「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「梅花空木」

2006-05-29 20:35:50 | 和歌

 卯の花の季節を迎えた。

 純白の梅花空木は、卯の花曇りのハッキリしない天気でも、そこだけが明るく見える。
日が暮れると「卯の花月夜」とも呼ばれる所以か。白い花は、清楚で気品があって好きだが、群れ咲く枝から少し離れて咲く姿には、何か訴えるものがあって、殊に惹かれる。

 卯の花は、万葉の頃からホトトギス(霍公鳥)と共によく詠われたが、時期的にも将に初夏の花と鳥だ。「うつろ庵」の近くでは、ホトトギスの鳴き声は流石に耳に出来ないが、つい数日前に葉山で堪能した。

 観音崎に近い「うつろ庵」では、ホトトギスに代えて目白が美しい声で、初夏の囀りを聞かせてくれる。庭木の葉隠れに鳴く目白の声は、旋律といい、その複雑な鳴き方といい、独創的な歌は小鳥の中でも絶品である。これほど素晴らしい目白を、万葉歌人は何故詠わなかったのであろうか。






             卯の花を腐すと伝ふる五月雨は
  
             降り避けるかな梅花空木を  



             卯の花の咲く道来ませ うつろ庵に
  
             目白鳴くかも木の葉隠れに



             明日行くは伊豆の山裾名にし負ふ
  
             箱根空木の花をば見まほし