KCF的徒然草

KouChan's Factory管理人の心の叫びor反省文

KCF的”コストダウン論”

2006-04-30 22:13:00 | 社会・経済

今回は長いです。

 最近起きているJRの線路トラブル、航空機の整備不良、そしてついに逮捕者まででた耐震建築物偽造など、公共交通機関の「安全」が次々崩壊しつつある、という。そして、その事件のひとつひとつの裏に出てくるのが「コストダウン」というキーワード。今日はこれについて考える。

 一般的に「商品」と呼ばれるものには「価格」が付いている。価格の決定には、原材料の費用、加工費(あわせて製造原価という)に、人件費や経費などを含めて「販売価格」を決定する。現物を提供しない、いわゆる交通機関の運賃や散髪代などといった「サービス」にも、サービス提供に必要な経費、道具の費用を勘案して決めている。しかし最近のバブル崩壊から始まる不景気、海外資本の参入、アジア諸国、特に中国の経済発展など、日本側にとって経済的にマイナスな要素が増えてきている。どの産業分野でも、否が応でも競争社会に巻き込まれる。この競争に生き残るためには、いかに消費者に自分達の提供するサービスを受けてもらえるか、そのために価格を下げて消費しやすくしたり、宣伝活動などを行ったりする。

 価格を下げても従来と同程度、もしくは従来以上のサービスを提供出来るにはどうすればよいか?そのために原価を出来る限り下げ、純利益を上げられる「商品」を開発すること。それが「コストダウン」の考え方である。その実践は多種多様あり、一番コストのかかるといわれる「人件費」の削減のために、工場を海外へ移転したり、機械化の推進を図るなどをする。原価低減の為には、材料を安価な製品に変える、工法を簡略化するなどの方法で行うなどがある。

 では、冒頭で取り上げた事例は、何がいけなかったのだろうか?「コストダウンを追い求め続けた結果、安全への配慮が足りなかった」と一言で片づけるのは簡単だ。JRのレール変形は、その直下で行う工事に原因があるとされており、工法に問題がなかったか、理論と実際の作業に多少なりにもギャップ、食い違いがなかったか。また、航空機の場合は、1機当たりの整備にかかる人員が極端に少ない(1機当たり2,3人しかいない、とも聞いた)ことや部品の管理体制に問題があるというし、耐震建築物偽造については、そもそも設計用ソフトの操作で構造計算書を偽造したことに端を発し、甘いチェック(?)の結果、実際に建築され、売却もされた(ただ事例で上げた耐震偽造建築の問題は、ある意味政治的意図も考えられ、今後の捜査いかんによってはこの後の論理が成り立たなくなる可能性もあると思っている)。
 総じて言えるのは、コストダウンそのものよりも、コストダウンのための努力を、携わっている人間が怠ったことが原因ではないかと思う。コンピュータなどによる省力化によって、特に製造業などでは「誰がやっても同じ製品が出来る」ことで商品コストを下げることが出来るようになった反面、モノに対する「技術」がなさ過ぎると思わざるを得ない。

 2007年に向かって、「団塊の世代」とよばれる方々の大量退職によって、この「技術」喪失はますます加速していくと予想される。そうなると、企業側は同程度の技術を確保するために機械を導入する。その結果、ますます省力化、低コスト化が図れる一方で、人間側の技術・能力はますます衰えていく。たとえるならば、最新技術を結集したF1マシーンを、運転免許取ったばかりの若葉ドライバーが操縦する、そんな空恐ろしいと思える時代がいま到来しつつある。
 むろん、時代の進展とともに技術が進歩していくことは良いことであり、現代のIT文明に反発するつもりは毛頭ない。ただ、発達しすぎた機械に、使う側である人間の技術、能力が追いつかない状況にあることは明らかだ。キーボードのボタン操作ひとつ間違えただけで、何千万円の損失を招いたり、株が暴落したりと、初歩的なヒューマン・エラーが後を絶たない事実を見ていて・・・・と、話が逸れた、コストダウンの話である。

 コスト、すなわち経済性について、たまたま手元にあった、電気施工管理技士の受験で使ったテキストをひもとくと、工事の施工計画の項目の中に、このような文があったので、テキストから引用する。

「経済性とは単に安く作るということではなく、工事費について総合的に判断しなければならない。つまり、品質を軽視して手戻り、工事のやり直しをするようでは不可であり、安全性が損なわれ事故を起こせば意外な支出を生じることになる。」
「工期(引用者注:工事の納期)に遅れないように工程を組むことは当然であるが(中略)工期が短い場合には安全性、品質等が損なわれがちであり、工事費も増加しやすいので、合理的で実行可能な工程計画でなければならない」

 すなわち、適度な品質、適度な工程で、安全に施工できる工事こそ、経済性のある工事であり、ここからさらに一歩踏み込み、実証された新しい理論、工法を用いてよりよい工事施工が出来て初めて「コストダウン」といえるのではなかろうか、と思う。先のJRやマンション偽造も、実際に施工する前の設計段階でこの点にもう少し注意を払っていれば、今のような騒ぎにまで発展することはなかったかもしれないのだが。

コストの話をしていたら、最後は工事の話になってしまい、脱線しまくりだったな、今回も。また結論も自分の言葉でなく、本からの引用になったこともご容赦願いたい。

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