“新人魔王の奮闘記”より。前回の続き。
魔王軍の全部隊で、点呼時に各隊長より隊員達に命令が飛んだ。
「本日は、我らが崇高にして至高なる魔王陛下の信任厚き安倍春明首相閣下より、特別の命令がある。ここに掲げる人間の少年を直ちに捜索せよとのことだ。但し、罪人ではないので発見時は丁重に扱うようにとの御命令だ!いいか!この少年に危害を加えることは一切認められていない!」
「ははっ!」
魔界高速電鉄1号線の終点駅、デビル・ピーターズバーグ駅……。
「1番線の電車は折り返し、セントラル・ストリート行きです」
ホームの壁新聞にも、デカデカと貼られた。
「はい、ごめんなすって」
それだけじゃなく、電車の中吊り広告まで……。
「なになに?『この顔にピンと来たら魔王城まで』?」
「人間の子供か?」
利用者の多くは魔族である地下鉄。
「チッ、何でぇ、野郎か。人間の肉は女の方が美味いんだよなぁ……」
「バカ、声がでけぇ」
地上を走る路面電車でも、高架線を走る環状線や中央線でも……。
「総理。随分と大胆なことをしますなぁ……」
「ちょっとやり過ぎたかな?よし。報奨金3万ゴルから、5万ゴルにアップしよう。首相の俺が言うのも何だが、この国、物価安いし」
無論、政府専用特別電車内での会話である。
「日本の物価が高過ぎるのですよ」
「それは言えてる」
因みに魔界高速電鉄の均一運賃、路面電車が2ゴルで高架線と地下鉄線が3ゴルである。辻馬車は王宮から党本部まで、10ゴルくらいで行ける。
一応、目安として1ゴルを50円くらいに考えている。
「どれ……」
春明は人間界から持ち込んだトラメガを手に、路面電車の窓を開けた。
〔「皆様、大変お騒がせ致しております。私、共和党の安倍春明でございます。国民の皆様の温かい御支持並びに御声援ありがとうございます。我が党と致しましては、人間族、亜人、魔族の“三族共和”を掲げ、全ての種族が諍い無く平和に暮らして行ける生活の実現を目指しております。……」〕
街頭演説を始めた。
〔「……尚、最近街中で見かける“尋ね人”の人間の少年につきましては、皆様の片手間を取らせて頂き、真に恐縮ではございますが、有力な情報を提供して頂いた方には、共和党より報奨金5万ゴルを提供させて頂く所存です。どうか皆様のご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げるものでございます」〕
「さすが総理、演説慣れてますな」
「この為に、わざわざ人間界に戻って、参議院選挙の街頭演説を見学しに行ったらしい」
「マジっすか?」
そんな噂話をする同行の党員達であった。無論、外でビラ配りをしているわけである。
「あー、今日もよく喋ったなぁ……」
王宮裏手にある総理官邸に戻る。
「お疲れさまです、総理。それより、例の件なんですが……」
出迎えた秘書官が言う。
「ん?」
「一応、陛下のお耳にもお入れになった方がよろしいのでは?」
「いやー、いいだろ。レナには悪いけど、たかだか人間の少年1人の捜索だ。ルーシーもヒマじゃなくなってるし、事後報告でいいだろ」
「さようで……」
春明。この判断を後に後悔することになる。
「確か、今夜だったよな?ほら、新館の方で……」
「あ、さようでございます。陛下主催の“王宮見学会”」
「“王宮見学会”ね。日本じゃ、国会議事堂が修学旅行で見学できるって話をしたら、『じゃ、こっちもやるわよ』だって」
「しかし陛下の場合、別の目的があるんですよね?」
「そうなんだよなぁ……。異世界通信社にバレて、ネタにされなきゃいいけど……」
「陛下はヴァンパイアの一族ゆえ、ある程度は致し方ならぬところでございますが……」
「俺の血だけじゃ、満足できなくなってきたみたいだな」
魔王軍の全部隊で、点呼時に各隊長より隊員達に命令が飛んだ。
「本日は、我らが崇高にして至高なる魔王陛下の信任厚き安倍春明首相閣下より、特別の命令がある。ここに掲げる人間の少年を直ちに捜索せよとのことだ。但し、罪人ではないので発見時は丁重に扱うようにとの御命令だ!いいか!この少年に危害を加えることは一切認められていない!」
「ははっ!」
魔界高速電鉄1号線の終点駅、デビル・ピーターズバーグ駅……。
「1番線の電車は折り返し、セントラル・ストリート行きです」
ホームの壁新聞にも、デカデカと貼られた。
「はい、ごめんなすって」
それだけじゃなく、電車の中吊り広告まで……。
「なになに?『この顔にピンと来たら魔王城まで』?」
「人間の子供か?」
利用者の多くは魔族である地下鉄。
「チッ、何でぇ、野郎か。人間の肉は女の方が美味いんだよなぁ……」
「バカ、声がでけぇ」
地上を走る路面電車でも、高架線を走る環状線や中央線でも……。
「総理。随分と大胆なことをしますなぁ……」
「ちょっとやり過ぎたかな?よし。報奨金3万ゴルから、5万ゴルにアップしよう。首相の俺が言うのも何だが、この国、物価安いし」
無論、政府専用特別電車内での会話である。
「日本の物価が高過ぎるのですよ」
「それは言えてる」
因みに魔界高速電鉄の均一運賃、路面電車が2ゴルで高架線と地下鉄線が3ゴルである。辻馬車は王宮から党本部まで、10ゴルくらいで行ける。
一応、目安として1ゴルを50円くらいに考えている。
「どれ……」
春明は人間界から持ち込んだトラメガを手に、路面電車の窓を開けた。
〔「皆様、大変お騒がせ致しております。私、共和党の安倍春明でございます。国民の皆様の温かい御支持並びに御声援ありがとうございます。我が党と致しましては、人間族、亜人、魔族の“三族共和”を掲げ、全ての種族が諍い無く平和に暮らして行ける生活の実現を目指しております。……」〕
街頭演説を始めた。
〔「……尚、最近街中で見かける“尋ね人”の人間の少年につきましては、皆様の片手間を取らせて頂き、真に恐縮ではございますが、有力な情報を提供して頂いた方には、共和党より報奨金5万ゴルを提供させて頂く所存です。どうか皆様のご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げるものでございます」〕
「さすが総理、演説慣れてますな」
「この為に、わざわざ人間界に戻って、参議院選挙の街頭演説を見学しに行ったらしい」
「マジっすか?」
そんな噂話をする同行の党員達であった。無論、外でビラ配りをしているわけである。
「あー、今日もよく喋ったなぁ……」
王宮裏手にある総理官邸に戻る。
「お疲れさまです、総理。それより、例の件なんですが……」
出迎えた秘書官が言う。
「ん?」
「一応、陛下のお耳にもお入れになった方がよろしいのでは?」
「いやー、いいだろ。レナには悪いけど、たかだか人間の少年1人の捜索だ。ルーシーもヒマじゃなくなってるし、事後報告でいいだろ」
「さようで……」
春明。この判断を後に後悔することになる。
「確か、今夜だったよな?ほら、新館の方で……」
「あ、さようでございます。陛下主催の“王宮見学会”」
「“王宮見学会”ね。日本じゃ、国会議事堂が修学旅行で見学できるって話をしたら、『じゃ、こっちもやるわよ』だって」
「しかし陛下の場合、別の目的があるんですよね?」
「そうなんだよなぁ……。異世界通信社にバレて、ネタにされなきゃいいけど……」
「陛下はヴァンパイアの一族ゆえ、ある程度は致し方ならぬところでございますが……」
「俺の血だけじゃ、満足できなくなってきたみたいだな」