な1車線分の道路幅なのは、かつて単線で運転されていた西武鉄道大宮線の廃線跡だからである。
 そして、その先にある小さなバス停に到着した。

 愛原:「あ、このバス、現金でしか乗れないんだけど、現金ある?」
 絵恋:「現金……」

 絵恋さんが財布を開くと、カードしか入っていなかった。

 愛原:「大人3人です」
 運転手:「ありがとうございます」

 しょうがないので私は、600円を運賃箱の中に入れた。

 リサ:「サイトー、運賃は自分で払う約束……!」
 絵恋:「ご、ゴメンなさい。まさか、現金だけだなんて……」
 愛原:「いや、先に言うのを忘れてたよ。絵恋さんは悪くない」
 絵恋:「お詫びに新幹線代は出させて頂きます」

 絵恋さんは再びアメリカンエキスプレスを取り出した。

 絵恋:「新幹線のキップなら、これで買えるはずなので」

 た、確かに。
 いや、しかし……。

 愛原:「無駄金使っちゃダメだって。在来線で行こう。在来線のグリーン車ならいいだろう?」
 リサ:「フム。あれなら車内販売もある」
 絵恋:「リサさんがそう言うなら……」
 愛原:「よし、決まりだな」

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