日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

グローバルCOEプログラムなんていらないのに・・・

2010-11-22 11:04:55 | 学問・教育・研究
ここ何日間か私が以前に投稿したやはり目をつけられたか グローバルCOEプログラムへのアクセスが増加している。11月18日に行われた事業仕分け第3弾で、「A-25: 大学関係事業(その1) 文部科学省 (1)グローバルCOEプログラム (2)博士課程教育リーディングプログラム」がその対象となったことを反映してであろう。

私の上記の記事は2008年8月6日のものですでに2年以上前のものである。しかしここで私が指摘したグローバルCOEプログラムの問題点は、事業仕分けの論議の中にも繰り返し指摘されていることでもあるので、あらためて要点を強調しつつ再掲する。

世界水準の研究教育拠点作りという一見壮大なプロジェクトも、一皮剥けば既存の研究室の寄り合い所帯で、『研究教育拠点』も作文の上でのみの存在である。しかしCOEに採択されれば潤沢な活動資金が与えられるし、また所属する大学のステータス向上に役立つなどのメリットがある。しかしCOEは継続性が保証されてはいるものではない。「金の切れ目が縁の切れ目」になりかねない惰弱性がある。だからこそこのような『競争的資金』獲得を向けての競争が熾烈になる。いわば企業が『公共事業』の受注に熱中するようなものであろう。その裏には『天下り』もあれば『談合』もある。そういえばCOEプランはかっての『列島改造論』の文部科学省版、その産物だとすると、見えてくるものもある。(後略)》

かっては私もそのうちの一人であった学者、研究者とは悲しいものである。『研究馬鹿』であればあるほど目の前に研究費という餌をぶら下げられると、なりふり構わずかぶりつこうとする。業なのである。研究者一人ひとりはそれでよいのかも知れない。しかし『グローバルCOEプログラム』を作り上げる側に参画した学者・研究者もしくは学者・研究者上がりが『研究馬鹿』と同じ姿勢であって良いはずがない。これまでの実践を通して自己の学問理念を築き上げた学者・研究者もしくは学者・研究者上がりなら、研究を支えるのが人であり、自由に大きく羽ばたく優れた人材の育成こそ新しい学問、研究の創造に向けての第一歩であることを骨身にしみて実感していることであろう。この人材の育成は国家百年の大計として定められる恒常的な制度によって推し進められるべきで、この根幹的な制度こそ継続的な予算措置により堅持されるべきものなのである。これらの方々は五年、十年単位の『グローバルCOEプログラム』のようなものが、私の述べた意味での『虚構』に過ぎないことをいち早く見抜くべきであったのではなかろうか。

税金の無駄遣いとの指摘を重く受け止め、これを契機にわが国における教育・科学行政のあるべき姿に思いを馳せ、学者・研究者といえどもお金の使い方を他人事とせずに真剣に考えていただきたいものである。私の考えはきわめて簡単、『グローバルCOEプログラム』は止めてしまって、せっかく一度はつけて頂いた予算だからその分、全額とはいかないまでも、本来拡充すべき大学運営経費と科学研究費に入れてしまえばよいのである。甘い考えとは重々承知の上ではある。

今回の事業仕分けでグローバルCOEプログラムに対する評価者のコメントは次のように整理されている。

● 仕分け違反であり、より卓越した拠点に絞るべき。まず、予算措置以外の手法で大学の競争力
を高め、人材育成する仕組みを考えるべき。
● 仕分け違反は許されない。拠点数の集中(案件数の絞り込み)は、前回の仕分け直後に行われるべきであり、それを担当部局がさぼったために大学に無用な混乱を生じさせたのは残念である。
移行措置を考慮する必要はあるが、基本的に廃止をお願いしたい。
来年度までは事業を拡大せずに、最低限で維持(雇用の問題があるので)。本質的な大学改革プログラムを戦略的に進める中で、事業を再構築すべき。
● 「拠点」化の徹底。現行のスキームであるなら、むしろ廃止すべき。当該事業の目的を達成するため、まずは拠点化を徹底すべき。このため、一旦予算を半減。将来、拠点化による成果が高まった時点で、さらなる予算措置をすることは妨げるものではない。
博士課程学生の奨学金として給付する部分は残す。グローバルCOEプログラムは、学生に報酬として配分している予算が15%しかない。この制度の恩恵を受ける学生は、国立大学博士課程学生51,490人のうち、14%に過ぎない。グローバルCOEとしては一旦廃止して、全国国立大学の博士課程学生の奨学金として給付する事業に平成23年度に変えたほうがよい。
博士課程にためらわずに優秀な学生が来る仕組みを創るべき。
● メリハリをつける。目的と手段を一致させる。
拠点の絞り込みができていないということで、そこそこ、それなり、現状維持ということであれば、経常収入で対処すべきことと思われる。
23年度を最終として廃止。交付金に一元化すべき。世界トップレベル国際研究拠点形成促進など、局間タテワリを排して、合理化を進めるべき。
● グローバルCOEに相当する資金を学術研究分野に投入することに異論はないが、関連性の薄い分野をまとめて拠点にする方法は、再考する必要がある。人件費に投入するのであれば、学振のPD・DCへ投入するほうが有効である(PDの年齢要件等の緩和を同時に検討する必要がある)。
● もともと妥当性を欠いたプログラムであるが、一旦スタートした以上、ある時期をもって廃止するのは適当ではない。

さらに今回の事業仕分けでグローバルCOEプログラムと抱き合わせの博士課程教育リーディングプログラムについても評価者のコメントは厳しい。私の注目する指摘のみを抜粋する。

内容が、従来のグローバルCOEプログラムの一部を外出ししたものに過ぎない。ポスドクの生活支援、就業支援の側面が強く、「リーディングプログラム」にふさわしい事業内容と思われない。目的に即した内容でなければむしろ予算計上を見送るべき。
不要である。この種の制度設計は、もっときちんと議論すべき。あまりに安易な計画である。
まず、グローバルCOEの事業で、現実に日本のトップ大学の競争力はついていない。このことを無視して、単に後継事業を認めることはできない。そして、説明によれば、本事業が、前事業と異なり、成果が上がるという点について、説得力のある説明はなされなかった。“専攻”や“大学”に金を出すという手法はやめるべき。優秀な研究者をしっかり評価して、個人に金を出す方法にすべき。
制度的改革が先行、せめて同時でなければならない。
大学院教育を構造的に改革しない限り、大学院において当事業が求めるような人材は育たないのではないか。
研究者志望者への援助制度は、長期間安定している必要がある。既存の学振研究員等の拡充で対応すべし。

本来の見出しは●であるが、私の提言と趣旨において一致する項目はで示した。国民的感覚からもグローバルCOEプログラムの虚構性が捉えられているように私は思う。

予算担当部局用として作成された論点等説明シートにも、これらの指摘と関連した次のようなメモがある。

実質的に経常費の補填(バラマキ)になっていないか。
・ 世界をリードする拠点形成を目的とする事業であるが、採択数140拠点は適正か。

○経費の使途・内容が目的にふさわしいものとなっているか。
実態はポストドクターの雇用対策等の人件費が6割以上を占めているが、本当に多くの研究支援要員が必要なのか。そもそも、国際的に卓越した教育研究拠点を形成するために、何が欠け、何が必要なのか整理できていないのではないか。

○他の事業と重複があるのではないか。
真によい研究内容ならば、既存の科学研究費補助金(23年度2,100億円)の中で対応すべきものではないか。
・ 科学技術予算の中にも「国際的に卓越した拠点づくり」を支援するメニュー(世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)(23年度82億円))などがあるが、重複しているのではないか。
・ 特別枠で要望している博士課程教育リーディングプログラム(52億円)は、事業目的等が類似しており、グローバルCOEプログラムの新規要求分と考えられるのではないか。

そしてとりまとめのコメントは以下の通りである。

(グローバルCOEプログラム)
グローバルCOEプログラムについては、残念ながら仕分けの結果は反映されていないという判断。そしてどうするのかということだが、その他と書かれた方の意見を見ても、そもそもこのグローバルCOEプログラム自体が良くなかったということについてはほぼ評価者の意見は共有している。その中で、現に継続事業でこのシステムが動いているところをどれくらい削れるのか。本来であればもっとメリハリをつけて絞り込みをして効果が上がるという形にしていただくというのが反映すべき結果だが、そうなっていない中で、平成22年度の予算要求に対して1/3程度とするという仕分け結果の着実な実施という方が4名、半額程度縮減という方が1名、1割程度縮減という方も1名いらっしゃる中で、縮減額の比率を出すのは非常に難しいが、少なくとも重点化、拠点化、メリハリを付ける中で、本来の趣旨である国際的に卓越した拠点を形成するという趣旨に照らし、継続事業であっても拠点化、重点化を行い、23年度要求から少なくとも1割以上の縮減はしていただき、事業仕分け第1弾の評価結果の確実な実施をしてもらいたい。

私が指摘したグローバルCOEプログラムの問題点は、少なくともこの事業仕分け評価者にもあまねく認識されているようだ。そこで私の考えはきわめて簡単、『グローバルCOEプログラム』は止めてしまって、せっかく一度はつけて頂いた予算だからその分、全額とはいかないまでも、本来拡充すべき大学運営経費と科学研究費に入れてしまえばよいのであるのだが、そこまで踏ん切れないところにこの事業仕分けの限界がある。それは単に予算の付け替えではなく、この人材の育成は国家百年の大計として定められる恒常的な制度によって推し進められるべきで、この根幹的な制度こそ継続的な予算措置により堅持されるべきものなのであることにまだ国民的コンセンサスが確立していないからとも言える。

私はかって文科省での日本学術振興会と科学技術振興機構の共存が基礎科学の発展を邪魔するで次のように述べたことがある。

私の結論としては競争的資金制度に24もいらない。科学研究費補助金だけでよい。これが一元化である。「グローバルCOEプログラム」も「世界トップレベル研究拠点(WPI)プログラム」など、トップダウンのプロジェクトは要らない。科学技術振興機構の498億円は科学研究費補助金に入れてしまえばよい。もちろん科学技術振興機構なんて独立行政法人も不要になってしまう。必要とあれば最小限の職員を日本学術振興会に移してもよいが理事長など役員は不要、行政改革のさきがけとすればよい。では技術の創出はどうなるのかと聞かれそうであるが、技術創出に活かせそうな情報を外に向かってどんどん発信すればよい。お金の流れを情報の流れに切り替えるのである。それを必要とする現場でこそ真に役立つ技術が生まれてくることであろう。

この考えは今でも変わらない。極論すれば国家百年の大計である人材の育成に必要なのは、国立大学にあっては運営費交付金、私立大学にあっては私立大学経常費補助金、それに加うるに科学研究費補助金に尽きる。今わが国に求められるのは贅肉を一切切り削いだ骨太の大学制度を抜本的改革を通じて確立することであろう。