[8月4日20:10.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 けんちゃんバス上落合公園前バス停]
暗くなっても暑いさいたま市。
明らかなる熱帯夜である。
マリア:「ロンドンの真夏の昼間も暑いけど、夜はかなり涼しくなるものなんだけど……」
稲生:「これが日本の夏というものでして……」
もっとも、ずっど昔から熱帯夜だったわけではなかろう。
稲生:「あっ、バス来ました」
休日ダイヤでは最終便となるバスがやってきた。
後ろ扉が開いて乗り込むと、よく効いた冷房が2人を包み込む。
日曜日夜の電車やバスは総じて乗客が少ないものだが、このバスもそうだった。
このバス停に来るまで、空気を輸送をしてきたようだ。
1番後ろの進行方向を向いた座席に座った。
バスは稲生とマリアを乗せると、すぐに発車した。
〔「次は児童センター入口、児童センター入口です」〕
こんな時間にどこへ行こうというのだろうか。
稲生は充電済みのスマホを取り出した。
メールアプリには、とある予約サイトからのメールが着信されている。
それは高速バス。
稲生:「まさか深夜便が予約できるなんて……これはむしろ呼ばれているということでしょう」
マリア:「真夜中に呼び出すとは、悪魔の間違いじゃない?」
稲生:「マリアさんは昼間、イエス・キリストからの呼び出しに応えますか?」
マリア:「それは無い。もしそんな奇跡があったら、私は今頃ここにはいない」
稲生:「仏様なら、いつでもあることです」
父親の宗一郎の手術成功の祈念に、大石寺に登山しようとは思っていた稲生。
しかし翌日は月曜日だ。
そんなド平日に登山できるのは、魔道士の稲生しかいない。
それまでニートだった鈴木も学歴を入手する為に専門学校に入学したし(一応、高校は出ていた。高校を辞めなかったのは、顕正会の折伏対象者を確保する為)、藤谷も仕事だ。
添書だけ頂戴して、当日日帰り登山にしようかと思っていた稲生だったが、たまたま高速バスの予約サイトを見ていた時、深夜便にキャンセルが出て空席が2つ出たことに気づいた。
それまでは基本的に全便満席だった。
そりゃそうだろう。
夏休みの時期で、尚且つ今は富士山の登山シーズン。
世界遺産に指定された富士山の賑わいがピークの時期なのだ。
だから当初、高速バスでの交通手段は諦めていた稲生。
それがたまたま予約サイトを見たら……である。
また、御祈念するのなら客殿での丑寅勤行に参加した方が良いというのは信徒の間でもセオリー。
深夜便に乗れば、バス停でのタクシー乗り換えがあるとはいえ、大石寺の丑寅勤行には十分間に合うという寸法だ。
もちろん、すぐに予約した。
発券するには、乗り場である東京駅の高速バス乗り場に行かなくてはならない。
稲生:「でもマリアさん、いいんですか?」
マリア:「何が?」
稲生:「僕個人のことだから、マリアさんは家で寝てていいんですよ?」
マリア:「あのね。今、勇太はまだ見習なんだよ?入門したからには、勝手な行動は許されない。他の組に行ったら、こんな夜に寺参りなんて絶対に許可されない。私の同行・監視付きで許してくれる師匠に感謝しな」
稲生:「それもそうでした」
もっとも、マリアの場合、ほとんど事後報告である。
それでもお咎め無しなのだから、イリーナ組はユルユルだ。
[同日20:30.天候:晴 さいたま市大宮区 JR大宮駅西口→駅構内]
〔ピンポーン♪ お待たせ致しました。次は終点、大宮駅西口。終点、大宮駅西口でございます。どなた様もお忘れ物の無いよう、お支度ください。本日は丸建自動車をご利用頂きまして、ありがとうございました〕
日曜日の夜である為か、平日や土曜日の同じ時間帯よりは人や車の少ない駅周辺。
それでもターミナル駅なので、寂しいわけではない。
一方通行の小道に入り、正に小型バスしか行けないような場所にバス停はある。
稲生:「大人2人です」
運転手:「はい、ありがとうございました」
稲生は回数券2枚を運賃箱に入れた。
コミュニティバスあるある話で、ICカードが使えない。
バスを降りると、また熱帯夜の空気が襲って来る。
稲生:「急いで電車に乗りましょう。といっても、時間が余ってしまうので京浜東北線で行こうと思います」
マリア:「勇太に任せるよ」
タクシー乗り場の横を通ってエスカレーターに乗り、西口2階から駅構内に入る。
さすがにそこは多くの人で賑わっていた。
稲生:「夏は色んな意味で顕正会も熱くなる季節なんですよ」
マリア:「さっき駅の入口で新聞やらチラシとか配ってたヤツ?」
稲生:「そうです。暑いのに大変だ」
マリア:「勇太もやってたの?」
稲生:「男子部ではやってなかったですね。僕がいた所も比較的穏やかな所で……“慧妙”8月1日号『新・となりの沖田くん』みたいなことはなかったです」
マリア:「台詞の内容がピンポイント過ぎるぞ?」
稲生:「電車に乗る前に、時間調整といきましょう」
マリア:「えっ、もう?東京駅でいいんじゃないの?」
稲生:「それが、東京駅は意外と調整しにくいんですよ」
マリア:「そうなんだ」
稲生:「大宮駅構内にも時間調整できるような場所はありますからね……」
ドンッ!
稲生:「うわっ!?」
全力疾走で稲生とぶつかる青年。
だが、何も言わず走り去る。
稲生:「な、何だぁ?」
だが、その青年を追う男が数名いた。
男A:「逃がすな!」
男B:「あっちへ行ったぞ!」
稲生達には目もくれず、青年が走り去った方へ向かう。
そして、さっきの青年が落としていった物に気づく。
それは顕正新聞。
稲生:「顕正会員だったのか!?」
マリア:「勇太」
稲生:「行きますよ!」
稲生は青年達の後を追った。
青年:「助けてください!宗教の勧誘です!!」
青年は駅構内にある鉄道警察隊の交番に駆け込んでいた。
男A:「そうやって逃げる気か!」
男B:「だからキミはダメなんだ!」
男C:「今からでも遅くはない!早く会館に行って入信勤行を!」
青年:「助けてください!この人達に追われているんです!」
警察官:「まあ、ちょっと落ち着いて」
男A:「お巡りさん!僕達は勧誘ではなく、折伏をしているんです!これは日本国憲法第20条で保障された『信教の自由』のれっきとした信心活動で……」
警察官:「分かったからちょっと落ち着いて!」
その様子を外から見ていた稲生。
稲生:「たまに対象者にいる、逃走して通報するタイプだ」
マリア:「そうなのか?」
稲生:「僕が顕正会員だった時にも見たことがありますよ。ときわ台駅近くの飲食店でしたけど……」
マリア:「勇太はあんなことしていない?」
稲生:「僕も逃げて交番に駆け込めば良かったと思っていますよ」
マリア:「なるほど」
尚、この描写は作者自身が実際に見た光景である。
この場合は顕正会員達がやらかしていたが、法華講の皆様におかれても熱すぎる折伏にはご注意を。
“フェイク”の記者が、すぐそこでスクープを狙っていますよ。
御用心、御用心……。
暗くなっても暑いさいたま市。
明らかなる熱帯夜である。
マリア:「ロンドンの真夏の昼間も暑いけど、夜はかなり涼しくなるものなんだけど……」
稲生:「これが日本の夏というものでして……」
もっとも、ずっど昔から熱帯夜だったわけではなかろう。
稲生:「あっ、バス来ました」
休日ダイヤでは最終便となるバスがやってきた。
後ろ扉が開いて乗り込むと、よく効いた冷房が2人を包み込む。
日曜日夜の電車やバスは総じて乗客が少ないものだが、このバスもそうだった。
このバス停に来るまで、空気を輸送をしてきたようだ。
1番後ろの進行方向を向いた座席に座った。
バスは稲生とマリアを乗せると、すぐに発車した。
〔「次は児童センター入口、児童センター入口です」〕
こんな時間にどこへ行こうというのだろうか。
稲生は充電済みのスマホを取り出した。
メールアプリには、とある予約サイトからのメールが着信されている。
それは高速バス。
稲生:「まさか深夜便が予約できるなんて……これはむしろ呼ばれているということでしょう」
マリア:「真夜中に呼び出すとは、悪魔の間違いじゃない?」
稲生:「マリアさんは昼間、イエス・キリストからの呼び出しに応えますか?」
マリア:「それは無い。もしそんな奇跡があったら、私は今頃ここにはいない」
稲生:「仏様なら、いつでもあることです」
父親の宗一郎の手術成功の祈念に、大石寺に登山しようとは思っていた稲生。
しかし翌日は月曜日だ。
そんなド平日に登山できるのは、魔道士の稲生しかいない。
それまでニートだった鈴木も学歴を入手する為に専門学校に入学したし(一応、高校は出ていた。高校を辞めなかったのは、顕正会の折伏対象者を確保する為)、藤谷も仕事だ。
添書だけ頂戴して、当日日帰り登山にしようかと思っていた稲生だったが、たまたま高速バスの予約サイトを見ていた時、深夜便にキャンセルが出て空席が2つ出たことに気づいた。
それまでは基本的に全便満席だった。
そりゃそうだろう。
夏休みの時期で、尚且つ今は富士山の登山シーズン。
世界遺産に指定された富士山の賑わいがピークの時期なのだ。
だから当初、高速バスでの交通手段は諦めていた稲生。
それがたまたま予約サイトを見たら……である。
また、御祈念するのなら客殿での丑寅勤行に参加した方が良いというのは信徒の間でもセオリー。
深夜便に乗れば、バス停でのタクシー乗り換えがあるとはいえ、大石寺の丑寅勤行には十分間に合うという寸法だ。
もちろん、すぐに予約した。
発券するには、乗り場である東京駅の高速バス乗り場に行かなくてはならない。
稲生:「でもマリアさん、いいんですか?」
マリア:「何が?」
稲生:「僕個人のことだから、マリアさんは家で寝てていいんですよ?」
マリア:「あのね。今、勇太はまだ見習なんだよ?入門したからには、勝手な行動は許されない。他の組に行ったら、こんな夜に寺参りなんて絶対に許可されない。私の同行・監視付きで許してくれる師匠に感謝しな」
稲生:「それもそうでした」
もっとも、マリアの場合、ほとんど事後報告である。
それでもお咎め無しなのだから、イリーナ組はユルユルだ。
[同日20:30.天候:晴 さいたま市大宮区 JR大宮駅西口→駅構内]
〔ピンポーン♪ お待たせ致しました。次は終点、大宮駅西口。終点、大宮駅西口でございます。どなた様もお忘れ物の無いよう、お支度ください。本日は丸建自動車をご利用頂きまして、ありがとうございました〕
日曜日の夜である為か、平日や土曜日の同じ時間帯よりは人や車の少ない駅周辺。
それでもターミナル駅なので、寂しいわけではない。
一方通行の小道に入り、正に小型バスしか行けないような場所にバス停はある。
稲生:「大人2人です」
運転手:「はい、ありがとうございました」
稲生は回数券2枚を運賃箱に入れた。
コミュニティバスあるある話で、ICカードが使えない。
バスを降りると、また熱帯夜の空気が襲って来る。
稲生:「急いで電車に乗りましょう。といっても、時間が余ってしまうので京浜東北線で行こうと思います」
マリア:「勇太に任せるよ」
タクシー乗り場の横を通ってエスカレーターに乗り、西口2階から駅構内に入る。
さすがにそこは多くの人で賑わっていた。
稲生:「夏は色んな意味で顕正会も熱くなる季節なんですよ」
マリア:「さっき駅の入口で新聞やらチラシとか配ってたヤツ?」
稲生:「そうです。暑いのに大変だ」
マリア:「勇太もやってたの?」
稲生:「男子部ではやってなかったですね。僕がいた所も比較的穏やかな所で……“慧妙”8月1日号『新・となりの沖田くん』みたいなことはなかったです」
マリア:「台詞の内容がピンポイント過ぎるぞ?」
稲生:「電車に乗る前に、時間調整といきましょう」
マリア:「えっ、もう?東京駅でいいんじゃないの?」
稲生:「それが、東京駅は意外と調整しにくいんですよ」
マリア:「そうなんだ」
稲生:「大宮駅構内にも時間調整できるような場所はありますからね……」
ドンッ!
稲生:「うわっ!?」
全力疾走で稲生とぶつかる青年。
だが、何も言わず走り去る。
稲生:「な、何だぁ?」
だが、その青年を追う男が数名いた。
男A:「逃がすな!」
男B:「あっちへ行ったぞ!」
稲生達には目もくれず、青年が走り去った方へ向かう。
そして、さっきの青年が落としていった物に気づく。
それは顕正新聞。
稲生:「顕正会員だったのか!?」
マリア:「勇太」
稲生:「行きますよ!」
稲生は青年達の後を追った。
青年:「助けてください!宗教の勧誘です!!」
青年は駅構内にある鉄道警察隊の交番に駆け込んでいた。
男A:「そうやって逃げる気か!」
男B:「だからキミはダメなんだ!」
男C:「今からでも遅くはない!早く会館に行って入信勤行を!」
青年:「助けてください!この人達に追われているんです!」
警察官:「まあ、ちょっと落ち着いて」
男A:「お巡りさん!僕達は勧誘ではなく、折伏をしているんです!これは日本国憲法第20条で保障された『信教の自由』のれっきとした信心活動で……」
警察官:「分かったからちょっと落ち着いて!」
その様子を外から見ていた稲生。
稲生:「たまに対象者にいる、逃走して通報するタイプだ」
マリア:「そうなのか?」
稲生:「僕が顕正会員だった時にも見たことがありますよ。ときわ台駅近くの飲食店でしたけど……」
マリア:「勇太はあんなことしていない?」
稲生:「僕も逃げて交番に駆け込めば良かったと思っていますよ」
マリア:「なるほど」
尚、この描写は作者自身が実際に見た光景である。
この場合は顕正会員達がやらかしていたが、法華講の皆様におかれても熱すぎる折伏にはご注意を。
“フェイク”の記者が、すぐそこでスクープを狙っていますよ。
御用心、御用心……。