報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「バスに揺られて大石寺参り」

2019-08-13 19:02:37 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月5日14:10.天候:晴 静岡県富士宮市 日蓮正宗総本山大石寺・奉安堂]

 御法主上人猊下(早瀬日如上人):「遠ごん各地より深信の当参、並びに海外より深信の当参。願い出により、本門戒壇の大御本尊御開扉奉り、厚く御礼申し上げ……」

 猊下様の御説法の出だしは基本、一言一句変わらない。
 そして、猊下様の一言一句変わらぬ御説法を文章化しようとすると、意外と難しい。
 「とうざん」をどういう漢字で書くのか迷ったか、恐らく当参で合っていると思う。
 何しろ録音が禁止されているので、いわゆるテープ起こしができないのである。
 しかも、よくよく聞いていると、「とうざん」ではなく、「とうさん」と仰っているように聞こえる。
 そうなると、当参という二字熟語が意味合い的にも合っているのである。
 え?だったらついでに、遠ごんもちゃんと全部漢字で書けって?
 これだけは浮かばなかった。
 そんなにマイナーな熟語ではない為、“大日蓮”とか“妙教”辺りを漁れば出て来るかもしれないが。
 猊下様の御説法、物凄く御住職に頼んだら全文教えてくれるかな……。

 稲生:(カントクの自分語りがうるせぇ……!)

 尚、猊下様の御説法の最中は、合掌したままの姿勢で、尚且つ物音を立てないように最初に注意される。

 猊下:「……懇ろに申し上げました」

〔「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」〕

 因みに一言一句変わらないという点においては、御開扉の前後に飛ばされる御僧侶からの注意事項もそうだったりする。
 ただ、あれはちゃんとマニュアルがあって、それを読み上げているだけなのであるが。
 大きな厨子が閉められ、最後には頑丈な二重の鎧戸が閉められる。
 それでも顕正会員には防犯上、防災上の理由で不満らしい。
 ここで一旦、唱題は終わる。
 猊下様が席を立たれると、信徒衆に向かって一礼されるので、こちらも答礼するのが不文律となっている。
 因みに、因みにだ。
 顕正会では浅井会長を随分と神格化……もとい、仏格化していて入退場の際に伏せ拝をするのが習わしとなっているが、日蓮大聖人の血脈を受け継がれている御法主上人猊下が入退場される際に伏せ拝は行われない。
 あくまで猊下様が信徒衆に向かって一礼された際に答礼するのみだ。
 そういえば、浅井会長が会員達に向かって大きく両手を振り上げているところは何度も見たが、会員達に向かって一礼している所は見たことない。

〔「退場に際して注意事項を申し上げますので、席を立たずにそのままお待ちください。……」〕

 そして退場が始まる。

 稲生:(マリアさんを迎えに行かなきゃな……)

 因みに法道院支部の講頭さんはヒラ信徒に対しても、随分と気さくで腰の低い方であられた。
 本来、人の上に立つ者はああであるべきである。

 稲生:(ていうか、猊下様でさえ僕達信徒に一礼して下さるのに、浅井会長ときたら……。池田会長はどうだか知らないけど)

 稲生は奉安堂の外に出た。

 稲生:「うん。今日はいい天気だ」

 富士山もよく見える。
 稲生はスマホで他の信徒に混じり、富士山の写真を撮った。

 稲生:(ルーシーの時は天気悪かったからな。この画像、水晶球で送れないだろうか……?)
 外国人信徒:「すいません。写真を撮ってもらっていいですか?
 稲生:「あ、はい。いいですよ

 稲生は白人の男女に富士山と奉安堂をバックにした記念撮影を頼まれた。
 ラフな格好で登山していることに違和感を覚える稲生であるが、これも民族性の違いか。
 マリアはブラウスにプリーツスカートという出で立ちだが、稲生の好みに合わせてくれたのもあるが、実は彼女の趣味なんじゃないだろうかと最近思うようになってきた。
 というのは、同じイギリス人のルーシーが常にラフな格好だったからである。
 Tシャツにジーンズという、目の前のアメリカ人らしき信徒と大差無い恰好で、その上からローブを羽織っていた。

 外国人信徒:「どうもありがとう
 稲生:「いえいえ。これからお帰りで?
 外国人信徒:「もう一泊してから東京に向かいます
 稲生:「そうですか
 外国人信徒:「せっかくなのですし、あなたももう一泊して丑寅勤行に参加してみては?
 稲生:「いえ。丑寅勤行はもう参加したので。それに、連れのコを待たせているんですよ
 外国人信徒:「そのコも日本人?
 稲生:「いえ、イギリス人です
 外国人信徒:「Oh...」

[同日14:40.天候:晴 大石寺第2ターミナル→富士急静岡バス車内]

 

 稲生:「良かった良かった!間に合った間に合った!」
 マリア:「遅かったんで、何かトラブルに巻き込まれたかと思ったよ」
 稲生:「すいません。アメリカ人の信徒達に捕まってたもんで……」
 マリア:「英語分からないフリして逃げてくれば良かったのに……」
 稲生:「今やもう自然と口から出るまでになりましたからねぇ……」

 稲生も最初は全く英語が話せなかったのだが、ダンテ一門内の公用語が何故か英語で、今まで接してきた魔女達が皆それを話すものだから、いつの間にか慣れてしまっていた。

 稲生:「すいません、新富士駅まで大人二人です」
 運転手:「はい。お願いします」

 基本的に富士急静岡バスは後ろ乗り前降りなのだが、この大石寺登山・下山バスだけは例外である。
 東京23区内のバスのように前乗り後ろ降りで、運賃も先払いである。
 なので、『出口』と書かれた前扉から乗り込み、『入口』と書かれた後ろ扉から降りるのである。
 バスに乗り込むと、2人席が並んでいるワンロマというタイプのバスだった。
 Suicaで運賃を払うと、空いている後ろの2人席に座る。
 直後にエンジンが掛かって前扉が閉まった。
 どうやら、稲生達がこの便の最後の乗客だったようだ。

〔「お待たせ致しました。14時40分発、特急、新富士駅行き発車致します」〕

 バスは全座席の半分くらいの乗客を乗せて、大石寺第二ターミナルを発車した。

 マリア:「師匠から連絡あった」
 稲生:「あ、そうですか」
 マリア:「空港まで迎えに来てほしいって」
 稲生:「羽田空港ですか?それとも成田空港?」
 マリア:「あー、しまった。聞くの忘れた。後で確認しとく」
 稲生:「場所が違いますからねぇ……」
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“大魔道師の弟子” 「しれっと書いているが、この2人はきっと暑さで大汗かいているはず」

2019-08-13 14:08:05 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月5日09:57.天候:晴 静岡県富士宮市 上条地区]

〔「大石寺入口です」〕

 朝になって温泉施設を出た稲生達は、富士宮駅経由で大石寺に向かった。
 かつては御開扉のある日に限って、富士宮駅からの直行バスが運行されていたのだが、乗客が少ない為に廃止になった経緯がある。
 但し、上条行きの一般路線は運行されている。
 本数は少なく、中型バスでの運行となるが。

 稲生:「大人2人お願いします」
 運転手:「はい。ありがとうございました」

 バス停は名前の通り、大石寺の前にあるわけではない。
 三門前の国道を西に向かうと、途中で県道との十字路交差点にぶつかる。
 あの辺りにバス停がある。
 バスを降りると、その国道を東に向かった。
 既に夏の太陽が照り付け、マリアはローブを防暑着として羽織った。
 “フェイク”では登山者数の減少を揶揄して伝えている。
 特に具体的な数字を挙げていないところをみると、噂話程度のものなのであろう。
 ただ実際、富士急静岡バスが集計した乗客数を提供してもらうと、確かにそれは減少しているそうだ。
 実際、富士宮駅発着の登山バスは乗客数が理由で廃止されたことを鑑みると……。
 少なくとも、増えているという主張は無理があろう。
 もし増えているのなら、バスの本数も増えると思う。
 公共交通機関が不便だから登山者数が増えないのか、或いはその逆が理由なのか……。

 稲生:「先生から連絡はありましたか?」
 マリア:「いや、全く無い。多分、今日中にはあると思うけど」
 稲生:「そうですか」

 

 まだプレハブの囲いが目立つ三門前に到着する。

 稲生:「僕は登山事務所に行って手続きしてきますから、マリアさんは適当に見学でもしていてください」
 マリア:「分かった。多分ここは、教会の奴らは来ないだろうから安全地帯かな?」
 稲生:「来ようものなら、ガチ勢にフルボッコにされますからねぇ……。あ、ガチ勢で思い出した」
 ガチ勢信徒:「すいませーん、見学者の方ですか?もし宜しかったら……」
 稲生:「あ、すいません。僕、東京第3布教区の正証寺の信徒です」
 ガチ勢信徒:「あ、これは失礼しました」

 稲生とマリアは三門前から離れた。
 尚、東京第3布教区も正証寺も現実には存在しておらず、フィクションである。
 作者が法道院時代、『あまりにも折伏誓願が達成できない東京第1布教区や第2布教区の寺院が送られる、支部解散処分直前の不良布教区』という冗談を飛ばしたところ、【お察しください】。
 もしかして、ガチか?

 稲生:「時折、ガチ勢さんの山内折伏がありますので、もしエンカウントしたら日本語通じないフリでもしていてください」
 マリア:「そんなんでいいのか」
 稲生:「外人さんならではの、日本人に対する最大の攻撃かつ防御です」
 マリア:「英語で話しかけたりはしないのか?」
 稲生:「それができる山内折伏者がどれだけいるのか……。だって、さっきそうだったじゃないですか?」
 マリア:「あれは勇太に話しかけたんだろう?」
 稲生:「明らかに信徒じゃない恰好をしているのはマリアさんの方なのに、あの人は日本語で話し掛けて来たわけですよ。つまり、そういうことです」
 マリア:「ふーん……」

 尚、正証寺の信徒の殆どがそうである為、唯一英語が堪能な稲生が通訳担当なのだという。

 マリア:「来年にはオリンッピックが控えてるのにねぇ……」

 皆が皆、オリンピック開催に賛成していると思うなよ?(By作者)

 マリア:「確か日本政府はインバウンド政策を推進しているということだけど……」

 皆が皆、インバウンド政策に賛成していると思うなよ?(By作者)

 稲生:「何かさっきからカントクの声がうるさいので、これは撮り直しですかね?」

[同日12:00.天候:晴 同市内 大石寺境内仲見世“なかみせ”]

 布教講演を拝聴した稲生は再びマリアと合流して、昼食を取ることにした。

 稲生:「すいません、豚汁定食2つください」
 女将さん:「はい、ありがとうございます」
 マリア:(この暑いのに熱いものを食べて汗をかこうってヤツの気が知れないと思っていたけど、美味しそうだったので注文してみた)

 こぢんまりとした店内は昼時ということもあってか賑わっていた。

 マリア:「日本人以外の信者の方が多そうだな?」
 稲生:「おかげでマリアさんが目立たないわけです。昔は中国人が多かったものですが、今日は白人が多いな……」

 だからこそマリアが目立たない。

 マリア:「アメリカ人辺りかな?言い回しがそれっぽい」
 稲生:「あ、そうですか。結構早口の人が多いですね」

 アメリカのABCテレビのキャスターと、イギリスのBBCテレビのキャスターの喋り方を見比べてみると分かる。
 前者は日本語で言えば『大阪人』、後者は『京都人』なのだそうだ。
 ん?『東京人』どこ行った?

 稲生:「御開扉が終わったら、新富士駅に向かうバスが出るんです。それで帰りましょう」
 マリア:「分かった」
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