報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「敷島家の新年会」 2

2017-02-07 21:04:18 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月7日17:30.天候:晴 東武東上線ときわ台駅前バス停]

〔♪♪♪♪。ときわ台駅、ときわ台駅。冨士大石寺顕正会東京会館入口。終点でございます。ご乗車ありがとうございました〕(※実際は顕正会のCM放送は入っていません)

 バスは駅の北側にあるロータリーのバス停に停車した。

 アリス:「タカオ、お約束はいいから」
 敷島:「おっ……」(前乗り方式なのに、前から降りようとした)
 シンディ:「ここから住所検索で先導しますが……?」
 敷島:「いや、いいよ。迎えが来てるから」

 中扉からバスを降りてロータリーに出ると、『敷島家』と書かれた紫色の旗を持った年配の男が立っていた。
 60代くらいの小柄な男で、紺色のスーツを着ている。

 敷島:「どうも。敷島孝夫です」
 執事:「これはどうも、遠路遥々お疲れ様でございます。それでは、ご案内させて頂きます」
 敷島:「いや、私達は大宮からだから、そんなに遠くないですよ」

 埼京線と国際興業バスに乗っただけである。

[同日17:40.天候:晴 東京都板橋区常盤台 敷島家]

 敷島:「何か、お葬式やるみたいだなぁ……」

 最高顧問、敷島孝之亟の屋敷について敷島がそういう印象を漏らしたのは、正門の両脇に提灯が掲げられていたからだった。

 アリス:「ここから入るの?」
 敷島:「そう」

 敷島達を案内してきた執事は、正門前の受付に座っている若い係員(?)に招待状を渡した。

 執事:「敷島エージェンシーの敷島社長ご夫妻……と、そのお付きの方だ」
 係員:「お付きの方?」

 係員はシンディを見据えた。

 係員:「こちらの招待状には、お付きの方のことについては何も記載されておりませんが……」
 シンディ:「あ、私は外で待ってます」
 敷島:「そうか。それは残念だ。爺さんに事情を説明しないといけないな」
 執事:「何ですと?」
 アリス:「最高顧問に製作を頼まれているロイドのモデルなんですけどね、やっぱり許可が無いとダメでした?」
 執事:「……なるほど。そういうことでしたか。それなら、結構でしょう」
 敷島:「いいんですか?」
 執事:「ええ。御主人様もお許し下さるでしょう」
 敷島:(長年仕えていると、爺さんの癖が分かるってか)

 敷島は少し感心した。

 屋敷は和風なので、玄関先で上がらないといけない。

 シンディ:「私の自重でも大丈夫ですか?」
 敷島:「今、お前何キロある?」
 シンディ:「120キロです」
 敷島:「それくらいなら大丈夫だろ。てか、だいぶ軽くなったな!?当初は200キロあったろ!?」
 アリス:「当然よ。銃火器を全部取り外して、装填していた弾薬も全部取ったでしょう?それだけでも数十kgは軽くなるわよ。あとは部品も最新の小型で軽量なものに交換したりとか……。120キロでもまだ重いくらいね」

 軽量化すれば動きも素早くできるし、消費エネルギーもその分少なくて済むようになる。

 下足番:「履き物、お預かりします」
 敷島:「ああ、よろしく」
 アリス:「Thank you.」
 シンディ:「私のブーツは……」
 下足番:「!!!(重っ!?)」
 シンディ:「ブースター付きですので、少し重いですよ?」
 下足番:「だ、大丈夫です。お、お預かりします……!」
 敷島:「ジェットエンジンの方のブーツじゃなかったんだ?」
 クリス:「その代わり、酔い潰れても、シンディに担いでもらうからね?」
 シンディ:「お任せください」
 敷島:「あのな……」

 敷島は呆れた。

 大広間に行くと、そこはまるで温泉旅館の大広間並みの広さがあった。

 アリス:「席は自由席?」
 敷島:「新幹線じゃないぞ。上座が向こうだから、まあ俺達ゃどっちかっていうと、下座の方だろう」
 アリス:「Kamiza?Shimoza?」
 敷島:「お偉いさんがあっちで、下っ端はあっち」

 説明する敷島も適当である。
 敷島家の関係者のみということもあってか、特に席が決まっているというわけではないようだった。

 シンディ:「私は何をしていれば良いでしょうか?」
 敷島:「あっ、そうだよな。じゃあ、お前は控え室で待ってろ。俺達以外にも、付き人とか連れて来ている親戚がいるようだから、その人達用の控室があるはずだ」
 シンディ:「はい」

 シンディは正座をしていたのだが、スッと立ち上がった。

 シンディ:「何かございましたら、お呼びください」
 アリス:「分かったわ」

 シンディは大広間を出た。
 廊下では、宴会の準備に関係者達が忙しそうに動き回っている。

 敷島孝之亟:「君も何か仕事するかね?」
 シンディ:「あっ、最高顧問!」
 孝之亟:「控え室は向こうじゃ。ここではキミも客人なのじゃから、ゆっくりすると良い」
 シンディ:「はい。ありがとうございます」

 孝之亟の方がシンディより背が低い為、杖をついた孝之亟がシンディを見上げる形となる。

 孝之亟:「わしはまだ時間があるので、向こうの部屋で待つとしようかの……」

 孝之亟は杖をつきながら、廊下の奥へ行こうとした。
 家の中では介助者がいないのか、はたまた宴会の準備で皆出払ってしまっているのか、ヨタヨタモタモタと危なっかしい歩き方である。
 シンディが孝之亟を支える。

 孝之亟:「おっ、すまんの」
 シンディ:「いいえ。お部屋まで御一緒しますね」

 シンディは孝之亟の介助をしながら、ドクター・ウィリーのことを思い出していた。
 ウィリーはまだ介助を必要とするほど衰えてはいなかったが、しかしいずれはそうなるだろうということは想定していた。
 想定していたはずなのに、殺してしまった……。
 前期型の業は姉のエミリーも積んではいるのだが、姉との決定的な違いはそこ。

 孝之亟:「うむうむ。キミに支えられていると、何だか安心するのぉ……。やはり、キミのようなロボットを発注して正解のようじゃ」
 シンディ:「お役に立てて何よりです」

 シンディの妹機で7号機のレイチェルも、テロ活動に加担させられるより、十条達夫という老博士の介助をしている方が良かったという。

 シンディ:「私の後継機が、最高顧問のお世話をさせて頂くことになると思います」
 孝之亟:「それは楽しみじゃのう。死ぬ前の贅沢じゃな」
 シンディ:「私のマスターのアリス博士の渾身の作です。ご期待ください」

 シンディは孝之亟の私室に連れていった。

 孝之亟:「こりゃスマンな。……のぅ、この後も宴会場に連れて行ってはくれんか?」
 シンディ:「そうですね……。マスターや社長から、何か言い付けが無ければ良いでしょう」
 孝之亟:「うむ、それでは頼んだぞ」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする