日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

やはり目をつけられたか グローバルCOEプログラム

2008-08-06 17:30:28 | 学問・教育・研究

朝日朝刊が《自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム(PT)」4、5日、文部科学省に対してヒアリングを実施し、政策の必要性について判定する「政策棚卸し」をした。結果的に約160億円相当の10事業が「不要」、約1430億円相当の6事業が「今のままなら不要」と判定された。 》と報じた。私の目を引いたのが『今のままなら不要』と判定された中に、現在進行中の『グローバルCOEプログラム』が含まれていることだった。



学術振興会のホームページでは『グローバルCOEプログラム ■国際的に卓越した教育研究拠点形成のための重点的支援■』を次のように説明している。

《グローバルCOEプログラムは、平成14年度から文部科学省において開始された「21世紀COEプログラム」の評価・検証を踏まえ、その基本的な考え方を継承しつつ、我が国の大学院の教育研究機能を一層充実・強化し、世界最高水準の研究基盤の下で世界をリードする創造的な人材育成を図るため、国際的に卓越した教育研究拠点の形成を重点的に支援し、もって、国際競争力のある大学づくりを推進することを目的とする事業です。 本会では、グローバルCOEプログラム委員会(独立行政法人大学評価・学位授与機構、日本私立学校振興・共済事業団、財団法人大学基準協会の協力により運営)を設け、この補助金に関する審査・評価を実施しています。 》

このプログラムは2007年から始まり今年で二年目に入る。今年度の予算は上の表によると340億円で、プログラムが五年間継続することを考えると予算規模かきわめて大きいことが分かる。この巨大プログラムが自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム(PT)」により今のままでは不要と決めつけられたのだから関係者にとってはおおごとであろう。自民党PTがこのような判定を下した理由はまだ伝わってこないが、私はある種の『健全な良識』が働いた結果ではなかろうかと思った。というのは昨年この『グローバルCOEプログラム』がスタートして以来、以下の記事の中で私はこのプログラムの『虚構』性とその『大盤振る舞い』的体質を指摘していたからである。

「グローバルCOEプログラム」を大砲巨艦建造に終わらせないように
「グローバルCOEプログラム」と高校野球甲子園大会
世界水準の研究教育拠点そして経費関係調書非公表の怪
COEプログラム 世界水準の研究教育拠点作りの真の狙いは?

④の最後の部分のみを再掲することをお許し頂きたい。

《世界水準の研究教育拠点作りという一見壮大なプロジェクトも、一皮剥けば既存の研究室の寄り合い所帯で、『研究教育拠点』も作文の上でのみの存在である。しかしCOEに採択されれば潤沢な活動資金が与えられるし、また所属する大学のステータス向上に役立つなどのメリットがある。しかしCOEは継続性が保証されてはいるものではない。「金の切れ目が縁の切れ目」になりかねない惰弱性がある。だからこそこのような『競争的資金』獲得を向けての競争が熾烈になる。いわば企業が『公共事業』の受注に熱中するようなものであろう。その裏には『天下り』もあれば『談合』もある。そういえばCOEプランはかっての『列島改造論』の文部科学省版、その産物だとすると、見えてくるものもある。(後略)》

かっては私もそのうちの一人であった学者、研究者とは悲しいものである。『研究馬鹿』であればあるほど目の前に研究費という餌をぶら下げられると、なりふり構わずかぶりつこうとする。業なのである。研究者一人ひとりはそれでよいのかも知れない。しかし『グローバルCOEプログラム』を作り上げる側に参画した学者・研究者もしくは学者・研究者上がりが『研究馬鹿』と同じ姿勢であって良いはずがない。これまでの実践を通して自己の学問理念を築き上げた学者・研究者もしくは学者・研究者上がりなら、研究を支えるのが人であり、自由に大きく羽ばたく優れた人材の育成こそ新しい学問、研究の創造に向けての第一歩であることを骨身にしみて実感していることであろう。この人材の育成は国家百年の大計として定められる恒常的な制度によって推し進められるべきで、この根幹的な制度こそ継続的な予算措置により堅持されるべきものなのである。これらの方々は五年、十年単位の『グローバルCOEプログラム』のようなものが、私の述べた意味での『虚構』に過ぎないことをいち早く見抜くべきであったのではなかろうか。

税金の無駄遣いとの指摘を重く受け止め、これを契機にわが国における教育・科学行政のあるべき姿に思いを馳せ、学者・研究者といえどもお金の使い方を他人事とせずに真剣に考えていただきたいものである。私の考えはきわめて簡単、『グローバルCOEプログラム』は止めてしまって、せっかく一度はつけて頂いた予算だからその分、全額とはいかないまでも、本来拡充すべき大学運営経費と科学研究費に入れてしまえばよいのである。甘い考えとは重々承知の上ではある。



最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
COE はハコモノ? (同感)
2008-08-06 22:30:44
私は海外にいるのですが、先日グローバルCOE研究員へのお誘いを受けました。グローバルCOEのことをよく知らなかったので、ちょっと見てみると、これは、まさに日本お得意のハコモノだなあと感じました。研究費の投資に必然性がなく、大型研究費取得のための研究プログラムという感じですね。私はこの手のトップダウン式の大型プログラムは自然科学には一切、必要ないと思うのですが。
 
返信する
一つの割り切り方 (lazybones)
2008-08-08 08:33:36
>私はこの手のトップダウン式の大型プログラムは自然科学には一切、必要ないと思うのですが。

産業開発の分野でははトップダウン方式の大型プログラムが必要で有効な場合もあるかと思いますが、科学の基礎研究に持ち込むべきではないと思います。

ただ余計な口出しのようですが、グローバルCOEプログラムの性格を納得し、グローバルCOE研究員が任期の定められた雇用であることも承知の上でそのポストを受けることは、自分を磨き上げるために決して無駄にはならないと思います。あるものは利用する(利用されるのではなくて)という割り切り方も、時にはあってもいいのではないでしょうか。
返信する
Unknown (にら)
2008-08-12 11:27:37
こんにちは。「ポリ吉ブログ」のリンクからおじゃましました。

構想日本のサイトで掲載されているメモがあります。
http://www.kosonippon.org/temp/080805sheetkagi.pdf
グローバルCOEプログラム検討の際の議論の経緯がうかがい知れますので、ご参考までにご覧ください。
返信する
多謝 (lazybones)
2008-08-12 12:12:06
ご教示を有難うございました。勉強させていただきます。
返信する