Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

写真家の将来

2007-01-09 23:13:56 | 報道写真考・たわ言
ブログにも何度か書いているが、ここ数年新聞の購読部数は減っていく一方だ。簡単にニュースをチェックできる上に、速報性もあるインターネットのために、人々が新聞を読まなくなったのが大きな理由だ。

時代の流れには逆らえず、最近は各新聞社もウェブサイトの充実に力を入れざるを得なくなっているが、おかげで僕らカメラマン達の仕事内容もここ1,2年で随分と変わってきた。

写真のマルチメディア化が一気に進んだためだ。

新聞紙面に載せる写真以外に、ウェブページに掲載するスライドショウのために、音を録ることが必要になってきた。僕もリベリアのものをはじめ、これまですでにいくつかのスライドショウを手がけたが、現場での会話や背景の音を録るために、ボイスレコーダーを持ち歩かなくてはならなくなった。

まだ慣れないので、これが結構面倒なのだ。これまでは写真を撮るための視覚だけに神経を集中していればよかったものを、こんどは音にも気を配らなくてはならない。しかし、まだそういう習慣がついていないので、ついつい音のことなど忘れてしまうのだ。写真を編集し、スライドショーをつくる段階になって「ああ、なんでこのときの音を録ってなかったんだ!」という場面がぼろぼろでてくる。実は最近作ったギフトの養子のストーリでも、足りない音が多すぎてまとめるのに随分苦労したのだ。

まあ、面倒なことはさておき、写真の新たな味を引き出すためにも、音を加えてスライドショーをつくることにはそれなりの価値があると思う。しかし、先日メールで送られてきた写真部のボスからの通達には驚かされた。

なんと、今年から徐々にビデオも導入していく、という。

勿論写真を撮ることが僕らのメインの仕事だが、必要に応じてインターネット用にビデオの撮影も加えていくというのだ。正直言うと、そのうちこういう事態もくるのではとうすうす感じてはいたのだが、まさかこんなに早く自分の身に降りかかってくるとは思わなかった。

一見近いように思われるかもしれないが、ビデオと写真はまったく違った種類のメディアだと僕は思っている。

録る側の思考回路も全く違うし、出来たものを作品としてみるときの視点もまた別なものだ。僕は最も大切な一瞬を「点」として記録する報道カメラマンとして自分の仕事の価値を見出しており、事象を「流れ」として撮影するビデオにはあまり興味をもっていない。

ビデオ映像の必要性を否定するつもりなど毛頭ないが、僕個人としては「写真」に対するこだわりがある。しかし、新聞社の意向として通達がでてしまった今、果たしてこれからも自分の主張をとおして、ビデオなどやらないよとそっぽを向いていられるのだろうか?

僕らカメラマンの仕事形態についての将来のことを考えると、なんだかやたら憂鬱になってしまう。。。

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8 コメント

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お久しぶりです (Aoba)
2007-01-10 21:17:00
こんにちは!
昨夏、札幌で「被爆ピアノコンサート」の際にリベリアでの写真パネルを貸してくださり、本当にどうもありがとうございました☆
記事とは関係ないのですが、久しぶりにKuniさんのHPやブログを見ていたら、夢中になり色んなことを考えて何時間も経ってしまいました。
そして新年のご挨拶も兼ねて、と思いコメントさせてもらいました♪
今年度も、どうぞお体にお気をつけて!
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点だから (**kom)
2007-01-10 21:29:41
点だから見えるものがあるのに。
最近思うのは、フィルムとデジなどもそうですが、なぜかどちらかに偏りすぎてしまいフィルムカメラを作らないというようなメーカーも増えていますが、どちらも伸ばすという風にはいかないものなのかなと思います。あまりにも急激に変化させすぎていないか、と思うのです。相互が共に利点を伸ばしていくという形もとれるのに。点だからこそ、写真にしか出来ないことがあると思うのですけれど。企業側ももう少しディスカッションを重ねて欲しいとも思います。私が懐古主義なのかしら?!基本は共栄共存で、なおかつカメラマンが増えるというのがいいのでしょうけれど。そんなことしてられない、社員の能力を限界まで使わせろ的なのでしょうが。考え込んでしまいますね、ホント。
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Unknown (miura)
2007-01-11 00:20:15
会社がお膳立てをしてくれて、新しい技術に取り組めるのは、むしろいい機会のような気がしますが…。

やってみて、本当に向かなければ写真だけ出来る道をさがせばいいのでは?

ビデオになると、また編集の問題がさらにクローズアップされますね。報道だと映画の長回しみたいにはならないでしょうから、点の延長というか、短い線のつながりみたいになりそうですね。

短い動画のなかで、どのフレームを撮っても構図にぶれがないって、すごいと思います。

勝手いって、失礼だったらご容赦ください。
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Unknown (田中智己)
2007-01-11 01:06:11
動画から高画質な静止画を取り出すことが可能になってきているなか、写真の価値が軽視されてきているような感じはありますよね。

ぼくは動画はインデックスのようなものと思っています。決して写真のほうが価値があるとか優劣をつけているわけではありませんが、テレビやネットで動画を見るのと活字と写真から得られる情報の質は異質のものと言って良いと思うのです。
動画がインデックスと思うのは説明が長くなってしまうので割愛しますが、テレビの仕事なども手伝ってきて感じたことです。

端的に言うと写真は自分で読もうとするのに対して、動画は一方的に情報が流れてくるということでしょうか。。。

ただ、ニュースによっては動画のほうがその情報を伝えやすいものもあると思っています。
かつて、キャパもマグナムの若いカメラマンたちに「写真で掘り下げるのが難しくなったらムービーを回してみればいい。また違った視点が浮かび上がってくる」というようなことを言っていたといいます。
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動画と写真 (Kuni Takahashi)
2007-01-11 09:17:03
確かに動画の利点というのは数多くあります。中でも写真では「音」が伝えられないことをずっと歯がゆく思っていました。しかしサウンドと組み合わせるスライドショーによってその不満はある程度解消されたと思っています。しかし、それをさらに広げて動画までもっていってしまうと、あたりまえですがもうそれは写真ではないんですよね。まったく違う生き物ですから。。。
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Unknown (miura)
2007-01-11 13:45:12
つづけて失礼します。

報道写真で、ずっと気になっていたことがあります。広角の写真が多くて、たくさんつづくと不自然に劇画タッチにみえるんです。

人に聞くと、同じ瞬間がもどってこない現場で、なるべく多くの情報を1枚に盛り込むためにそうなるんだとのことでした。

動画だったら、より自然な構図でカメラが360度まわりこんだり、画角も寄ったり引いたりできるのが、見るほうにとってはいいと思います(動画から入る動画でなく、スチールの延長的な動画としては)。

それと、高橋さんのスタイルから想像するに、黒澤監督みたいな画を撮りそうなイメージがあり、それはそれで見てみたいです。
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そうですね・・。 (ほいみ)
2007-01-13 22:26:08
私も「高橋さんの動画も見てみたい」とは思います。

が、しかし そんな時代だからこそ!あえて写真を撮り続けて欲しいです。
 限られた表現方法・・四角い二次元のなかでいかに「時間」と「空間」を切り取って表現するか。限界があるようで、でも納得のいくものが撮れたときは それは「瞬間の奇跡」になると思うんです。
 私の父は 写真を自分で現像するくらいカメラがすきで、もう50年近く撮り続けています。何百枚と写真を見てきて思うんです。
 本当の写真には 光も音も風も匂いもあります。
映像は映像。写真は写真として誇りをもって、シャッターを切っていいと思います。
(フイルムか デジタルか・・は別の話として・・ね!)
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音と匂い (Kuni Takahashi)
2007-01-14 03:00:52
>本当の写真には 光も音も風も匂いもあります

別に反論するわけではありませんが、写真ではこれには限界があると思っています。その光景を実際に体験している人には、写真によっては音や匂いを「思い出させる」ことはできるかもしれませんが、どんなにすぐれた写真でも、それを経験したことのない人たちに、あの戦場の砲弾の炸裂する爆音や、折り重なった死体の匂いをそのまま伝えることはできません。
匂いは無理にしても、ビデオではそれができるので羨ましいと思っていました。
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