ダウンタウンの松本人志さんが、TV番組で「生涯で一番聴いている曲」だといって紹介した、さだまさし「道化師のソネット」。
”笑ってよ 君のために♪”という出だしはあまりにも有名で、もちろん名曲のひとつでもあるし、CMでも流れていた。昔『何か』で聴いたことがあったのだが、長い間どこで聴いたのだか思い出せないでいた。
それが、「ピエロの青年の映画」ということを後になって知ったとき、記憶の隅の隅に埋もれていたできごとがフラッシュバックしてきた気がした。
そのできごとを話す前に、少しこの曲について自分なりの解説をば。この「道化師のソネット」は、さださん本人が主演の「翔べイカロスの翼」という映画の主題歌としてつくられた。写真家志望だった若者がサーカスの魅力に惹かれ、その世界に身を投じ、青春をサーカス団員のピエロとして活躍するのだが、公演中に事故で亡くなってしまう・・・。その彼のことを歌ったものだ。
ぼくはこの映画を見ていない。しかし、小学生の時、学校行事のひとつとして劇鑑賞の時間があり、そのときにこの演劇を見たので、ストーリーははっきりではないが憶えている。本物の劇団の方々が学校に来て、そのうちひとりが通っている小学校の卒業生だとも紹介されたが、だれだかは知らない。
ときどき考えてしまうことがある。
自分はこれまで仕事したり、趣味で模型やってそのうちに自分だけでなく見知らぬ誰かを楽しませることをいつしか喜びとしていたが、本当にそれは人のためになっているのか、人を十分喜ばせているだろうか、単なる独りよがりに終わっていないだろうか、いや、人を裏切る行為になっていないだろうか?
”持ちきれないほどの哀しみを せめて笑顔が救うのなら 僕はピエロになれるよ”
たとえばニュースを見ても、いい顔はひとつも映らない。
震災や原発事故による放射性物質の問題を毎日のように流す定時のニュース。
未だに状況が打開されないことにいらだつ、避難されている方々やインタビューでここぞとばかり怒りをあらわにする人々、コメンテーター。
そんな声を無理してでもあつめ、自分の怒りのように力強く演じるニュースキャスター。
傾きかけている苦しい国の状況に正面から向き合わず、また独自の世界観に籠もろうとする永○町。
なかなか上位にあがれない阪神タイガース。
青息吐息なぼくの同僚たち。
m○xiの新機能に怒りをぶちまける友人達。
・・・他にもほかにも、いったいどうしちゃったのといいたくなることがある。必要以上に怒りをぶつけることに、なんの意味があるだろう。
そんなみんなをみんな笑わせることはさすがに無理だけど、この曲をあらためて全部聴き、サーカスに人生を捧げた彼のようにはなれなくても、せめて自分なりの道化師(ピエロ)は、演じきってみせたいという気持ちになった。
”いつか本当に 笑いながら 話せる日が来るから”
それまで、ぼくは綱渡りで生きていくよ・・・って、なんのこっちゃ。