たんぽぽの丸い綿毛が目立つようになった。
チョッと強めの風が吹けば、綿毛は今にも飛び出しそうだ。綿毛がこぼれないようにそっと茎を摘み取り、ほっぺを膨らせて「フーッ」と息を吹きかけて遊んだ、遠い子供の頃のことが思い出される。だが、娘や息子と一緒に、綿毛を飛ばして遊んだ記憶が無いのは、何故だろう。
子供達と連れ立って探検に出掛けたり、じゃれて遊んだ楽しい記憶は、一杯あるのだが。今にして想えば、幼い子供達を家内に預けて、出張に明け暮れ深夜残業を重ねたあの頃が、企業戦士であったことの哀しい欠陥証明かもしれない。
たんぽぽの綿毛は、風に乗って舞い上がり遠くへ飛んでいくが、虚庵居士の娘も風に乗って、海の向こうに降り立って根を生やした。息子も今は東京に着地しているが、毎年足しげく海外出張に飛び歩いている。どうやら我が家は、「たんぽぽ親子」なのかもしれない。
たんぽぽの綿毛の舞ふをもろ手あげて
追う児はじじの幼き姿か
空高く風に舞い飛ぶたんぽぽの
綿毛よ子等に無事を伝えよ
それぞれの児を伴ひてたんぽぽを
野に出て摘みませ お唄を歌いて