「うつろ庵」の白い芍薬が咲いた。
芍薬の咲く頃は、梅雨にはまだ暫らく間があるが、どうしたものか殆ど毎年、雨に降られる。今年も蕾から開花にかけて雨に降られ、芍薬には気の毒な天候続きであった。嘗ては杭を打ち込んで番傘を立てかけ、花びらに雨があたらぬように慈しんだが、昨今は番傘そのものが手に入らなくなって、自然のままに任せている。コウモリでは風情もなく、芍薬も気に入るまい。
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芍薬はやはり、白が気品があって好きだ。
開きかけの白い花びらの先端に、ほんのチョッとだけ紅をさすのは、客人に挨拶に出る直前に鏡を覗き込む女性を連想させて、えも言われぬ風情がある。
「うつろ庵」の芍薬は、気の毒にも雨露に耐え切れず、数日で散った。来年は、番傘を何としてでも買い求めておかねばなるまい。
白妙の花びら重ね内に秘める
思いをきかまし芍薬咲くに
しろたえの重ねる衣のその奥に
抱く思いの紅ひとすじ
降り続く雨に花びら露たたえ
あはれ咲くかも白き芍薬
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ご近所の紅芍薬も、相前後して咲いた。