熊本熊的日常

日常生活についての雑記

民藝夏期学校2日目

2018年09月01日 | Weblog

今回の民藝夏期学校は全日程がしょうぶ学園で行われる。昨日は施設の見学と民藝館館長の深澤直人氏の講演。本日は山梨英和大学人間文化学部准教授の李尚珍氏が浅川伯教・巧についての講演、薩摩焼窯元の第十五代沈壽官氏が薩摩焼と御自身にまつわる話、李氏と沈氏とのトーク、しょうぶ学園のドキュメンタリー映画「幸福は日々の中に」の上映というプログラム。

沈壽官氏の話は様々に示唆に富んでいた。焼物の歴史にしても、朝鮮半島から陶工たちが連れてこられたことについても、教科書的な平明な文章では語り切れない深い事情があると感じた。その感じたことをここでは書かないが、世間で話題になっている「歴史認識」というような浅薄なものは所詮浮世の政治方便に過ぎないのは確かだ。人が何事かを語るということが、何を意味するのか。語る内容の枝葉末節だけが全体を離れて全体とは没交渉に奇怪な議論を巻き起こすのは、人が己の経験と知性を超えて発想することができないからに過ぎないのだが、その有象無象を利用してどうこうしようという者が存在する背景が興味深い。その昔、日本に連れてこられた陶工がどのように遇されたのか、連れてきた側の事情や戦略がその後の歴史でどのように展開していくのかということと考え合わせると面白い。また、連れてこられた側が受け身一方であったかどうかも問題だ。受け身でなかった人たちがいたとしたら、何故なのか、日本に渡ることで何を期待したのか、ということも興味深い。

「幸福は日々の中に」は予想していたよりも面白い作品だった。生きるとはどういうことなのか、もちろん、そこに答えはない。個人の問題ではあるのだが、自分の問題として刺さる。若い頃だったら他人事にしか感じられなかったと思うが、黄昏時になってしまったからといっても考えるのに遅すぎるということはないと思う。

 


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