“ボカロマスター”より。更に更に続く。
エミリーのレーダーやGPS機能に異常は見られなかった。また、ウィルス・チェックもしてみたが、それも検出はされなかった。
「一体、どうなっておるのじゃ?」
財団東京本部の会議室。南里はその一室を借りていた。敷島達もまた困った顔をする。
「今回は別にエミリーは関係無いのでは?」
「そうですよ。前回のルカのウィルスの件で、随分懲りたわけですしね」
「わしもそうであると信じたいのじゃが……」
そんな時、会議室の外で迷っている姿のミクがいた。
「ミク、何してるの?」
「! MEIKOさん」
「盗み聞き?ドクターにバレたら、メチャクチャ怒られるよ?」
「あ、いや……そうじゃないんです。南里博士に……でも、話していいのかどうか……」
「なに?何か大事な話?」
「はあ……」
ミクはどうやら迷っているようだった。
「ん?じゃあ、こっちで話そうか」
MEIKOは近くのリフレッシュコーナーに誘った。
「で、何なの?」
「わたし……その……見ちゃったんです」
ミクは意を決して言った。
「何を?」
「あの時……南里博士がお手洗いに行った後、金髪のお姉さんが……行ったんです。でもわたし、他にロボットがいるとは思わなくて、スキャンしなかったんです」
つまりミクはシンディを人間の女性と誤認してしまったということか。
「それは油断したね。でも、ボーカロイドの私達がそこまで警戒することは無いんだよ。それはエミリーや七海の仕事だからね。……ふーん、それで分かった。エミリーの奴は知ってたんだね?知っててわざと、見逃したんだね?」
「だからこそ、わたし、てっきりそれがドクター・ウィリーの手先だとは思わなくて……」
「うん。そうだよね。それ、本当?」
「本当です」
「ドクターのことだから、あんたのメモリー、徹底的に調べるよ?もし嘘だったら……」
「大丈夫です。本当の話です」
「よし。分かった」
「あ、あの、MEIKOさん」
「ん?」
「わたしが告げ口したなんてことは……」
「そんなの気にしなくていいって。いざとなりゃ、私がエミリー締め上げるから」
バンッとMEIKOはいきなり会議室のドアを開けた。
「バカモン!会議中じゃぞ!ノックくらいせんか!」
南里はMEIKOを叱責した。
「そお?私にはお茶会にしか見えないけどね」
「なにっ!?」
南里はMEIKOを睨みつけた。
「おいおい、MEIKO。何だって言うんだよ?」
敷島が南里との間に割って入った。
「裏切り者がうちの研究所にいるってのに、随分とお気楽だねって言ってるの」
ステージ衣装(公式イラスト)は、ボーカロイドで1番露出度が高いMEIKO。普段はそんなに露出の高い服は着ない。
イメージカラー同様、赤いジャケットのポケットからUSBメモリーを出して机の上に放り投げた。
「これは?」
「ミクのメモリーをコピーした奴よ。ドクターがシンディに拉致された日、あの時間帯のね。その中に真相が入ってる」
「何だって?」
MEIKOは傍らに控えてるエミリーを見た。顔は無表情だが、息を口から吐いていた(空冷が働き、排熱している)。見た目は冷静だが、中身は狼狽している。MEIKOはそれを見破って、確信を持った。
そして、映像の中にあった。エミリーのすぐ横をシンディが通ったにも関わらず、エミリーは全く阻止しなかったのを……。
「エミリー。あんたはミクと違って、シンディのことは1番分かってるはずだよね?何しろ、自分の片割れなんだから」
「…………」
「あんた、わざと見逃したね?その結果、ドクターが拉致されたのも承知済みだね?」
「…………」
「どうなんだ、エミリー?」
敷島も怪訝な顔をしてエミリーに詰め寄った。
エミリーは暗い表情になると、深々と頭を下げた。
「申し訳……ありません。MEIKOの……言う通りです。ごめんなさい……ごめんなさい……」
「う、うぅむ……」
「所長?所長!」
南里は胸を押さえて、椅子から床に倒れこんだ。
「大丈夫ですか、所長!?」
「し、しまった!持病の高血圧と心臓疾患が……!敷島さん、救急車呼んでください!」
「は、はい!」
敷島は室内の内線電話から、防災センターに通報した。
「……というわけです!大至急、救急車をお願いします!」
その場で消防署に通報ではなく、防災センターに連絡するという発想は、さすが元・大日本電機の自衛消防隊員だった敷島ならではだろう。
エミリーのレーダーやGPS機能に異常は見られなかった。また、ウィルス・チェックもしてみたが、それも検出はされなかった。
「一体、どうなっておるのじゃ?」
財団東京本部の会議室。南里はその一室を借りていた。敷島達もまた困った顔をする。
「今回は別にエミリーは関係無いのでは?」
「そうですよ。前回のルカのウィルスの件で、随分懲りたわけですしね」
「わしもそうであると信じたいのじゃが……」
そんな時、会議室の外で迷っている姿のミクがいた。
「ミク、何してるの?」
「! MEIKOさん」
「盗み聞き?ドクターにバレたら、メチャクチャ怒られるよ?」
「あ、いや……そうじゃないんです。南里博士に……でも、話していいのかどうか……」
「なに?何か大事な話?」
「はあ……」
ミクはどうやら迷っているようだった。
「ん?じゃあ、こっちで話そうか」
MEIKOは近くのリフレッシュコーナーに誘った。
「で、何なの?」
「わたし……その……見ちゃったんです」
ミクは意を決して言った。
「何を?」
「あの時……南里博士がお手洗いに行った後、金髪のお姉さんが……行ったんです。でもわたし、他にロボットがいるとは思わなくて、スキャンしなかったんです」
つまりミクはシンディを人間の女性と誤認してしまったということか。
「それは油断したね。でも、ボーカロイドの私達がそこまで警戒することは無いんだよ。それはエミリーや七海の仕事だからね。……ふーん、それで分かった。エミリーの奴は知ってたんだね?知っててわざと、見逃したんだね?」
「だからこそ、わたし、てっきりそれがドクター・ウィリーの手先だとは思わなくて……」
「うん。そうだよね。それ、本当?」
「本当です」
「ドクターのことだから、あんたのメモリー、徹底的に調べるよ?もし嘘だったら……」
「大丈夫です。本当の話です」
「よし。分かった」
「あ、あの、MEIKOさん」
「ん?」
「わたしが告げ口したなんてことは……」
「そんなの気にしなくていいって。いざとなりゃ、私がエミリー締め上げるから」
バンッとMEIKOはいきなり会議室のドアを開けた。
「バカモン!会議中じゃぞ!ノックくらいせんか!」
南里はMEIKOを叱責した。
「そお?私にはお茶会にしか見えないけどね」
「なにっ!?」
南里はMEIKOを睨みつけた。
「おいおい、MEIKO。何だって言うんだよ?」
敷島が南里との間に割って入った。
「裏切り者がうちの研究所にいるってのに、随分とお気楽だねって言ってるの」
ステージ衣装(公式イラスト)は、ボーカロイドで1番露出度が高いMEIKO。普段はそんなに露出の高い服は着ない。
イメージカラー同様、赤いジャケットのポケットからUSBメモリーを出して机の上に放り投げた。
「これは?」
「ミクのメモリーをコピーした奴よ。ドクターがシンディに拉致された日、あの時間帯のね。その中に真相が入ってる」
「何だって?」
MEIKOは傍らに控えてるエミリーを見た。顔は無表情だが、息を口から吐いていた(空冷が働き、排熱している)。見た目は冷静だが、中身は狼狽している。MEIKOはそれを見破って、確信を持った。
そして、映像の中にあった。エミリーのすぐ横をシンディが通ったにも関わらず、エミリーは全く阻止しなかったのを……。
「エミリー。あんたはミクと違って、シンディのことは1番分かってるはずだよね?何しろ、自分の片割れなんだから」
「…………」
「あんた、わざと見逃したね?その結果、ドクターが拉致されたのも承知済みだね?」
「…………」
「どうなんだ、エミリー?」
敷島も怪訝な顔をしてエミリーに詰め寄った。
エミリーは暗い表情になると、深々と頭を下げた。
「申し訳……ありません。MEIKOの……言う通りです。ごめんなさい……ごめんなさい……」
「う、うぅむ……」
「所長?所長!」
南里は胸を押さえて、椅子から床に倒れこんだ。
「大丈夫ですか、所長!?」
「し、しまった!持病の高血圧と心臓疾患が……!敷島さん、救急車呼んでください!」
「は、はい!」
敷島は室内の内線電話から、防災センターに通報した。
「……というわけです!大至急、救急車をお願いします!」
その場で消防署に通報ではなく、防災センターに連絡するという発想は、さすが元・大日本電機の自衛消防隊員だった敷島ならではだろう。