東京で音楽会を聴いた次の日、国立近代美術館で鏑木清方の「築地明石町」を見てきました。幻の絵といわれていましたが、特別公開されました。古きよき明治の情緒を描いたものです。その時、会場の入り口でその絵から抜け出たような美女と遭遇。背格好も着物も全く同じでした。青緑色の小紋、黒の羽織(裏は赤)。聞いてみると、この絵を見るために着物を仕立てて上京されたそうです。お洒落も極まったという感じでした。
浄瑠璃寺浄土訪ぬる冬日和
哀歓を隠して小紋小六月
天泣や立原道造詩集読む
雪売が冬の信濃路とぼとぼと
決勝戦ノーサイドの声小春空
落ち葉散る思ひ出ひとつまた一つ
むなしさや独飲嘆息しぐれけり
ハモニカの音澄みて冬独飲す
父逝きて日月過ぎぬ散り紅葉
灯(ひ)の紅き木屋町歩めば冬至梅
鰤大根おでんきんぴら十四代
唇に紅刷くおみな息白し
哀歓を隠して小紋小六月
落ち葉散る思ひ出ひとつまた一つ
ハモニカの音澄みて冬独飲す
父逝きて日月過ぎぬ散り紅葉
鰤大根おでんきんぴら十四代
拙句にお目通し頂き、その上私めの自信作(笑)"哀歓を尽くして・・”も採って頂き感激です。十四代は一頃、名古屋の小料理屋でもまた山形は米沢の店でもいくらでも飲む事ができましたが、今では高木酒造は山形県外には出さないようで幻の酒になっています。
昨夜、小生も「美の巨人」を見ていました。日本画復元の場面を見ていると、鏑木清方があれほど手の込んだ手法で描いていたのには驚嘆しました。ここで出演した女優の酒井美紀さんは、私が会場で出会った女性と背格好も含めてよく似ています。年齢的にも。しかし、酒井美紀は今年の春から東京の大学院で勉学に励んでいます。お子さんもふたり。つまり東京在住です。私が出会ったのは、名古屋の人でした。昼食にでもお誘いして、もっとお話を聞けたらよかったのですが・・・。あはは・・・。
今年の紅葉は思いのほか奇麗でした。近所の池の桜も黒斑点がありませんでした。
その紅葉の美術館で鏑木清方の「築地明石町」の特別展を見たと。しかも、会場で絵の中の女性とそっくり同じ出達の妙齢のご婦人と会われと。絵を見ただけでも感銘の極まり、しかも絵から抜け出たようなご婦人と会われた。幻ではなかろうか。思わず頬をつねってみるところですね。
うっかり、選句するのを忘れるところでした。
残念ながらテレビの件の絵の特別解説を見損ないました。再放送を狙います。
次の好きな句を頂きました。
哀歓を隠して小紋小六月
落ち葉散る思ひ出ひとつまた一つ
ハモニカの音澄みて冬独飲す
父逝きて日月過ぎぬ散り紅葉
灯(ひ)の紅き木屋町歩めば冬至梅
鰤大根おでんきんぴら十四代
幼き日の父の思い出が尽きないのですね。
今年の紅葉はとてもよかったですね。六甲山の森林植物園でも京都でも、また皇居外苑でも。龍峰さんも楽しまれたことと思います。
六句もお取り頂き身に余る光栄です。たしかに、父恋はこの年になっても続いております。お採りいただいた句の中では、”落ち葉散る・・・”の句が私自身にとって好きな句です。銀杏落葉が散るのを見て、ふと口をついて出ました。楽しかった思い出が一つずつ消えてゆく。その思いと同時に印象に残った残った思い出が次々に頭に浮かんでくる。それらの思いを合わせて詠みました。
「美の巨人」の再放送があるといいですね。
今晩は!!。
又一ヶ月ぶりのご無沙汰になりました!!。
上京され音楽会を楽しんだ後、国立近代美術館において開催中の日本画の巨匠鏑木清方の「築地明石町」の名画を堪能され、その絵から抜け出したような着物の装いの佳人(美人)と出会われ、しかも口をきく切っ掛けまで作られたとは、さすが!!・・ゆらぎさんならではですね?色々充分楽しまれたご様子は、大変結構でした。
小生の東京勤務の頃は、月島に納品及び倉庫の大丸月島別館があり、中元歳暮の繁忙期には良く行っていました。勝鬨橋を渡り、佃島、月島へとのルートであったと記憶しています。当時この辺り一帯は「もんじゃ焼」で有名でした。
さて、いつもながら前置きが長くなりましたが、沢山の佳句の中より以下の御句を頂きました
☆浄瑠璃寺浄土訪ぬる冬日和
木津川の浄瑠璃寺は紅葉狩りでしたでしょうか?穏やかな冬の日差しに映える紅葉が想われます。
☆哀歓を隠して小紋小六月
鏑木清方の絵とそっくりな着物姿の佳人(美人)とは、穏やかな冬の日差しの中の日本画の展覧会と云えども、何か憂いまで想われ、とても気を惹かれます。
☆落ち葉散る思ひ出ひとつまた一つ
この歳ともなれば、ものごころついてより何度目の落葉時でしょう?その様子を眺めていれば、想い出の一つ一つが想い出されるようです。
☆ハモニカの音澄みて冬独飲す
独飲す、との措辞に紅葉を愛でハーモニカを吹きながらウヰスキーのポケット瓶を飲んでいたのですね?
☆父逝きて日月過ぎぬ散り紅葉
小生もその節目節目に於いて、父親と同年代になるたびに、親爺が生きていれば「今のこの時季を何をどう考えていたのであろう?」と思いを巡らす事が良くあります。散り紅葉の頃はそれほど人を詩人にさせ、そして詠わせます。
☆灯(ひ)の紅き木屋町歩めば冬至梅
灯の紅きと言えば一瞬にして、吉井勇の祇園白川の「紅灯の火」を連想してしまいます。
更に、冬至梅などの風流なものは木屋町ならではですね?
☆鰤大根おでんきんぴら十四代
十四代もつづく、京都の「おばんざい」の名店でしょうか?鰤大根、おでん、きんぴらどれ一つとってもいい味出しています!!。
さて最後に、例によりまして小生のちっとはましかな?思う句をご披露させて頂きます。
☆蘆の穂の絮となりたる中州かな
☆大橋を渡り南座冬日照る
☆穂すすきの絮に夕日の傾ぎけり
☆冬耕の稲株白し土くれも
☆三島忌の銀杏散り積む金閣寺
☆嶺に日の十一月も果てにけり
☆暗やみに星の荒野や待降節
☆南座の大屋根黒くしぐれけり
☆綿虫の祇園小路に浮き沈み
☆新幹線のドドドドドドと師走来る
以上であります。
しばらく旅に出ており、お礼を申し上げるのが遅くなりました。ご容赦ください。拙句を七句もお取りいただいた上で、丁寧なコメントをありがとうございました。
”哀歓を尽くして・・・”は、私めの自信作(笑)ですが、鏑木清方の「築地明石町」の美人画を見てからしばらくして、「美の巨人」のテレビ放送があり、二重に楽しむことができました。まったく、もって至福のひとときでした。
「鰤大根」の句に出てくる「十四代」は山形の銘酒です。灘などの大手メーカーの日本酒を圧倒する勢いで地酒が続々と登場するきっかけを作りました。鰤大根やおでんを食しながら飲む「十四代」は応えられません。
たろうさんのお句からは、次の2句を頂戴いたします。それにしても続々と、さらさらと詠まれるにには感嘆いたします。
”三島忌や銀杏散り積む金閣寺”~三島由紀夫の名作「金閣寺」にかけて詠まれた句には何ともいえぬ哀感が感じられます。冬と秋の季語が入り混じっていますが、それも気になりません。イチオシです。
”暗やみに星の荒野や待降節”