[5月19日15:30.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区福室 ホテルキャッスルイン仙台]
マリア:「ちょっ……!ルーシー!?何してんの!?」
ルーシーが稲生に背中を向けてTシャツを脱ぎ捨てたのと、マリアがトイレから出て来たのは同時だった。
しかしお構いなしに、今度はブラジャーも取る。
だが、その時点で普通の女性とは大きな違和感があった。
それは全身にタトゥーが入っていること。
最初は変わったタトゥーだなと思った稲生だが、実はそうではないことに気づいた。
それは火傷の痕。
それも、全てが十字架の形をしていた。
ルーシー:「これが私のトラウマ。前はさすがに見せられないけど、前にも同じようにある」
稲生:( ゚д゚)
マリア:「いいの?勇太に見せちゃって……」
ルーシー:「ここまで来たら、もういいでしょ」
稲生:「な……何ですか、それは?」
マリア:「ほら、早く服着て」
マリアはルーシーにブラジャーとTシャツを渡した。
ルーシーをそれを着けながら話す。
ルーシー:「私が小さい時から強い魔力を持っていて、それが制御できずに暴走させていたという話はしたでしょ?」
稲生:「ええ、まあ……」
稲生の場合は霊力。
暴走させることはなかったが、常人には見えない幽霊や妖怪の類が見えたせいでそれらから襲撃されることは多々あった。
極めつけは威吹の封印を解いたことだ。
江戸時代の巫女が掛けた封印を、ただの中学生だった稲生が触っただけで解けるほどに霊力が強かったのである。
ルーシーと明暗が分かれたのはその辺り。
威吹も最初は稲生の霊力を目当てに近づいたものの、結果的には他の妖怪からの攻撃をブロックする役割をしてくれた。
しかし、ルーシーの前にはそのような者は現れなかった。
ルーシー:「何度も教会からは悪魔祓いの勧告を受けて、それを何度もやったんだけど結局ダメで……」
稲生:「ま、そりゃそうでしょうね。あんな外道で何ができますか」
日蓮大聖人の仏法のみ、力を制限することができる。
しかし間違ったものは却って暴走を引き起こす。
顕正会の仏法が正にそうだった。
妖怪側(威吹を含む)から見れば、株価の急上昇並みに美味しい現象であったが、上げられる方はたまったものじゃないと。
日蓮正宗に入ってからは安定化したが、威吹にとっては『(´・ω・`)ショボーン』であった。
ルーシー:「ついには過激な教会に魔女として捕まって、『お前は悪魔の子だ!』と言われて、焼けた十字架を何度も押し付けられたの」
稲生:「うわ……!これだから外道って怖いんですよね」
マリア:「正に教会の方が悪魔の所業だ」
稲生はあくまで『伝統仏教以外の宗教』という意味で外道と言っていたのだが、マリアとしては世間一般的な意味合いの外道(人の道を外れた)という意味で言っている。
ルーシー:「その神父からは、『必ずや周囲に呪いをもたらすこととなるだろう。一生、地下室から出てはならぬ!』と言われた。けど、私は出た」
稲生:「ああ、出ていいですよ。何の権限があってそんなこと言ってるんですかね!」
マリア:「日本人には分からないと思うけど、地域によっては教会の力は絶対的な所があるよ。勇太の所だって、寺の住職の言葉は絶対だろ?」
稲生:「ま、まあそうですね。(でもそれを過信した結果が、正信会……)」
ルーシー:「でも出たら、大変なことになったの」
稲生:「それは、いつの話ですか?」
ルーシー:「2005年頃……」
稲生:「ロンドンの地下鉄とバスがいくつも爆弾テロを受けた年ですね。ルーシーさんは、それに巻き込まれたんですね」
マリア:「何だって!?」
ルーシーは小さく頷いた。
ルーシー:「地下鉄で働いていた父を頼って、そこへ向かったの。そしたら……」
マリア:「テロに巻き込まれたか……」
ルーシー:「あの神父の言う通りになってしまった……。私が我慢して地下室にいれば、あんなことには……」
稲生:「いやいや、あれはイスラム過激派のテロでしょう?これだから外道はダメなんですよ」
マリア:「“魔の者”が神に成り済まして、カルトに陥ったヤツを唆してテロをさせることもある。多分それだろう」
稲生:「僕、仏教で良かった。仏様は夢に現れることはないからなぁ……」
マリア:「ルーシーのダディはそれで?」
ルーシーは小さく頷いた。
しかしルーシー自身も瀕死の重傷を負い、生死の境をさ迷ったのだが、気がついたら同じロンドンの西、イングランドの片田舎にいた。
ルーシーを拾ったのが、今の師匠ベイカーだった。
稲生:「マリアさんと言い、この門流は新弟子入門として死を潜り抜けさせるんですね」
マリア:「そうすることで、『人間としての人生を終え、魔道士としての人生を始める』という儀式の代わりなんだ。私の時もそうだった」
もちろん、本当に死を体験するわけではない。
マリアの場合は飛び降り自殺を図るわけだが、地面に激突する寸前、イリーナに魔法で阻止された。
当然そこでイリーナが魔法を使わなければ間違いなく死んでいただろう。
そうすることで、『人間としての人生を終えた』ということにしたわけである。
ルーシーの場合、病院に運ばれる前にベイカーが魔法で召喚したらしい。
つまり、病院で治療を受けなければ『人間としての人生を終えた』ということにしたわけだ。
稲生:「ルーシーさんが地下室や地下鉄にトラウマがあるのはそれだったんですね」
エレーナやリリィにはそれが無いし、特に後者は暗くてジメジメした所が好きなのでむしろパラダイスなのだが、ルーシーはそれではパラダイスとは絶対に言えないだろう。
稲生:「僕の場合はそれが無かったですね。それで『新卒採用』なんて言われるんだ」
マリア:「いや、勇太だってあったよ」
稲生:「えっ?」
マリア:「魔王城決戦の直前、勇太、地獄界に行って戻って来れなかったじゃない!最後はバァルの爺さんが特別に戻してくれたけどさ」
稲生:「あっ……!」
マリア:「師匠的にはあれだよ、きっと」
魔王城決戦では、日本やイギリスのような立憲君主制を掲げる新政府軍と、北朝鮮のような絶対王制(え?北朝鮮は違う?いやいや、実質的にそうだろ)を掲げる旧政府軍の最後の決戦の場になった(大統領制を求める声は無かった)。
最終的には新政府軍が勝利するわけだが、旧政府(魔界帝国アルカディア)側のリーダーだった大魔王バァルが稲生を地獄界から戻し、自身は大師匠ダンテと共に冥界へと向かった。
稲生:「あー、なるほど!」
ルーシー:「実際に地獄まで逝った勇太が1番凄いんじゃないの!?」
マリア:「今度、勇太に『新卒採用』なんて言いやがったヤツにはそう言ってやる」
ルーシー:「う、うん。その方がいいよ」
実は最初、ルーシーも稲生にそう言おうとしていたらしい。
マリア:「ちょっ……!ルーシー!?何してんの!?」
ルーシーが稲生に背中を向けてTシャツを脱ぎ捨てたのと、マリアがトイレから出て来たのは同時だった。
しかしお構いなしに、今度はブラジャーも取る。
だが、その時点で普通の女性とは大きな違和感があった。
それは全身にタトゥーが入っていること。
最初は変わったタトゥーだなと思った稲生だが、実はそうではないことに気づいた。
それは火傷の痕。
それも、全てが十字架の形をしていた。
ルーシー:「これが私のトラウマ。前はさすがに見せられないけど、前にも同じようにある」
稲生:( ゚д゚)
マリア:「いいの?勇太に見せちゃって……」
ルーシー:「ここまで来たら、もういいでしょ」
稲生:「な……何ですか、それは?」
マリア:「ほら、早く服着て」
マリアはルーシーにブラジャーとTシャツを渡した。
ルーシーをそれを着けながら話す。
ルーシー:「私が小さい時から強い魔力を持っていて、それが制御できずに暴走させていたという話はしたでしょ?」
稲生:「ええ、まあ……」
稲生の場合は霊力。
暴走させることはなかったが、常人には見えない幽霊や妖怪の類が見えたせいでそれらから襲撃されることは多々あった。
極めつけは威吹の封印を解いたことだ。
江戸時代の巫女が掛けた封印を、ただの中学生だった稲生が触っただけで解けるほどに霊力が強かったのである。
ルーシーと明暗が分かれたのはその辺り。
威吹も最初は稲生の霊力を目当てに近づいたものの、結果的には他の妖怪からの攻撃をブロックする役割をしてくれた。
しかし、ルーシーの前にはそのような者は現れなかった。
ルーシー:「何度も教会からは悪魔祓いの勧告を受けて、それを何度もやったんだけど結局ダメで……」
稲生:「ま、そりゃそうでしょうね。あんな外道で何ができますか」
日蓮大聖人の仏法のみ、力を制限することができる。
しかし間違ったものは却って暴走を引き起こす。
顕正会の仏法が正にそうだった。
妖怪側(威吹を含む)から見れば、株価の急上昇並みに美味しい現象であったが、上げられる方はたまったものじゃないと。
日蓮正宗に入ってからは安定化したが、威吹にとっては『(´・ω・`)ショボーン』であった。
ルーシー:「ついには過激な教会に魔女として捕まって、『お前は悪魔の子だ!』と言われて、焼けた十字架を何度も押し付けられたの」
稲生:「うわ……!これだから外道って怖いんですよね」
マリア:「正に教会の方が悪魔の所業だ」
稲生はあくまで『伝統仏教以外の宗教』という意味で外道と言っていたのだが、マリアとしては世間一般的な意味合いの外道(人の道を外れた)という意味で言っている。
ルーシー:「その神父からは、『必ずや周囲に呪いをもたらすこととなるだろう。一生、地下室から出てはならぬ!』と言われた。けど、私は出た」
稲生:「ああ、出ていいですよ。何の権限があってそんなこと言ってるんですかね!」
マリア:「日本人には分からないと思うけど、地域によっては教会の力は絶対的な所があるよ。勇太の所だって、寺の住職の言葉は絶対だろ?」
稲生:「ま、まあそうですね。(でもそれを過信した結果が、正信会……)」
ルーシー:「でも出たら、大変なことになったの」
稲生:「それは、いつの話ですか?」
ルーシー:「2005年頃……」
稲生:「ロンドンの地下鉄とバスがいくつも爆弾テロを受けた年ですね。ルーシーさんは、それに巻き込まれたんですね」
マリア:「何だって!?」
ルーシーは小さく頷いた。
ルーシー:「地下鉄で働いていた父を頼って、そこへ向かったの。そしたら……」
マリア:「テロに巻き込まれたか……」
ルーシー:「あの神父の言う通りになってしまった……。私が我慢して地下室にいれば、あんなことには……」
稲生:「いやいや、あれはイスラム過激派のテロでしょう?これだから外道はダメなんですよ」
マリア:「“魔の者”が神に成り済まして、カルトに陥ったヤツを唆してテロをさせることもある。多分それだろう」
稲生:「僕、仏教で良かった。仏様は夢に現れることはないからなぁ……」
マリア:「ルーシーのダディはそれで?」
ルーシーは小さく頷いた。
しかしルーシー自身も瀕死の重傷を負い、生死の境をさ迷ったのだが、気がついたら同じロンドンの西、イングランドの片田舎にいた。
ルーシーを拾ったのが、今の師匠ベイカーだった。
稲生:「マリアさんと言い、この門流は新弟子入門として死を潜り抜けさせるんですね」
マリア:「そうすることで、『人間としての人生を終え、魔道士としての人生を始める』という儀式の代わりなんだ。私の時もそうだった」
もちろん、本当に死を体験するわけではない。
マリアの場合は飛び降り自殺を図るわけだが、地面に激突する寸前、イリーナに魔法で阻止された。
当然そこでイリーナが魔法を使わなければ間違いなく死んでいただろう。
そうすることで、『人間としての人生を終えた』ということにしたわけである。
ルーシーの場合、病院に運ばれる前にベイカーが魔法で召喚したらしい。
つまり、病院で治療を受けなければ『人間としての人生を終えた』ということにしたわけだ。
稲生:「ルーシーさんが地下室や地下鉄にトラウマがあるのはそれだったんですね」
エレーナやリリィにはそれが無いし、特に後者は暗くてジメジメした所が好きなのでむしろパラダイスなのだが、ルーシーはそれではパラダイスとは絶対に言えないだろう。
稲生:「僕の場合はそれが無かったですね。それで『新卒採用』なんて言われるんだ」
マリア:「いや、勇太だってあったよ」
稲生:「えっ?」
マリア:「魔王城決戦の直前、勇太、地獄界に行って戻って来れなかったじゃない!最後はバァルの爺さんが特別に戻してくれたけどさ」
稲生:「あっ……!」
マリア:「師匠的にはあれだよ、きっと」
魔王城決戦では、日本やイギリスのような立憲君主制を掲げる新政府軍と、北朝鮮のような絶対王制(え?北朝鮮は違う?いやいや、実質的にそうだろ)を掲げる旧政府軍の最後の決戦の場になった(大統領制を求める声は無かった)。
最終的には新政府軍が勝利するわけだが、旧政府(魔界帝国アルカディア)側のリーダーだった大魔王バァルが稲生を地獄界から戻し、自身は大師匠ダンテと共に冥界へと向かった。
稲生:「あー、なるほど!」
ルーシー:「実際に地獄まで逝った勇太が1番凄いんじゃないの!?」
マリア:「今度、勇太に『新卒採用』なんて言いやがったヤツにはそう言ってやる」
ルーシー:「う、うん。その方がいいよ」
実は最初、ルーシーも稲生にそう言おうとしていたらしい。
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