報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「エミリーとの再会」

2017-02-08 20:45:36 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月8日07:00.天候:雨 埼玉県さいたま市 敷島孝夫とアリスの住むマンション]

 アリス:「……!!」

 アリスはワケの分からない夢を見て目が覚めた。

 アリス:(何か最近、変な夢ばかり見てる。何なの……?)

 と、そこへ夫婦の寝室のドアが開けられた。
 入って来たのはシンディ。

 シンディ:「マスター、起床のお時間ですよ。社長も」
 敷島:「何だ、まだ7時じゃないか。日曜日なんだから、もう少しゆっくり……」
 シンディ:「今日は姉さんと平賀博士が来るんでしょう?駅まで迎えに行くから、起こしてくれって言ったじゃない」
 敷島:「……っと!そうだった。アリス、お前も」
 アリス:「うん……」

 敷島とアリスは互いのベッドから起き出した。

 敷島:「平賀先生達は何時の新幹線で来るって?」
 シンディ:「9時過ぎよ。“やまびこ”122号」
 敷島:「山形新幹線連結の、仙台駅始発の新幹線か。平賀先生、狙ったな」
 シンディ:「二海が朝食の用意をしているので、早く朝の支度をしてください」
 敷島:「ああ、分かった」

 敷島は寝ぼけた頭を振りながら、洗面台に向かった。

 シンディ:「マスター?マスターもお早く……」
 アリス:「シンディ、私、もう少し寝てる」
 シンディ:「どうかなさったのですか?」
 アリス:「うん……ちょっと具合悪い」

[同日07:30.天候:雨 敷島のマンション]

 敷島:「なに?アリスが?」
 シンディ:「ええ。具合が悪いので、休みたいと」
 敷島:「元々研究員は土日休みだろう?科学館はどちらかというと、ガイド(案内係の職員)がメインだからな。バックグラウンドの研究員は、平日だけの勤務だし、本来は」
 シンディ:「きっと、昨日の『敷島家の新年会』でお疲れになったのでしょうね」
 敷島:「うん、あるな、それ。アリスも俺と結婚して、敷島家の一員になったわけだが、疲れることばかりだろう。いいや、そういうことなら。お前、今日はアリスの面倒見てやってくれ。平賀先生への挨拶は俺1人でいい」
 シンディ:「分かりました」

 敷島は二海の焼いたトーストに齧りついた。

 朝食が終わって、敷島は再び寝室に向かったのだが……。

 アリス:「シンディは、タカオに付いて行って」
 シンディ:「かしこまりました」
 敷島:「おい、まさか、風邪でも引いたのか?ただでさえ白人で肌が白いのに、もっと青白くなってるぞ?」
 シンディ:「うん……。頭が痛い……」
 敷島:「今日は日曜日で病院は開いてないし……」
 シンディ:「救急箱に頭痛薬があります」
 アリス:「ここには二海がいるから、大丈夫。アンタ、平賀教授とエミリーに会ってきて。シンディも、エミリーに会いたいでしょ?」
 シンディ:「……はい。でも、マスターのことが最優先ですから」
 敷島:「そうだよ。お前が病気になるなんて……。だから、今日は雨なのか」
 アリス:「いいから、シンディを連れてけっ」
 敷島:「分かった分かった」

 敷島とシンディが外出した後、アリスは起き上がってトイレに向かった。
 そして、その戸棚にある生理用ナプキンを取り出したのだった。

 アリス:「変な夢見たせいで、今回は早めか……。ってか、トニーの弟か妹産んであげたいのに……。あんにゃろめ、また無精子になりやがったかな……。またシンディに電気ショック与えてもらおうかな……」

[同日09:10.天候:雨 JR大宮駅・新幹線ホーム]

 敷島:「……ックシュ!」(大きなクシャミをする)
 シンディ:「大丈夫ですか、社長?」
 敷島:「ああ。どうせアリスが俺に対して、何か愚痴でも言ってんだろ」
 シンディ:「二海からはそんな報告は無いですが……。今日は雨で、気温も低いですから」
 敷島:「よくよく考えてみたら、昨日の今日だから二日酔いなだけかもな。今から思えば、若干あいつ、まだ酒が残っていたような気がする」
 シンディ:「マスターにはアルコールチェックをしていないので、何とも言えません」

〔14番線に、“やまびこ”“つばさ”122号、東京行きが17両編成で参ります。この電車は途中、上野に止まります。……〕

 ホームに自動接近放送が響き渡る。

 敷島:「おっ、来たな」
 シンディ:「ええ……」

 何故かシンディは両手を前に組んで、俯いていた。
 まるで、何かに怯えているようにも見えた。

 敷島:「どうした、シンディ?お前もどこか調子が悪いのか?」
 シンディ:「いえ、そんなことは……ないです」
 敷島:「エミリーが怖いのか?」
 シンディ:「め、滅相も無いです。元々姉さんは、私達マルチタイプの中では1番厳しいロイドでしたから」

〔「14番線、ご注意ください。“やまびこ”“つばさ”122号、東京行きの到着です。お下がりください」〕

 東北新幹線では最古参のE2系を先頭に、長大編成の列車が入線してきた。
 平賀達はグリーン車に乗ってやってくるはずなので、9号車の位置で待っている。

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮、大宮です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕

 ドアが開いて、乗客が降りてくる。
 その中に平賀とエミリーがいた。

 敷島:「平賀先生!」
 平賀:「おー、敷島さん。明けまして、おめでとうございます」
 敷島:「こちらこそ、おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
 エミリー:「敷島・社長。明けまして・おめでとう・ございます。今年も・よろしく・お願い・致します」
 敷島:「あ、ああ。よろしく」

 平賀の荷物を持ったエミリーが恭しく敷島に挨拶してきた。
 その喋り方は表情は、いつものエミリーである。
 赤み掛かったショートボブも、いつもの通り。
 同型の姉妹機だからか、顔はシンディによく似ている。
 服のデザインもまた一緒で、シンディが青色に対し、エミリーは濃紺である。
 因みにレイチェルは、白いプラグスーツを着ていた。

 平賀:「10時半から科学館で、自分が特別講演をすれば良いわけですね」
 敷島:「そのようです。科学館に行けば、担当職員が詳細を説明してくれるはずです。行きましょう」
 平賀:「よろしくお願い致します」

[同日10:30.天候:晴 さいたま市西区 DCJロボット未来科学館]

 大宮駅からは敷島の車で向かった。
 敷島が運転して向かったわけだが、ルームミラーには終始笑顔を向けるエミリーが映っていた。
 敷島との契約を楽しみしているといった顔だった。
 いつもなら無表情か、笑っても微笑程度しか浮かべない彼女。
 前期型からの贖罪の為、笑ってはいけないと笑顔を自ら封印したはずである。
 それが最近は、シンディのように笑い声は上げないものの、微笑では収まらない笑顔を見せるようになった。
 それはもう贖罪が終わったと見ているのか、それとも……。

 平賀:「えー、皆さん、こんにちは。本日は足元が悪い中、お集まり頂いて恐れ入ります。本日は私の講演を聴いて頂けるということで、ありがとうございます。それでは早速始めたいと思いますが、まず今回のお題であります、『アンドロイドと人間の関わりについて』の……」

 平賀の講演が無事に始まった。
 傍らにはエミリーが立っている。

 敷島:「うん、普通だな」
 シンディ:「多分姉さんのことだから、後で社長に契約を迫って来ると思うわ。どうするの?」
 敷島:「現在のオーナーは平賀先生なんだから、平賀先生の御意向が最優先だ。それを理解できないエミリーじゃないだろう」
 シンディ:「たまに姉さん、そういう理解も断固拒絶したり、軽々と超越したりすることもあるからね」
 敷島:「講演は45分だ。あとは先生に任せて、俺達は別の場所にいよう。アリスの具合も心配だし」
 シンディ:「二海の報告によれば、今のところ、部屋で大人しく休まれているそうよ」
 敷島:「それは何よりだ」

 敷島とシンディはシアターホールを出ると、アルエットや萌が展示されているエリアに向かった。
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“Gynoid Multitype Cindy” 「敷島家の新年会」 3

2017-02-08 12:27:00 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月7日19:00.天候:晴 東京都板橋区常盤台 敷島孝之亟邸]

 宴会の余興に敷島エージェンシーの所のMEIKOと巡音ルカが呼ばれたが、やはりメインはコンパニオン役であったようだ。
 しかもこういう宴会のコンパニオンは、しばしば客の酒や煙草に同席するものだが、ボーカロイドの2人にはそれができない。
 そこで専ら、BGMとしての歌やたまにお酌をする程度に終始した。

 敷島孝之亟:「ちょっとトイレじゃ!」
 シンディ:「では参りましょう」
 孝之亟:「歳を取ると、トイレが近くていかん!」
 シンディ:「それで大広間の隣にお手洗いを?」

 ここでのシンディは、すっかり孝之亟の介助役だ。
 いつもの赤い衣装を着たMEIKOが敷島とアリスの席にやってくる。

 MEIKO:「どうぞ、社長」

 MEIKOが敷島にビールを注いだ。

 敷島:「悪いな」
 MEIKO:「奥様……アリス博士も」
 アリス:「Thank you.」
 敷島:「しっかし、後で緒方君達に謝っておかないといかんな」

 ルカのマネージャーで、MEIKOのマネージャーも含まれている。

 敷島:「こんなくだらない宴会に付き合わせて、悪いな」
 MEIKO:「私は仕事があれば何でもやりますよ。ルカはどう思ってるか知らないけど」

 ルカは大広間の中央でマイクを握り、持ち歌の1つである歌謡曲を歌っている。

 MEIKO:「私達は歌が歌えれば何でもいいから」
 敷島:「そうか」
 MEIKO:「演歌なら、リンの方がこぶし利くよ?」
 敷島:「いや、ダメだ。リンは呼べない」

 敷島はキッパリ言い放った。

 参加者A:「MEIKOちゃーん、こっちに来てー!お酌してー!」
 MEIKO:「はーい!じゃ、社長。行ってくるからね」
 敷島:「あ、ああ……」

 MEIKOは呼ばれた所へ向かった。
 酔っ払いオヤジはMEIKOに抱きつく。

 オヤジ:「ああん、MEIKOちゃ〜ん。もっとオッパイ押し付けて〜」
 MEIKO:「あら、オッパイなら私よりルカとシンディの方が大きいですよ」
 オヤジ:「大き過ぎるのもイヤン小さ過ぎるのもイヤン
 敷島:「チッ、不動産屋のエロオヤジめ。うちのMEIKOに何てことしやがるんだ」
 アリス:「シンディは上手く逃げたわけね。要領がいいわ」

 アリスはクイッとワインを平らげた。

[1月7日21:00.天候:晴 敷島孝之亟邸]

 横田:「司会の横田です。先般の『敷島家の忘年会』における大感動は、未だ冷めやらぬものであります。私、僭越ながら司会を務めさせて頂いております」
 参加者B:「きゃーっ!引っ込めーっ!」
 参加者C:「いいぞ、空気野郎!」
 横田:「それでは最後の余興と致しまして、不肖、私が笑福亭鶴光の“うぐいすだにミュージックホール”を歌わせて頂きたいと思います。……スポットライトに♪照〜らされて〜♪そろりそろりと♪帯を解く〜♪ぎゃん!?」

 後ろからシンディが横田に高圧電流を流した。

 シンディ:「誰が司会と歌をやれっつった!」
 孝之亟:「あー、シンディや。この侵入者を『脱出ゲームの間』にブチ込んでおいてくれたまえ。……『脱出できぬ者には死を!』の部屋じゃ」
 シンディ:「かしこまりました」
 敷島:(また屋敷を改造したのか、この爺さんは……)
 孝之亟:「あー、孝夫や。最後の締めの司会を、お前、やってくれんか」
 敷島:「えっ、私ですか?」
 孝之亟:「うむ。お前も芸能プロダクション経営のエンターテイナーじゃろ?」
 敷島:「経営者をエンターテイナーと呼ぶのは、いささか抵抗がありますがね。まあ、いいでしょう」

 敷島はスッと立ち上がった。

 参加者D:「よっ、待ってました!四季グループの『武闘派社長』!」
 参加者E:「今度はどこのバスで特攻ですかー!?」
 敷島:「まーまーまー!」

 敷島は両手を広げてヤジを抑えた。

 敷島:「『敷島家の新年会』、思いのほか盛り上がったようで何よりです。最高顧問の御指名により、私、敷島エージェンシーの経営者として、一言ご挨拶を申し上げたいと思います。シンディ」
 シンディ:「あ、はい!」
 敷島:「おかげさまで、うちの優秀なガイノイド(マルチタイプ)は最高顧問からも製作の注文を頂きました。マルチタイプは歌は歌えませんが、それ以外のことは家事から暗殺まで何でもできます」
 参加者D:「暗殺はマズいだろー!」
 敷島:「おっと失礼!彼女らの出来の良さは私の使い方だけではまだ分からないでしょうから、最高顧問の使い勝手もよくご覧になって、何卒注文の方お願い致します!」
 参加者E:「宣伝かよwww」
 敷島:「それでは最後に、最高顧問からご挨拶を賜ります」
 孝之亟:「おっ、ここでワシに振るか……。ではでは……」

 孝之亟が立ち上がる際に、シンディが支える。

 孝之亟:「うむ……。今、我が敷島家のホープが申した通り、この敷島家にもロボット技術の波が押し寄せてきておる。その波に抗うか、はたまた上手く乗るのかは各々次第じゃ。少なくとも、孝夫はその波に乗ることを選択しておるし、ワシも一口乗ることを選択した。じゃが、今や敷島家の経営する四季グループは様々な仕事を抱えておる。中には、ロボット技術の波に乗ることが凶となる仕事もあろう。じゃから、波に乗るか否かは各々の判断に任すまでじゃ。今年もまた何が起こるか分からぬ。じゃが、今年もまた『敷島家のクリスマス』を無事に迎えられるよう、ワシも精進するし、各々方も十分に精進して頂きたい。それだけじゃ」
 敷島:「ありがとうございました。それでは、これにて『敷島家の新年会』を終了したいと思います。皆さん、お疲れさまでした」

 尚、『脱出ゲー室』には横田の他、ケンショーブラックたる矢島も何故か閉じ込められていたという。

[同日21:25.天候:晴 ときわ台駅前]

 MEIKO:「じゃ、社長。私達はこれで」
 敷島:「おっ、ご苦労さんだったな。気をつけて帰れよ」
 ルカ:「私達もルート検索機能は付いていますので大丈夫です」

 具体的には東武東上線で池袋駅まで行くことの、そこから東京メトロ有楽町線に乗れば良い。
 ボーカロイド達と分かれた敷島達は、再び来た道を帰ることにした。
 ロータリー内のバス停で、赤羽駅行きのバスを待つ。
 土曜日の夜ということもあり、運転間隔は空くようになったが、それでも21時台は5本も運転されている。

〔「21時33分発、赤羽駅西口行きです」〕

 プシュー、ガタッ……。(ワンステップバスの前扉が開く音)

 敷島:「大人3人で」
 運転手:「はい、ありがとうございます」
 敷島:「また後ろでいいか」

 バスに乗り込んで、後ろの席に座る敷島達。

 敷島:「シンディ、最高顧問の相手、良かったぞ」
 シンディ:「ありがとうございます。姉さんやレイチェルを見ても、私達は介助用としてもお役に立てるようです」
 アリス:「そりゃメイドロイドの機能全てを搭載してるんだもの。当然よ」

 孝之亟はマルチタイプを所望しているようだが、実質的にマルチタイプの皮を被ったメイドロイドになりそうだ。
 それでいて、製作費用はしっかりと20億円以上取るのだから、DCJも結構あこぎである。
 もっとも、マルチタイプの増産できるようになったら、その費用は大きく下がることになるだろう。

 発車の時間になり、バスにエンジンが掛かった。

〔「21時33分発、赤羽駅西口行き、発車致します」〕

 ワンステップバスの前扉は折り戸である。
 それが静かに閉まると、バスはロータリーのバス停を発車した。

〔♪♪♪♪。次は常盤台教会、常盤台教会でございます。顕正会脱会をご希望を方は、こちらでお降りください〕

 シンディ:「マスター。二海からの通信によりますと、お坊ちゃまは只今お休みとのことです」
 アリス:「本当?それは良かったわ。早く帰ってあげないとね」
 敷島:「しょうがないな。だったら、メチャ混みの湘南新宿ラインにでも乗るか?赤羽駅から大宮駅までノンストップ……だったのに、浦和駅にも止まるようになったが」

 尚、さいたま新都心駅は貨物線の用地の関係でホームが作れない。

 アリス:「エミリーやシンディのおかげでマルチタイプの良さが伝わるようになったし、これで最高顧問に造ってあげるヤツが上手く行ったら大儲けね」
 敷島:「お前の目に¥と$のマークが映ってるぞw」

 無事に終わった新年会。
 だが、今年は今年で波瀾が待っていた。
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