柿がひっそりと花を付けている。
柿は蔕が予め大きく成長して、その中に蕾と未生の果実を大切に守り、花が咲いたときには、中に果実が顔をのぞかせている。花よりは蔕が大きいのと、蔕も若葉色ゆえに目立たず、花を咲かせてもごくひっそりと、控えめだ。
今年の五月の天気は、雨が降り続いて、例年に無く日照時間が短いと言う。天気図を眺めると、南には最早、梅雨前線が発達し始めているので、このまま北上すれば梅雨入りも早めになるのかも知れない。
梅雨を迎えれば、やがて多めに付けた実を振り落として、柿の数を自ら加減する知恵者ぶりを見せてくれよう。ジューンドロップも、季節の愉しみの一つである。
輪のままに散り敷く花にそれと知る
柿の花かもひそかに咲きいて
花つぼみと未生の柿を懐に
いだける蔕も若葉色かな
たらちねの母を見るかも柿の蔕に
未生の吾子をしかと抱きて