報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「スワローあかぎ1号」

2019-08-21 11:16:20 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月5日17:40.天候:晴 東京都台東区上野 JR上野駅]

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく上野、上野です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕

 稲生達を乗せた山手線電車が上野駅のホームに滑り込む。
 こちらは東京駅と違い、ホームドアがある。

〔うえの〜、上野〜。ご乗車、ありがとうございます。次は、鶯谷に止まります〕

 2人で手繋ぎしながら電車を降りる。
 低いホームへ向かう為、階段を下りる。
 JR上野駅は起伏のある場所に建っている為、初めて来ると、どこが1階になるのか分からないかもしれない。
 これから稲生達が向かう『低いホーム』が1階である。
 ということは、『高いホーム』の1つである山手線のホームは【お察しください】。

〔JR上野駅をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の高崎線特急“スワローあかぎ”1号、本庄行きは14番線から発車致します。……〕

 埼玉県の奥地まで行く特急だが、群馬県までは行かない。
 とりあえず、いおなずんさんに謝ろうか。

 稲生:「新幹線の到着ホームも14番線なら、特急のホームも14番線って面白いですね」
 マリア:「数字のマジックか。確か、それを研究している組もあったはず」
 稲生:「そうなんですか」
 マリア:「一見してカジノに入り浸るギャンブラーだけどね」
 稲生:「日本にも来ますか?」
 マリア:「多分無いな。何故なら、日本にはカジノが無い」
 稲生:「あー……。パチンコとか競馬じゃダメ?」
 マリア:「OKだったら、とっくに日本に来てるよ」
 稲生:「それもそうか」

〔まもなく14番線に、当駅始発、特急“スワローあかぎ”1号、本庄行きが参ります。危ないですから、黄色いブロックまでお下がりください。この列車は、7両です。……〕

 14番線に到着すると、接近放送が鳴り響いているところだった。

 稲生:「7号車だから1番前ですね」
 マリア:「相変わらず先頭車が好きだねぇ」
 稲生:「空いている車両が好きなんですよ。だからさっきの新幹線は1番後ろです」
 マリア:「なるほど」
 稲生:「ジュースでも買って行きます?」
 マリア:「そうしよう。夕食は?」
 稲生:「さっき母さんからメールがあって、今日は父さんに付き添って病院に泊まるから、適当に食べててってことです」
 マリア:「ふーん……。え?」
 ハク人形:「リンゴジュースはよ!」
 稲生:「はいはい」
 ミク人形:「ネギジュースはよ!」
 稲生:「はいはい……って、無いから!」

 オエ……(長ネギ嫌いの作者、ネギジュースと聞くだけで吐き気が……)。

〔「14番線に到着の電車は、18時ちょうど発、高崎線の特急“スワローあかぎ”1号、本庄行きです。4号車のグリーン車も含めまして、全車両指定席です。まもなくドアが開きます。乗車口までお進みください。……」〕

 人形達にジュースを買ってやる稲生。
 人間形態ではメイドの仕事を粛々とこなすマリアの手作り人形も、人形形態ではコミカルな行動・言動をしてくれる。

 稲生:「マリアさんは何がいいですか?」
 マリア:「わ、私は……」
 稲生:「ん?」
 マリア:「紅茶を……」
 稲生:「分かりました」

 稲生も缶コーヒーを買って、それから7号車に乗り込んだ。

 稲生:「この席ですね」

 夕方ラッシュということもあってか、少しずつ席が埋まって来ている。
 窓の外では多くの帰宅客が、足早にホームを歩いていた。
 これはこの特急列車に乗らない、或いは乗れない乗客が、特急の前後に発車する当駅始発の普通列車に並ぶ為だ。
 少しでも空いている乗降口に早く並ぶ為、足早に歩いているのである。
 既に席を確保している稲生達は、そんな乗客達を横目に、発車を悠長に待つことができるのである。

〔「ご案内致します。この電車は高崎線回りの特急“スワローあかぎ”1号、本庄行きです。電車は1番前が7号車、1番後ろが1号車です。7両編成、全ての車両が座席指定となっております。指定席特急券または座席未指定券をお持ちのお客様以外のご利用はできませんので、ご注意ください。……」〕

 稲生:「どうしました、マリアさん?」

 稲生は窓側に座るマリアに話し掛けた。

 マリア:「あの……勇太のママは今夜いないんだって?」
 稲生:「らしいです」
 マリア:「師匠も今夜は来ない。勇太のダディも入院中。つまり、今日は勇太の家にいるのは……」
 稲生:「! そ、そうですね……」

[同日18:00.天候:晴 JR高崎線4001M電車7号車内]

 ホームの方から発車ベルの鳴り響く音が微かに聞こえて来る。
 かつては発車メロディが流れていたこともあったが、またベルに戻されている。

〔14番線、ドアが閉まります。ご注意ください〕

 全車両指定席の列車では駆け込み乗車も無いのか、乗降ドアの再開閉も無く、定刻通りに発車することができた。
 低いホームから発車する時はゆっくりと加速する。
 まるで支線から発車するかのようだが、実は尾久駅手前のポイント通過が高いホームから発車する列車と違って無い。
 つまり、低いホームから発車する線路の方が本線だということになる。
 しかしながら歴史上、尾久駅を通る時点で支線なのである。
 本線は京浜東北線の王子回り。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。「お待たせ致しました。本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。18時ちょうど発、高崎線特急“スワローあかぎ”1号、本庄行きです。これから先の停車駅と、到着時刻をご案内致します。次は、赤羽に止まります。赤羽、浦和、大宮、上尾、桶川、北本、鴻巣、熊谷、深谷、終点本庄の順に止まります。途中、大宮到着は18時27分。……」〕

 稲生:「早く家に帰りたいところだけど、途中で何か食べて行こう。何がいい?」
 マリア:「……肉系統」
 稲生:「分かった。肉ね」

 稲生はスマホを取り出して、大宮近辺の店を検索した。
 夕日を浴びて北に向かう特急列車。
 車内は既に90%の座席が埋まっている。
 そんな電車を照らす太陽だが、上空には陰りが見え始めていた。
コメント (1)
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