先月中国の江南を少しばかり回ってきた。蘇州、無錫、上海である。日本より少しばかり涼しい感じだったが、相変わらずエネルギッシュに街の建設が行われ、変貌が進んでいた。それでも湖面を吹く風、街路樹の日差しにどことなく秋が感じられた。
江南に旅立つ朝や秋の雲
秋の夜や石橋わたる蘇州の風
柳舞う蘇州の街の秋夕日
木犀の香に聞きにけり蘇州の夜
秋暁や鐘ひとつ鳴るなり寒山寺
秋空や命溢るる南京路
ワイタンにランタン往くや夜長衆
島影の無錫の湖や秋の風
秋雲や太湖滑りしジャンク船
江南に旅立つ朝や秋の雲
秋の夜や石橋わたる蘇州の風
柳舞う蘇州の街の秋夕日
木犀の香に聞きにけり蘇州の夜
秋暁や鐘ひとつ鳴るなり寒山寺
秋空や命溢るる南京路
ワイタンにランタン往くや夜長衆
島影の無錫の湖や秋の風
秋雲や太湖滑りしジャンク船
綺麗なお写真が入っておりますが、これが寒山寺でしょうか。近くの石橋を渡るとき涼しい秋の風が流れてきた清々しい秋の景が浮かびます。そこの地名、「蘇州の風」で止めているところ、とても歯切れよい句と思いました。
水の都、江南の蘇州の街には水路に面して柳が沢山植えられていると伺った事があります。厳しい気候、寒暖の差の激しい北部の街と違い、柔らかな光りと風の蘇州を想い浮かべ、旅情をかきたてられます。
☆木犀の香に聞きにけり蘇州の夜
「夜来香」の歌曲で有名な支那の夜は、蘇州の夜の事。それでなくても旅情をそそられる蘇州の夜に、あの甘くて艶っぽい木犀の香りが漂う様は、イメージが果てしなく拡がり、旅心を誘われて素敵です。季語の「木犀の香」と現地「蘇州の夜」が見事にマッチしましたね!。
☆秋雲や大湖滑りしジャンク船
何処の湖でしょうか?支那に特有な小型の舟は、手漕ぎでも、一本マストの帆を張って走る場合でも、仕事場と住居が一緒とも伺ったことがあります。空に秋雲の漂う大きな湖に、ジャンク舟とは、支那の山水画を眺めるようで一幅の絵を想い素晴らしい佳句ですね!。
尚、「船」は大型船の場合に使用し、小型の場合は「舟」が正しいと思います。ジャンクは小型ですから、「舟」とされた方が良いと思いますが如何でしょう?
龍峰様
中国、江南の地は歴史上からも我が国に文物が古くからもたらされ、文化的にも大変親しみのある土地のようです。気候の厳しい中国の内陸より、江南の地の温暖な所が季節の移り変わりもあって俳句にもし易いようですね!江南、石橋、蘇州、蘇州の夜、寒山寺、ジャンクなど我々にも馴染みのある言葉で、またまた素晴らしい旅を満喫されたようですね!。
秋雲や太湖滑りしジャンク船
最初と最後の句を頂戴しました。大陸の旅情を秋の雲に託して見事に詠んでおられます。「太湖滑りし」の表現に感心致しました。中国の風景は東洋的という意味では日本の風景と共通しているところもあるようですが、空気感が全然違いますね。あの違いの由縁を一度分析してみたいものです。
ワイタンにランタン往くや夜長衆
この句はちょっと説明をしてください。ワイタンとは何でしょうか?
秋の夜やの句を取りあげて頂き有り難う御座います。
写真は寒山寺ではなくホテルの近くに白居易を記念した公園があり、そこを朝散歩したときの写真です。
蘇州の街は運河(川)が張り巡らされており、あちこちに石の太鼓橋のような橋が架かっております。その景を詠んでみました。
3句も取りあげて頂き有り難う御座います。
中国にもお詳しいかつら様のコメントは改めて大変勉強になります。仰せの通り、江南地方は日本と気候が似ていて稲作地帯ですね。川があって柳が植えられていると、DNAのどこかで何かほっとする物を感じます。句を詠み易くなるのかも知れません。
太湖(大湖ではりません)は無錫のかの中国で4番目に大きな淡水湖です。今回ここで観光用のジャンク船と称する船に乗りました。沖合に出たら帆を上げておりました。波はなく静かな物でした。
かつら様もこの江南の地へ行かれたらきっと、遠い我々の祖先が踏んだあちこちの地に思いを新たにされるのではないかと思います。
江南にと秋雲の2句を取りあげて頂き有り難う御座います。確かに中国の風景は日本と似ているものの空気感が異なるというのはある面その通りでしょう。但し、今回の江南の地は高温多湿で稲作、養蚕等々日本の一昔前の農村地帯と似ており、どことなく自然の風物は似ており、違和感は余り感じませんでした。
ワイタンは上海の一番の観光名所となっている黄浦江沿いの外灘(バンド)の中国名です。租界地時代の有名な建物に近代的なビルが加わり夜はネオンと照明で照らされて、大変な観光名所となっております。その景を詠みました。
またまた、楽しい旅をされたようで羨ましい限りです。でも、地名を拝見して、私も懐かしい思いが致しました。上海、蘇州は、あるグループで1992年の夏に訪れたことがあります。その時は西安も訪れました。
お句の中から思い出と重なるものを選ばせて頂きました。
☆秋暁や鐘ひとつ鳴るなり寒山寺
静かな秋の暁に鐘の音がひとつ。お寺の鐘の音はどこで聞いても心鎮まるものですが、遠い旅先では一層心に沁みるものがあると思います。私が旅したのは夏でしたが、寒山寺ではあの有名な張継の楓橋夜泊の唐詩...。
”月落ちて、烏いななき、霜天に満つ...”
の詩碑を見、土産店のお坊さんに我々のグループの名前を中国風に漢字で書いて貰ったことをを思い出します。
☆柳舞う蘇州の街の秋夕日
蘇州は水ある所に柳と蓮ありといった風景でした。「柳舞う」の表現がよく分ります。ことに西安から直行したこともあって、砂の風土から水の風土といった感じで、日本人の我々は大変ほっとした思いがありました。
☆秋空や命溢るる南京路
これは上海の活気ある通りの風景でしょうか。確か南京東路を「ナンキントンルー」とか呼んでいたように覚えています。ともかく、中国人のエネルギッシュなことには驚きました。立ち食いをしながら歩いている人もよく見かけました。
まさに「命溢るる」ですね。
3句も取りあげて頂き、ご自身の思い出と共にコメントを頂き有り難う御座いました。
寒山寺と言えばやはり張継の「楓橋夜泊」の漢詩と鐘ですね。今回は小生もこの漢詩が書かれた扇子を買いました。中国でもこの詩が有名な事がよく分かりました。
蘇州は仰せの通り水と柳ですね。日本人にはほっとする街です。
南京路は南京東路のことです。歩行者天国のこの通りを歩いていると思わずエネルギー溢れていることを実感します。今回は隣の福州路も歩き書店や画材などの店を覗き、散策しました。
湖の静かな情景、周囲の喧騒もなく滑ってゆく船のありさまが伝わってきて、佳き句かと思います。それにして精力的に旅をされますね。感心します。
秋雲の句を取りあげて頂き、有り難う御座います。無錫の太湖は入り江も多く、どれだけ大きいかは実感出来ませんでした。湖の畔はゆったりして時計が止まった感じ。湖岸には毛沢東他の別荘が建っていた。ジャンク船に乗った日はあまり風もなく長閑でした。