報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「埼玉の斉藤家へ」 3

2020-12-29 14:27:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月12日14:33.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮ぁ、大宮です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。9番線の電車は宇都宮線、普通列車、小金井行きです。短い10両編成での運転です。電車はホーム中ほどに停車しております」〕

 危うくリサの機嫌を損ね、この電車を途中で運転中止に追い込むところであったが、何とかお菓子で機嫌を直すことに成功し、私達は今、埼玉の地を踏んでいる。

 愛原:「いやあ、電車がダイヤ通りに走るって素晴らしいことだなぁ……」
 斉藤絵恋:「先生。リサさんの機嫌を損ねたりしたら、先生もバイオテロリストですからね?」
 愛原:「わ、分かった。気を付けるよ」

 電車を降りて、コンコースへの階段を登る。
 私が美人のグリーンアテンダントに目を奪われたせいか、今度はリサが私にアピールしてくる。
 リサは中学生ながら通学の時以外は制服のスカートをJKのように短くしているのだが、それで私の上をさっさと行って自分のことをアピールしてくる。
 それだけならまだ可愛い方で、私が申し訳ないなと思うのは、リサの取り巻きをやっている(またはやらされている)同級生達。
 もちろんそこには斉藤絵恋さんも含まれている。
 私が他の女性に目を奪われないよう、彼女達もまた私の事務所や家に来る場合は、太ももが見えるような服装を強要されているのだ。
 たまたま私が自分専用のPCに保存しておいた18禁動画の中に、『JK太もも&パンチラパラダイス』なるものがあり、リサはこれを見て私がそういうフェチだと思ったらしい。
 で、例え私がリサ以外の女性に目を向けてしまっても、それがまだリサの取り巻きであれば、自分の管理内であるので、いつでも注意できるということなんだと。
 また、逆に私がリサにばかり目を向けていて、却って飽きられないようにする為、あえて取り巻きを使うことも考えているのだとか。
 もし本当にそうだとしたら、既に恐ろしいコである。

 斉藤:「埼玉は少し寒いですね」
 愛原:「ゴメンな、斉藤さん。リサのワガママに付き合わせてしまって……」

 私は同じく制服のスカートから生足を出している斉藤さんを見ながら言った。
 本当ならストッキングでも穿いて防寒対策したかっただろうに、リサがそれを許さないのだ。
 学校によっては冬場の生足を原則禁止とし、ストッキング着用を義務付ける所もあるらしいが、東京中央学園はそこまで厳しくない(着用については自由だが、着用する場合は色の規定がある)。

 斉藤:「いいんです。リサさんの頼みなら、何でも聞きます」
 愛原:「そうか……」

 もしも万が一、リサが『ここで全裸になれ』と命令したら聞くのだろうか?

 リサ:「先生。この後はどこに行く?」
 愛原:「ここからバスに乗るよ。少しだけ時間がある」
 リサ:「じゃあ、本買っていい?」
 愛原:「いいよ」

 リサはコンコース内にある本屋を指さした。
 リサ達はマンガのコーナーに行く。
 いくらBOWでも、マンガに興味を持つところは人間らしいのだが。

 愛原:「『冬の臨時列車掲載』ね」

 私は平積みにされている今月の時刻表を見て呟いた。

 

 高橋:「先生、今年の冬は帰省されるんですか?」
 愛原:「コロナ禍だからなぁ、多分無理だろ~。そういうオマエはどうなんだ?オマエは新潟県出身だったな?」
 高橋:「下越の片田舎です。でも、俺の家庭は崩壊しているので、帰るもクソも無いんですよ」
 愛原:「そうなのか」
 高橋:「だから先生の所みたいに、平和な家庭が羨ましいんです」
 愛原:「そうか……」
 高橋:「だからこそ、俺みたいなヒネクレ者がのこのこお邪魔するのは申し訳ないと思っています」
 愛原:「前回のことなら気にするな。あれは緊急事態だったからな。まさか最終的にリサ・トレヴァーに繋がっていたとは思わなかったが」
 高橋:「先生の伯父さん、リサを人間に戻す薬を作るってことでしたけど、本当にできるんですか?」
 愛原:「正確には、『リサを人間に戻す薬の材料の一部となる薬品』って所だな。でもなかなか根幹を成す薬品だったらしく、それで旧アンブレラが買い付けに来たって話だっただろ」
 高橋:「そうです」
 愛原:「その点はまだ日本アンブレラは優しいな」
 高橋:「そうなんですか?」
 愛原:「もしもアメリカの本体が俺の聞いた通りなら、公一伯父さんをスカウトしようとするだろう。そして断ろうものならその場で射殺するか、もしくは拉致って伯父さんを人体実験に掛けていただろう」
 高橋:「戦隊ヒーロー番組辺りに出て来る悪の組織みたいな奴らですね!?」
 愛原:「か、もしくは“名探偵コナン”に出て来る黒の組織みたいな奴らとかな。多分そういう組織のモデルとなったのが、洋画に登場する悪の組織なんだろう」
 高橋:「はあ、なるほど」

 しばらくしてリサ達が戻って来る。

 リサ:「買って来た」
 愛原:「で、何を?」
 リサ:「“鬼滅の刃”」

 人食い鬼(を模したBOW)、人食い鬼の登場するマンガを買うの図。

[同日14:55.天候:晴 JR大宮駅西口バスプール→西武バス大38系統車内]

 目当ての物を買ってから改札を出て西口に向かう。
 実際には東西自由通路上にあるNEWDAYSにも立ち寄った。
 バスプールでバスを待っていると、中型路線バスがやってくる。
 バスに乗り込むと、1番後ろの座席に座った。

 リサ:「先生、そのペーパーバッグの中身は?美味しそうな匂いがする」
 愛原:「これは斉藤社長へのお土産だよ。大会社の社長さんに、変な物は持って行けないからな」
 絵恋:「父はそういうの気にしませんよ。コンビニで売ってる適当な菓子折りでも十分です」
 愛原:「それはちょっとキツいだろう」

 私は苦笑した。
 一応、新大橋通り沿いの和菓子屋で購入したものだ。
 お茶請けにはちょうどいいだろう。
 発車の時間がやってきて、バスにエンジンが掛かった。
 コロナ対策の為に小さな窓が各所で開いていて、さすがに寒い。
 早いとこ暖房を効かせてもらたいたものだ。

〔「14時55分発、上落合経由、大宮駅東口行き、発車致します」〕
〔発車します。お掴まりください。発車します〕

 バスが走り出す。
 走り出すと、開いた窓から少し風が吹き込んで来た。
 斉藤さんはマフラーを巻き直したが、リサは何もしない。
 本当に暑さ寒さには強いBOWなのだ。

〔♪♪♪。大変お待たせ致しました。ご乗車、ありがとうございます。このバスは上小町、中並木経由、大宮駅東口行きです。次は新国道、新国道。……〕

 斉藤:「父に一応ラインしておきました。バス停まで迎えに行かせるそうです」
 愛原:「えっ?いいよ、そんな。申し訳ない」

 どうせバス停から斉藤家まで、徒歩5分といったところだ。
 迎えに来てもらうほどのものではない。

 斉藤:「うちのメイドの誰かが来るらしいですね」
 高橋:「真珠の『危険な同僚』達か……」

 高橋は右手をこめかみに当てる仕草をした。
 高橋は他人の事は言えないが、霧崎真珠さんも前科者。
 そして何故か斉藤家の使用人達は、皆して前科者なのである。
 もちろん全員が(表向きは)ちゃんと更生して、斉藤家で使用人として真面目に働いているのだが。
 斉藤社長のお抱え運転手の新庄さんだって、前職のタクシー運転手だった時、人身事故を起こして市原刑務所で服役したことがあるというくらいだ。

 斉藤:「父はそういうのが好きなんです。好きにやらせてください」
 愛原:「まあ、キミがそう言うのなら……」

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