報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「再び埼玉へ戻る」

2019-08-05 18:57:26 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月4日12:03.天候:晴 東京都豊島区 JR池袋駅・埼京線ホーム]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の4番線の電車は、12時3分発、各駅停車、大宮行きです。次は、板橋に止まります〕

 稲生:「鈴木君と別れたら、今度は藤谷班長に捕まってしまいました」
 マリア:「遠巻きに、私も入信しろみたいな話に持って行こうとしていたけれど、そうはいかないから」
 稲生:「すいませんねぇ。うちの支部も、誓願未達成泥沼の19連敗中なもので、さすがにそろそろ講中解散処分でも来るかなぁってところなんですよ。御住職も何回入れ替わったことやら……」
 マリア:「大変みたいだけど、私は悪魔と契約中だから」
 稲生:「ええ。そうですよね」

〔まもなく4番線に、各駅停車、大宮行きが参ります。危ないですから、黄色いブロックまでお下がりください。次は、板橋に止まります〕

 接近放送の後でやってきた電車は、りんかい線の車両だった。

 稲生:「70-000形か。久しぶりに乗るなぁ……」

〔いけぶくろ〜、池袋〜。ご乗車、ありがとうございます〕

 『平成のモハ63系』と呼ばれたJR209系だが、それをちゃんと造るとこうなるというのが東京臨海高速鉄道の70-000形である。
 それでも座席は硬い。
 1番後ろの車両は空いていて、2人はブルーの座席に腰掛けた。
 りんかい線という名前に相応しく、車体の塗装や座席の色柄などは東京湾をイメージしているという。
 実際にりんかい線は、東京湾の下に掘った海底トンネルを走る。
 海底トンネルというと青函トンネルなどの御大層な代物をイメージしそうなものだが、実は東京では珍しくない。

〔「12時3分発、埼京線各駅停車、大宮行きです。まもなく発車致します」〕

 ホームからシンプルな発車メロディ(曲名:『高原』)が流れて来る。

〔4番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 JRの車両と同じく、2点チャイムが3回鳴ってドアが閉まる。
 乗降客の多い駅では珍しく、駆け込み乗車による再開閉は無かった。
 VVVFインバータも昔は『電車が歌っている』と言われるほどの独特の響きようだったが、今では随分と静かなものに変更された。
 トンネル区間では『幽霊電車の泣き声』と称されるほどの響き方で、元々90年代はオカルトブームであったが、新型電車であっても鉄道を舞台としたホラーに出て来るほどだった。
 そしてオカルトブームの牽引役だった新興宗教団体が悉く潰れていき、オカルトブームは今は昔の話になっている。

〔「ご乗車ありがとうございます。この電車は埼京線、各駅停車の大宮行きです。途中、武蔵浦和で快速電車の待ち合わせがございます。次は板橋、板橋です」〕

 JRの車両には自動放送があるが、りんかい線の車両には無い。

 マリア:「ランチはどうする?食べないで来ちゃったけど……」
 稲生:「映画でも観ながら食べますか。ムービックスのポップコーンとか、結構いいボリュームだし」
 マリア:「また新作の映画でもあるの?」
 稲生:「それがあるんですよ」
 マリア:「そりゃいい。映画観に行こう」

 作者個人的には、オカルトブームの火付け役は創価学会だと思っている。
 1991年に創価学会が破門になってから、オカルトブームが発生したような気がするのは気のせいだろうか。
 強いて言えば昭和52年の辺りからとも言えるが、ブーム化したのはやはり90年代であろう。
 信憑性の強いもの、明らかなインチキであるもの、玉石混淆のオカルト話が飛び交っていた90年代。
 創価学会や日蓮正宗の関わっていたものだけが、信憑性の強いオカルトであったと作者は思っている。
 それ以外は全てインチキ。
 そして、正本堂の取り壊しと共に信憑性の強いオカルトは姿を消した。
 あとはインチキでしかなかったオカルトだけが世間を飛び交い、瞬く間に2000年代に入ってからそのブームは終焉を迎えた。
 そう考えるのは如何だろうか?

 「あのオカルトブームは何だったのだろう?」

 その答えを解くカギが、日蓮正宗と創価学会にあると考えると面白い。
 顕正会はオカルトブームに乗ることなく信仰活動を続けたように見えるが、実はしっかり巻き込まれていたことに気づく。
 それは【禁則事項です】。

[同日12:47.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 JR北与野駅→さいたま新都心]

〔「まもなく北与野、北与野。お出口は、右側です」〕

 電車が各駅停車しか停車しない小さな駅のホームに滑り込む。
 いくら後続の快速電車に接続するとはいっても、肝心の下車駅が各駅停車しか止まらないのであれば乗り換えても意味は無い。

〔きたよの、北与野。ご乗車、ありがとうございます〕

 電車を降りると、殺人的な熱気が2人の魔道士を襲った。

 マリア:「こりゃヒドいな。病気になってしまう」
 稲生:「早いとこ新都心に移動しましょう。このままだと熱中症になりますね」

 階段を下りて改札口を出る。
 幸い、さいたま新都心駅とは高架歩道で繋がっている。
 ジリジリと照りつく太陽が眩しいが、それと同時に比較的強い風も吹いていた。
 ビル風かもしれないし、そうではないかもしれない。
 後者の場合、この風がゲリラ豪雨フラグを立てることがある。
 今の空はそれまでの梅雨空が嘘みたいに青空で、所々に雲が点在しているだけに過ぎない。

 マリア:「どういう映画観るの?また軍人やエージェントが銃を撃ちまくるヤツ?」
 稲生:「いえ。今回は趣向を変えて、ファンタジーもので行こうと思います」
 マリア:「ファンタジーもの……。魔界で嫌と言うほど観ているが……」
 稲生:「本当の『剣と魔法のファンタジー』ですよ。魔界王国アルカディアのファンタジーは、どらかというとFF(ファイナルファンタジー)の世界に近いですが、これから観るのはディズニーに近いかもしれません」

 何しろアルカディア王国空軍には、飛空艇が存在しているということで、それだけでもう【お察しください】。
 地上や地下には昭和時代の電車が走っている時点で、やはりファンタジーから少し離れてしまっているのだ。

 マリア:「それは楽しみだ。早く行こう」
 稲生:「ええ」
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“大魔道師の弟子” 「困った時の仏頼み」

2019-08-05 15:18:01 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月4日09:10.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 けんちゃんバス上落合公園前停留所]

 翌朝になり、稲生は都内の所属末寺に行くことにした。
 一応、宗一郎の快復を祈念しに行くのが目的である。

 稲生:「このバスですね」

 緑色に塗装された小型バスがやってきた。
 全国のコミュニティバスではよく見かける車種、日野自動車・ポンチョである。
 後ろ扉から乗り込むと、乗客は1人しか乗っていなかった。
 休日ダイヤの朝っぱらから混んでいる路線はそうそう無いか。
 1番後ろの席に座った。
 このバス停からの乗客は稲生達しかおらず、稲生達を乗せるとすぐに発車した。

〔「次は児童センター入口、児童センター入口でございまーす」〕

 マリア:「今日も暑いんだな」
 稲生:「そうですね。ま、バスの中は涼しいですけど」
 マリア:「この暑さで、師匠なんかすぐ日干しになるかも」
 稲生:「はは、まさか……」
 マリア:「“魔の者”も、この暑さじゃ死に掛かるだろう」
 稲生:「悪魔なのに!?」
 マリア:「うん」

 マリアは天井を指さした。

 ベルフェゴール:「あっちぃ……」

 バスの塗装は緑色一色である。
 これはマリアの契約悪魔ベルフェゴールのシンボルカラーであるからして、そういう乗り物にマリアが乗り込むと、ホイホイと自分は屋根の上に乗って羽を伸ばすのである。
 ところが、今回はそうも行かなかった。

 ベルフェゴール:「この暑さは悪魔でもキツい」

 キリスト教会が動かなくても、勝手に悪魔祓いされる日本の夏。

 マリア:「アナスタシア組、『日本国内における第2の拠点』と称して、今度はナス……何とかって所に別荘買ったらしい」
 稲生:「那須塩原とかですかね?」
 マリア:「そうそう!そこ!」
 稲生:「確かに、そこの那須高原も避暑地です。しかし、どうしてまたそこに?いい物件でも見つけましたかね?」
 マリア:「それもあるだろうけど、アナスタシア先生の愛称。ナスターシャのナス繋がりじゃない?」
 稲生:「そんな単純な……!」

 尚、その避暑地にて暑さから逃げているアナスタシアはこの時、くしゃみを3回ほどしたらしい。

 稲生:「ていうか、都内のタワマン最上階1部屋買っただけでも凄いのに、別荘まで買うなんて、どんだけセレブですか!」
 マリア:「弟子が多いということは、それだけ中には稼ぎ頭を張るヤツもいるということで……。で、アナスタシア先生自身が師匠より稼ぐ人だから、そういうことじゃない?師匠と違うのは、師匠は安酒チビチビ飲むタイプだけど、アナスタシア先生はドカッとドンペリ空けるような人ってこと」

 日本人で言うとイリーナは関西人タイプ、アナスタシアは江戸っ子タイプということか。
 ほら、よく『江戸っ子は宵越しの金は持たねぇ』とか言うだろう?

 稲生:「それでよくケンカしてるんですね」
 マリア:「そういうこと」
 稲生:「てか、日本に第2の拠点作る時点で、永住する気満々じゃありません?」
 マリア:「それな。既に私という永住者がいるのに、アナスタシア組まで永住されたんじゃねぇ……」
 稲生:「また先生とケンカになるわけか……」

 今のところアナスタシア組は観光ビザだけでなく、就労ビザだの留学ビザだのを駆使してなるべく日本に滞在しようとしているらしいが、いかんせんロシアという時点で日本政府は永住許可を出さないのである。

 マリア:「いい加減、日本人の弟子でも入れりゃいいのに……」
 稲生:「鈴木君とかは?」
 マリア:「あー……【お察しください】」

[同日10:30.天候:晴 東京都豊島区 日蓮正宗・正証寺]

 マリア:「……キリスト教会の奴らはいる?」
 稲生:「いませんね。奴らも日曜日の午前中はミサで忙しいんですよ」
 マリア:「教会に限らず、私達は宗教全般が敵のようなものだ。にも関わらず、まさか勇太の寺がセーフティゾーンになるとはな……」
 稲生:「仏教には魔女狩りや魔女裁判の歴史がありませんからね。人間の形さえしていれば、誰でもOKなんですよ」

 但し、御受誡するにあたっては、『反社勢力の者ではないこと』『服役中ではないこと』『住所不定ではないこと』が条件である。
 外国人にあっても、先述の3つに該当しなければ良いのだが、少なくともビザの内容で選別した方が良いと思う。
 特に観光ビザで入国している外国人の御受誡は無謀であり、それでは顕正会と変わらないような気がするのだが。

 マリア:「なるほど。勇太の所も御祈りが?」
 稲生:「御講は毎週あるわけではなく、今日は静かなものですよ。マリアさんは客間で待っててください」
 マリア:「ああ、分かった」

 稲生達は境内に入った。

 稲生:「こんにちはー」
 御住職:「ああ、稲生さん、いらっしゃい。参詣ですか?」
 稲生:「はい。父が倒れたもので、快復の御祈念を御本尊様に……」
 御住職:「それは大変ですね。それでは本堂に……」

 稲生が本堂に行く前、受付に御供養を置いていった。
 宿坊では直接本堂にお供えするが、末寺では受付にお供えする。

 稲生:「今日もまた聖ジャンジョン教会の魔女狩り隊が?」
 御住職:「今日は静かなものですよ。何しろ池袋周辺は法道院さんやら妙観講さんやらが街頭折伏に奔走されておりますので、そこに外道の信者がいようものなら【お察しください】ですから」
 稲生:「こういう時だけ、ガチ勢は頼りになりますねぇ……」

 他支部任せで何もしない末寺、正証寺w

 鈴木:「あれ?稲生先輩」
 稲生:「おー、鈴木君。久しぶり」
 鈴木:「お久しぶりです。先輩も唱題ですか」
 稲生:「そうなんだよ。父親が病気で倒れたものだから、ちょっと御本尊様に御祈念をね……」
 鈴木:「そうですか。昔、先輩に怨嫉して御本尊様を返納させ、仏壇を叩き壊し、離檀届を書かせた罰がついに……!」
 稲生:「仏壇は転売されただけで別に叩き壊されたわけじゃないし、他人に言われると何かムカつくなぁ!」

 尚、離檀届は郵便ポストに入れた後、沿道でブレーキとアクセルを踏み間違えた暴走老人の車がトラックに追突し、追突されたトラックが弾みで郵便ポストをぶっ壊した上、飛散した手紙がたまたま通過した貨物列車の屋根の上に乗っかって、そのまま他県へ飛んで行ってしまったそうである。
 その中に離檀届の入った封筒もあったらしい。
 使命の強い者が離檀しようとすると、何としてでも阻止しようという諸天の動きが凄まじいのである。

 鈴木:「こりゃ失礼しました。それより先輩、明日ヒマですか?」
 稲生:「明日?まあね。取りあえず、父さんの手術が終わって、退院するまでは家にいようと思っていたから……。それがどうしたの?」
 鈴木:「このお寺の御本尊様も顕正会には無い立派なものですが、もっと立派な御本尊様を拝みに行きませんか?」
 稲生:「鈴木君、明日、月曜日だよ?」
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