印南中(栖原伸精校長)の3年生36人が5日、1日から京都市を会場に開催されている国際博物館会議(ICOM)2019の一環として和歌山市の県立博物館で開かれたオフサイトミーティングに参加し、2005年度から同校が取り組んでいる津波研究について発表、印南町がかつお節発祥の地であることを紹介する英文で記した資料も配付し町のPRにも一役買った。
発表では1854年に発生した安政の南海地震では過去の教訓を生かして印南町では一人の犠牲者も出なかったことなどを紹介し、近い将来起こるとされる南海トラフ巨大地震への備えとして、過去の災害記録を伝承することの大切さを訴えた。
ICOMは世界138の国と地域の博物館関係者約4万4500人が会員となっている国際組織。3年に一度すべての委員会が一堂に会する世界大会が今回日本で初めて開催。5日は関西圏を中心に博物館や文化施設などを会場にオフサイトミーティングがあり、県内では県立博物館などを会場に開かれ、印南中3年生代表7人(大地紗永さん、川島穂香さん、湯川陽菜さん、鈴木蓮清君、庄門倭君、中家来都君、平田和暉君)が「印南中学校の防災学習-『災害の記憶』を地域の人々と共有することをめざした活動」をテーマに発表。
和歌山県のオフサイトミーティングに参加したICOM関係者や浮島とも子文部科学副大臣らを前に生徒は、印南地内は1707年に発生した宝永の南海地震で大津波に襲われ、176人の犠牲者が出たが、147年後の安政地震では同じように大津波に襲われたものの宝永の教訓が伝承され一人の犠牲者も出なかったことを紹介し「東日本大震災時の『釜石の奇跡』に勝るとも劣らない歴史的快挙だと自負している」とした。昭和の南海地震は津波規模がこれまでより小さかったにもかかわらず16人が犠牲となったことから体験者に聞き取り調査。犠牲者が出たのは「過去の教訓が後の世に伝わらず、地域住民に浸透していなかったからと考えられる。安政の快挙が住民の油断を生じたのかも知れない」と、過去の教訓を伝承していくことが犠牲者を出さないことにつながるとした。
そこで過去の教訓を地域の人たちと共有しようと取り組んだ「安政印南のキセキ」と題した紙芝居を作り、小学校で上演したり、より多くの人に見てもらおうと動画配信サイト「ユーチューブ」にアップするなどの活動、宝永地震での津波犠牲者の戒名と大津波の様子などが記された印定寺本堂に安置されている合同位牌や安政の大地震の際の津波の様子や高いところへ逃げるようになどと書かれた「かめや板壁」など地元に残る災害記録の文を現代語訳にチャレンジしたことを紹介し、最後に「今後も災害記録を活用した啓発活動を続け、地域のより多くの人たちに先人の災害の記憶を共有してもらい、近い将来起こるとされる南海トラフ巨大地震に対しての備えとし、安政の先人のように犠牲者ゼロを達成してほしいと願っている」と述べた。
アゼルバイジャンから参加の女性は「津波はテレビの映像で見たが、とても悲しく思っていた。たくさんの情報があって素晴らしい発表だった」、発表した大地紗永さんは「自分たちの活動と先人達の快挙を世界の人たちに知ってもらえてよかった。自分たちの取り組みをより多くの人に知ってもらえるようこれからも活動を広げていきたい」と話した。
発表者の他の生徒も「印南町はかつお節の発祥の地です。発表で紹介する災害記録の資料を受け取って下さい」と英語で参加者に話しかけ、災害記録や印南町がかつお節発祥の地であることを英文で紹介した資料を配布し、印南町と発表をPRした。
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