[8月29日08:00.天候:雨 埼玉県さいたま市中央区 稲生家1Fダイニング]
テレビでは台風中継をやっていた。
よく台風が上陸してくる静岡県の御前崎では、既にテレビ記者が好例の暴風雨に晒されながらのリポートを行っている。
稲生佳子:「今日は出掛けない方がいいんじゃない?」
稲生勇太:「う、うん。今日は家でゆっくりしてるよ」
稲生宗一郎:「その方がいい。父さん達は仕事だから、家の方は頼んだぞ」
勇太:「分かった。台風の時くらい休めばいいのに……」
宗一郎:「電車がまだ動いている以上、社員達は出勤してくるというのに、重役の私がのうのうと休んでられるか」
言っていることは立派なのだが、多分社員達にとっては【お察しください】(と、労働組合員の立場からボソッと……)。
佳子:「私も仕事なんだけどね。もしかしたら、帰り際は電車が止まって遅くなるかもしれないから」
勇太:「分かった。その時はルゥ・ラで……」
イリーナ:「勇太君」
勇太:「おっと……!」
あくまでここでのイリーナは魔道師ではなく、表向きの稼業をしている『世界的に著名な占い師』であり、勇太はそこに弟子入りしたことになっている。
マリア:「ハイヤー、来マシタヨ」
マリアが窓の外を見ながら言った。
勇太の両親へのアピールの為か、ここでは自動通訳魔法具を使わない。
自力で勉強した日本語を話す。
宗一郎:「そうか。今日は早いな」
佳子:「そりゃもう、電車を諦めて車に切り替える人もいるからねぇ……」
宗一郎:「すぐ準備する。せっかくだから、佳子も途中まで乗って行け」
佳子:「ありがとう」
勇太:「駅まで乗っけてってあげたら?」
こうして勇太の両親は台風が接近してくる中、それぞれの職場に出勤して行った。
佳子も本来なら車通勤なのだが、さすがにこんな台風の中、コンパクトカーで移動するのは危険か。
まだ、宗一郎を迎えに来た3ナンバーのハイヤーに乗った方がいいかもしれない。
[同日09:00.天候:雨 稲生家1F仏間]
朝食が終わった後、魔道師達は仏間に移動した。
因みに片付けはマリアのメイド人形が人間形態になり、代わりにやってくれた。
仏間にはかつて勇太が用意した日蓮正宗仕様(?)の仏壇が置いてあり、そこに御本尊も安置していたのだが、怨嫉により撤去され、御本尊も返納の憂き目に遭った。
現実は“となりの沖田くん”のように、そう都合良く行かないのだよ!はっはっはー!
元々稲生家は稲荷信仰ということもあり、代わりに神棚が祭ってある。
仏壇を置くスペースは空洞になっている。
で、この部屋が臨時の講義室ということになる。
イリーナ:「勇太君の懸念もあるので、早速始めましょう」
マリア:「ちょっと待ってください。そういえば今朝、私達の部屋に飛び込んで来た理由って何?」
勇太:「あ、そうか。マリアさんには話してなかった」
勇太はポンと手を叩いた。
マリア:「なに?」
勇太:「いえ、昨夜、丑寅勤行をやったんです。大石寺の客殿で午前2時半から行われる勤行です」
お坊さん達にとってはこれが朝勤行ってことは、えーと……どういうことだ?
大石寺のお坊さん達の朝は午前2時半から始まる?
勇太:「夜中に目が覚めて、なかなか寝付けなかったもので……」
マリア:「それがどうした?」
勇太:「やっている最中に、何だか外が騒がしくなって……。でも、途中で止めるわけにもいかないし……」
イリーナ:「賢明な判断だったね。そういう儀式めいたものは、途中で止めてはダメよ?」
勇太:「はい。ただ、それだけなんですけど、アスモデウスが部屋に入ってきてこう言ったんです」
アスモデウスとはキリスト教における七つの大罪のうち、『色欲』を司る悪魔である。
その為、悪魔の世界の中では高級な部類に属する。
勇太との契約が内定していることもあり(勇太はまだ見習なので、正式な契約が結べない)、時折様子を見に来るのである。
悪魔の見た目はその人間の心理に大きく左右されるものの為、かつては黒ギャルの姿で勇太の前に現れていたが、今では白ギャルに変わっている。
勇太:「『近くで悪魔の召喚術式をやってたもんで、ついつい見に行っちゃったよ。他のヤツが先に召喚されてたから、アタシの出番は無かったけどね』なんて……」
マリア:「悪魔の召喚術だって!?」
イリーナ:「いや、アタシもね、昨夜トイレに入っている時に何となくそう感じたのよ。でね、トイレから戻っている最中に悪魔達が外に出て行くのを見たものだからさぁ……」
勇太:「さすがに勤行が終わる頃には僕も眠くなっていたので、話半分にしか聞いてなかったんですが、起きてからよくよく考えてみると、これってヤバいことなんじゃないかと……」
イリーナ:「うん、ヤバいだろうね」
マリア:「よっぽどちゃんとした儀式と、それなりの強い念が無い限りは、そうそう滅多に悪魔なんて呼び出せないものだと思いますけど?」
マリアの場合はかなり念が強かったらしい。
だが哀しいかな、神(イエス・キリスト)に祈ったつもりが、人間時代にとても強い迫害を受けていたマリアに救いの手を差し伸べたのは悪魔だった。
稲生:「マリアさんみたいな人が呼び出した?」
マリア:「うそ!?」
イリーナ:「有り得なくは無いね。この辺りは、私の契約悪魔に任せておきましょう。悪魔のことは、同じ悪魔に任せておくべきだわ。大丈夫。昨夜、私の契約悪魔も野次馬しに行ったみたいだから。ね?」
レヴィアタン:「……Yes.」
いつの間にかイリーナの傍らに現れたレヴィアタンが、咳払いをしながら頷いた。
野次馬根性で見に行ったことがバレバレで、バツが悪かったのだろうか。
レヴィアタン:「あー……その……何だ」
まるでスパイ機関のエージェントのような姿をしたレヴィアタン。
但し、映画のそれが殆ど黒服に身を包んでいるようなイメージの中、この季節にそぐわないマフラーだけはシンボルカラーのピンク色だった。
アスモデウス:「はいはい。じゃ、調査に行って来ますから。ほら、行くよ」
レヴィアタン:「う、うむ……」
アスモデウスは相変わらずギャルの恰好をしていたが、硬派(?)のレヴィアタンの腕を掴んで出て行った。
悪魔達にとっては、外が台風でも何のそのらしい。
テレビでは台風中継をやっていた。
よく台風が上陸してくる静岡県の御前崎では、既にテレビ記者が好例の暴風雨に晒されながらのリポートを行っている。
稲生佳子:「今日は出掛けない方がいいんじゃない?」
稲生勇太:「う、うん。今日は家でゆっくりしてるよ」
稲生宗一郎:「その方がいい。父さん達は仕事だから、家の方は頼んだぞ」
勇太:「分かった。台風の時くらい休めばいいのに……」
宗一郎:「電車がまだ動いている以上、社員達は出勤してくるというのに、重役の私がのうのうと休んでられるか」
言っていることは立派なのだが、多分社員達にとっては【お察しください】(と、労働組合員の立場からボソッと……)。
佳子:「私も仕事なんだけどね。もしかしたら、帰り際は電車が止まって遅くなるかもしれないから」
勇太:「分かった。その時はルゥ・ラで……」
イリーナ:「勇太君」
勇太:「おっと……!」
あくまでここでのイリーナは魔道師ではなく、表向きの稼業をしている『世界的に著名な占い師』であり、勇太はそこに弟子入りしたことになっている。
マリア:「ハイヤー、来マシタヨ」
マリアが窓の外を見ながら言った。
勇太の両親へのアピールの為か、ここでは自動通訳魔法具を使わない。
自力で勉強した日本語を話す。
宗一郎:「そうか。今日は早いな」
佳子:「そりゃもう、電車を諦めて車に切り替える人もいるからねぇ……」
宗一郎:「すぐ準備する。せっかくだから、佳子も途中まで乗って行け」
佳子:「ありがとう」
勇太:「駅まで乗っけてってあげたら?」
こうして勇太の両親は台風が接近してくる中、それぞれの職場に出勤して行った。
佳子も本来なら車通勤なのだが、さすがにこんな台風の中、コンパクトカーで移動するのは危険か。
まだ、宗一郎を迎えに来た3ナンバーのハイヤーに乗った方がいいかもしれない。
[同日09:00.天候:雨 稲生家1F仏間]
朝食が終わった後、魔道師達は仏間に移動した。
因みに片付けはマリアのメイド人形が人間形態になり、代わりにやってくれた。
仏間にはかつて勇太が用意した日蓮正宗仕様(?)の仏壇が置いてあり、そこに御本尊も安置していたのだが、怨嫉により撤去され、御本尊も返納の憂き目に遭った。
元々稲生家は稲荷信仰ということもあり、代わりに神棚が祭ってある。
仏壇を置くスペースは空洞になっている。
で、この部屋が臨時の講義室ということになる。
イリーナ:「勇太君の懸念もあるので、早速始めましょう」
マリア:「ちょっと待ってください。そういえば今朝、私達の部屋に飛び込んで来た理由って何?」
勇太:「あ、そうか。マリアさんには話してなかった」
勇太はポンと手を叩いた。
マリア:「なに?」
勇太:「いえ、昨夜、丑寅勤行をやったんです。大石寺の客殿で午前2時半から行われる勤行です」
お坊さん達にとってはこれが朝勤行ってことは、えーと……どういうことだ?
大石寺のお坊さん達の朝は午前2時半から始まる?
勇太:「夜中に目が覚めて、なかなか寝付けなかったもので……」
マリア:「それがどうした?」
勇太:「やっている最中に、何だか外が騒がしくなって……。でも、途中で止めるわけにもいかないし……」
イリーナ:「賢明な判断だったね。そういう儀式めいたものは、途中で止めてはダメよ?」
勇太:「はい。ただ、それだけなんですけど、アスモデウスが部屋に入ってきてこう言ったんです」
アスモデウスとはキリスト教における七つの大罪のうち、『色欲』を司る悪魔である。
その為、悪魔の世界の中では高級な部類に属する。
勇太との契約が内定していることもあり(勇太はまだ見習なので、正式な契約が結べない)、時折様子を見に来るのである。
悪魔の見た目はその人間の心理に大きく左右されるものの為、かつては黒ギャルの姿で勇太の前に現れていたが、今では白ギャルに変わっている。
勇太:「『近くで悪魔の召喚術式をやってたもんで、ついつい見に行っちゃったよ。他のヤツが先に召喚されてたから、アタシの出番は無かったけどね』なんて……」
マリア:「悪魔の召喚術だって!?」
イリーナ:「いや、アタシもね、昨夜トイレに入っている時に何となくそう感じたのよ。でね、トイレから戻っている最中に悪魔達が外に出て行くのを見たものだからさぁ……」
勇太:「さすがに勤行が終わる頃には僕も眠くなっていたので、話半分にしか聞いてなかったんですが、起きてからよくよく考えてみると、これってヤバいことなんじゃないかと……」
イリーナ:「うん、ヤバいだろうね」
マリア:「よっぽどちゃんとした儀式と、それなりの強い念が無い限りは、そうそう滅多に悪魔なんて呼び出せないものだと思いますけど?」
マリアの場合はかなり念が強かったらしい。
だが哀しいかな、神(イエス・キリスト)に祈ったつもりが、人間時代にとても強い迫害を受けていたマリアに救いの手を差し伸べたのは悪魔だった。
稲生:「マリアさんみたいな人が呼び出した?」
マリア:「うそ!?」
イリーナ:「有り得なくは無いね。この辺りは、私の契約悪魔に任せておきましょう。悪魔のことは、同じ悪魔に任せておくべきだわ。大丈夫。昨夜、私の契約悪魔も野次馬しに行ったみたいだから。ね?」
レヴィアタン:「……Yes.」
いつの間にかイリーナの傍らに現れたレヴィアタンが、咳払いをしながら頷いた。
野次馬根性で見に行ったことがバレバレで、バツが悪かったのだろうか。
レヴィアタン:「あー……その……何だ」
まるでスパイ機関のエージェントのような姿をしたレヴィアタン。
但し、映画のそれが殆ど黒服に身を包んでいるようなイメージの中、この季節にそぐわないマフラーだけはシンボルカラーのピンク色だった。
アスモデウス:「はいはい。じゃ、調査に行って来ますから。ほら、行くよ」
レヴィアタン:「う、うむ……」
アスモデウスは相変わらずギャルの恰好をしていたが、硬派(?)のレヴィアタンの腕を掴んで出て行った。
悪魔達にとっては、外が台風でも何のそのらしい。
だいぶ昔、同じ自己愛ウィルス発症者から、「お前に聞いてんじゃねぇよ!氏ね!」とか言われてなかったかな?
なるほど・・・。
そもそも論なんですけど、何故大聖人様は御書で
弘安2年10月12日に、本門戒壇之大御本尊様を
建立された旨、信徒に知らせなかったんですかね?
本門事の戒壇に御安置すべき、究竟の御本尊なのに・・。
そういった御書が残っていれば、これほどまでに
分裂する必要はなかったんじゃないかと僕は思う
んですが・・。