報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「Lost」

2017-02-14 19:44:20 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月30日17:00.天候:雨 敷島エージェンシー]

 敷島:「いや〜、井辺君、よくやった!MEGAbyteのドームライブを決めるなんて、キミはなかなか優秀だぞ!」
 井辺:「ありがとうございます。社長。ただ、ドームと言いましても、ミーツポートの方なんですが……」
 敷島:「いや、いいんだよ。ミク達だって、やっとこさあそこでライブができるようになって、そこから一気にメジャー化したんだから。……その直後だったな。東京決戦が始まったのは」

 敷島は窓の外を見た。
 冬の雨だから暖かいのだろうと思いきや、いつ雪に変わってもいいようなくらいに冷たい雨だ。

 敷島:「あの時は冬じゃなかったが、でもこんな雨が降っていた日だったよ。東京ドームシティホールでボーカロイドのライブをやって、しかもそれがこんな雨の日だったりすると、思い出すんだ」
 井辺:「来月は晴れだといいですね」
 敷島:「ああ。シンディがここにいなくて良かったかもな。あの時はエミリーもいてくれて、特に崩壊するビルから脱出の時はエミリーが大きな助けに……って、エミリー?どうした?」

 エミリーは俯き加減で、小刻みに震えていた。

 敷島:「そうか、エミリー。お前もあの時を思い出すか。そうだよな。何しろ、前期型とはいえ、お前は妹の死に様を見たんだからな」

 敷島はうんうんと頷いた。

 エミリー:「あ、いえ……その……違います」
 敷島:「えっ、違う?」
 エミリー:「シンディは・当然の・報いです。壊されて・当たり前だと・思って・います」
 井辺:「では?……どこか、調子が悪いのですか?」
 エミリー:「シンディが……」
 敷島:「シンディがどうした?」
 エミリー:「シンディの・電源が・未だに・入って・いません」
 敷島:「えっ!?」

 井辺は時計を見た。

 井辺:「もう既に、夕方5時を過ぎています。とっくに北海道に着いていて良いはずですよね?」
 敷島:「そ、そうだな。どうしたんたろう?……あ、分かった!空港に着いたところで、次の移動時間が慌ただしかったんだ。それでシンディの電源を入れられなかったんだよ!」
 井辺:「なるほど。私も空港に着いてから、バスの乗り継ぎがギリギリだったことがあります」
 敷島:「だろ!?きっとそれだ!」
 エミリー:「ですが、それに・しても・遅過ぎます。ホテルの・チェックインは・15時の・予定です。仮に・空港で・電源を・入れられなくても・ホテルなら・できるはずです」
 敷島:「ちょっと待て。アリスに電話してみる」
 井辺:「私はフライト状況を見てみましょう。先ほどニュースで、北海道は各地で猛吹雪という話を伺ったので、何か運航トラブルがあったのかもしれません」

 井辺は手持ちのスマホで、フライト状況を確認した。

 敷島:「どういうことだ?電話が繋がらないぞ。『お掛けになった電話番号は……』の状態だ」
 井辺:「確かに北海道便は一部で運休があったり、大幅な遅延はありますが、奥様が乗られた便は30分遅れで新千歳空港に到着していますね」
 敷島:「無事に着陸してるわけだな?」
 井辺:「はい」
 敷島:「アリス達は、どこのホテルに泊まることになってる?」
 エミリー:「東急REIホテルです」
 敷島:「マジかよ。さすが大企業はいいホテル泊まるなぁ」
 井辺:「東急ホテルズの中では、比較的カジュアルなビジネスホテルという位置付けですね」

 敷島は机の上のPCでネット検索し、そこからホテルの連絡先を割り出した。
 そして今度は、自分のスマホでそのホテルに掛けてみる。

 敷島:「あ、もしもし。私、東京の敷島エージェンシーの敷島と申しますが……。どうも。実は今日、団体予約で入っている宿泊客のことで問い合わせしたいんですけどね。本日、DCJ……えー、デイライト・コーポレーション・ジャパンのロボット未来科学館のような名義で団体予約が入っていると思うんですけど、もうそちらに到着はされてますでしょうか?……してる!?……あ、そうですか。あ、いえ、別に……。ああ……そ、それでですね……えっと……その団体客の中に、アリス敷島というアメリカ人女性がいると思うんですけど、その人に繋いでもらいたいんですけど……。え?ダメ?どうして?私はそのアリスの身内の者でして、彼女と電話が繋がらないから部屋に繫げてもらおうかと思いまして……。いや、ですけどね!……いや、だから、彼女のケータイが繋がらないから……。えー……」

 敷島は呆然として電話を切った。

 井辺:「どうでした?」
 敷島:「何だかよく……ワケが分からん」
 井辺:「と、仰いますと?」
 敷島:「確かにDCJさんはホテルに到着しているらしい。で、全員もう部屋に入ったと」
 井辺:「では……」
 敷島:「部屋に繋いでもらいたいと頼んだんだが、『幹事の方から、ツアー参加者の部屋には外部からの依頼があっても繋がないように言われている』と断られたんだ」
 井辺:「どういうことですか?」
 敷島:「な?ワケ分からんだろ?だったら幹事の人に繋いでくれと頼んでも、けんもほろろだ」
 井辺:「何でしょうね?」

 と、その時、机の上の電話が鳴った。
 エミリーが取る。

 エミリー:「一海か?」
 一海:「DCJロボット未来科学館の小山副館長よりお電話が入っております。お繋ぎしてもよろしいですか?」
 エミリー:「ちょっと・待て。社長、DCJロボット未来科学館の・小山副館長様より・お電話が・繋がって・おります」
 敷島:「なにっ?科学館の職員達は全員、旅行に参加したんじゃないのか?」

 敷島は電話を取った。

 敷島:「もしもし?お電話代わりました。敷島エージェンシーの敷島でございます」
 小山:「DCJロボット未来科学館の小山と申します。突然のお電話、申し訳ありません」
 敷島:「いえ、とんでもないです。確か今、科学館の皆さんは北海道へ向かわれているはずですが、そこからの御連絡ですか?」
 小山:「いえ。私は事情がありまして、科学館で留守を預かっている次第であります。突然で申し訳無いのですが、アリス研究主任に連絡を取って頂けませんか?」
 敷島:「と、言いますと?」
 小山:「私は留守番部隊の責任者として、幹事と定期連絡を取る役目を預かっています。ところが、飛行機に乗るまでは連絡が取れていたのに、そこから先の連絡が全く取れないのです。アリス主任だけは着信拒否になってまして、もしかしたら、ご主人である敷島社長ならば繋がるかなと思いまして……」
 敷島:「……真に残念ですが、それは既に先ほど試してみました。着信拒否ではありませんでしたが、電源が切られているか、電波の届かない所にいるようです」
 小山:「そうですか……」
 敷島:「一応、ホテルにはもう着いているみたいなんです」
 小山:「本当ですか!?」
 敷島:「ええ。ですがおかしいことに、部屋に繋いでもらえないんです。幹事から部屋に繋がないように言われているらしくて……」
 小山:「いや、そんなの有り得ないですよ。旅行前に『なるべく連絡を取りやすいようにしよう』と決めていたんです。それなのに、そんなことをするなんて……」
 敷島:「ですよね」
 井辺:「何か事件の臭いがしますね。一応、警察には届けておいた方がいいかもですね」
 鷲田:「何がだ?」
 敷島:「あっ!?」
 村中:「警察ならここにいるよ」

 鷲田警視と村中課長がやってきた。

 敷島:「すいません。また後で連絡します。失礼します」

 敷島は電話を切った。

 鷲田:「消えたツアー客に、事件の臭い。やってきたら、もう動いていたか」

 一体、アリス達に何があったのだろうか。
 鷲田達の用件とは?
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“Gynoid Multitype Cindy” 「敷島エージェンシーの朝と昼」

2017-02-14 16:01:29 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月30日08:45.天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]

 敷島:「よっ、ミク。おはよう」
 初音ミク:「たかお社長、おはようございます。それと……エミリーさん!?」
 エミリー:「おはよう。そんなに・驚くことは・ない。シンディの・代わりに・来ただけ・だ」
 初音ミク:「シンディさん、どこか故障でも?」
 敷島:「アリスに付いて、北海道に行ってるよ。そういえば、首都圏とか西の方の仕事はあっても、北海道の方とかは仕事でも行かないな」
 MEIKO:「前に沖縄の方でロケの仕事があったのに、誰かさんのせいで無くなっちゃったもんね」
 エミリー:「後で・シンディに・伝えて・おく」
 MEIKO:「ウソよ、ウソ。本気にしちゃって、も〜!」
 敷島:「何がだよ」

 敷島は呆れながら社長室に向かった。
 社長室に入ろうとすると、

 鏡音リン:「山菱会会長、命もろたーっ!」

 サングラスを掛けた鏡音リンと、リーゼントのヅラを被った鏡音レンがオモチャのマシンガンを発砲してきた。
 もちろん弾は、ただの2B弾なのだが……。

 エミリー:「朝から・いい度胸・してるな?」

 弾は全弾エミリーが受け止めた。
 ギラリと両目を光らせて、ボカロ姉弟を睨みつける。

 レン:「あれ!?シンディじゃないよ!?」
 リン:「出たーっ!初代鬼軍曹!」

 慌てて逃げ出すリンとレン。

 エミリー:「待て。今日という・今日は・お尻ペンペン・だ」
 リン:「いやあーっ!」

[同日10:00.天候:曇 敷島エージェンシー]

 敷島は社長室で、リンがエミリーにお尻ペンペンされている動画を見ていた。
 因みに初音ミクはよくパンチラがあるが(白と緑の縞パンだったり、純白だったり)、リンはショートパンツということもあって、あまりそういう描写は無い。
 だが今回はエミリーに捕まって、ショートパンツを下ろされていた。
 黄色と白の縞パンであることが判明。
 レンは【お察しください】。

 敷島:「さすがにこれはお宝映像として、出すことはできないな」
 エミリー:「相変わらずですね。この姉弟は」

 エミリーは机の上にコーヒーを置いた。

 敷島:「アリスは今頃、飛行機の中か?」
 エミリー:「いえ、まだ羽田空港です。ただ、シンディは電源が落とされたので、トレスできなくなりました」
 敷島:「ま、いざとなったら、遠隔で電源を入れることが可能だからな」

 敷島はそう言って、コーヒーを口に運んだ。

 エミリー:「社長、本日は12時から田中企画の田中社長と商談が入っています」
 敷島:「ああ。番組制作会社の田中さんだな。いつも昼食を食べながらって人なんだ。本当にこの業界、変わった人間が多いよ」
 エミリー:「そうですね。敷島家の皆様方も、相当個性的であると伺っています」
 敷島:「はははっ、言ってくれるなー。まあ、確かにその通りだ」
 エミリー:「マルチタイプの新造を個人の財産で依頼し、しかも完成品を個人の財産にしてしまおうという発想は、敷島孝之亟最高顧問くらいのものではないかと」
 敷島:「だな。ま、老い先短い老害の道楽だ。DCJさんも商売だから、金さえもらえりゃいいんだよ。逆を言えば、その売上金を元手にアメリカ本体からの独立を正式に決めるかもしれない」
 エミリー:「なるほど」

 と、そこへ机の上の電話が鳴った。

 敷島:「はい、もしもし?」
 一海:「社長。都議会議員の勝又先生よりお電話ですが、お繋ぎしてよろしいですか?」
 敷島:「おー、勝っちゃんか。いいよ。繋いで」

 勝又議員は敷島の大学生時代の同級生である。
 若手議員として活動中。

 勝又:「やあ、敷島社長。先日のサーカス事件はどうも……」
 敷島:「おかげでマルチタイプの怖さと良さが世間に知れ渡っちゃったね」

 自爆テロを起こして多数の死傷者を出したのがルディというマルチタイプなら、敷島達の車をジェットエンジンで緊急避難させたのもまたシンディというマルチタイプだった。
 敷島や勝又は、使う人間の問題であって、マルチタイプ自体には何の問題も無いという主張を繰り返した。

 勝又:「今度、都事業の一環でマルチタイプを如何に活用するかのシンポジウムがあるんだけど、それにキミの所の秘書を借りれないかなぁ……と」
 敷島:「勝っちゃんの頼みなら嫌とは言えないな。幸い、もうすぐ2機体制になるから、どっちか貸してあげるよ」
 勝又:「2機体制!?」
 敷島:「姉のエミリーと妹のシンディ、どっちがいいか決めといて」
 勝又:「究極の選択だな。どっちも似たようなものなんだろう?」
 敷島:「東京決戦の際、日比谷公園をメチャクチャにしたのはシンディだけどね」
 勝又:「じゃ、エミリーさん貸して」
 敷島:「その前哨戦でブクロ(池袋)のビル1個ブッ壊したのはエミリーの方」(当作品未公表)
 勝又:「危ないな、おい!」
 敷島:「さあ、究極の選択だよ。選択肢次第で、勝っちゃんが次は国会議員になるか、はたまた議員自体を辞職するハメになるかが決まる」
 勝又:「あー、その……前向きに善処致します」
 敷島:「先延ばし決定ってことね。了解」

[同日12:00.天候:曇 江東区豊洲 某飲食店]

 田中:「ザギンでシースーもいいですが、ストヨでシースーもまた新鮮ですなぁ」
 敷島:「田中社長なら、どこでも新鮮ですよ。1つの才能です」
 田中:「はっはっはーっ。さすがは敷島社長、お上手ですね」
 敷島:(ザギンでシースーって、未だにそんなこと言うヤツいるのかよ。ってか、豊洲ってストヨっていうのかよ。初めて聞いたぞ)
 田中:「実はですね、今度フジテレビさんの方に持ち込む企画で、出演するアイドルに欠員が出ましたので、ここで敷島さんの所のボーカロイドなんか面白いんじゃないかなーなんて思いましてね」
 敷島:「フジテレビならお台場だから、ここから近いですね。で、どんな企画で?」
 田中:「これがまた他のプロダクションからは大好評でしてね。レインボーブリッジの下を泳いで渡るという企画なんですよ。いや〜、他のプロダクションからは是非うちのタレントを出させてくれって話が多くて、もう!だから敷島さん、こんなチャンス、2度と無いですよ?どうです?」
 敷島:「後で回収費用と修理費用が大変そうなのでご遠慮致します」

[同日13:00.天候:曇 敷島エージェンシー]

 敷島:「ったく!フザけた企画持ってきやがって!あれ絶対、どこのプロダクションも断ってるってオチだよ!」

 敷島は不機嫌な様子で帰社した。

 エミリー:「社長、お帰りなさいませ。アリス博士らが乗られた飛行機は、順調にフライトしているとの情報が入っております」
 敷島:「あ、そう。俺も行けば良かったな」
 エミリー:「それと井辺プロデューサーからで、来月のMEGAbyteのドームライブが決まったそうです」
 敷島:「おお、そうか!俺と違って、堅実な契約を持って来てくれるなぁ!MEGAbyteのメジャー化も近いぞ、こりゃ!」

 敷島は早速、井辺に労いの電話を入れることにした。
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