松の木漏れ日を受けて、君子蘭が咲いた。
この君子蘭は、「うつろ庵」の松の剪定を任せてきた植木職人・定吉爺さんに貰ったものだ。定さんが抱えて来てから、かれこれ二十年は経っただろうか、鉢の数も七つ八つに増えた。
彼方此方で見かける君子蘭は、赤丹色のものが多いが、黄丹、或いは金赤と言おうか、落ち着いた色合いが好きだ。
冬も暖かな横須賀では、屋外でも簡単な霜囲いをする程度で例年を凌いで来たが、今年は幾つかの鉢が霜害にあって、可愛そうなことをした。この鉢は、定吉爺さんが丹精込めて手入をしてくれた松の下で、無事に越冬した。
今は亡き「定吉」じいの懐か
松の木漏れ日 君子蘭 いだきて
この頃は行くさ帰るさその都度に
挨拶かわす君子蘭かも
抱き来て置きたる鉢は年毎に
君子蘭咲きじじ忘れめや