食の自然的欲求は強力だが、節制する理性はこれに追随しない

2013年09月06日 | 快楽への欲求を理性的に抑制(節制論3)

2-5-2. 食の自然的欲求は強力だが、節制する理性はこれに追随しない
 意志薄弱を自然必然のせいにしてはならないだろう。「(自然必然の)満腹中枢に背くのは無理だ」と過食の言い訳をすることがある。だが、その中枢を充足させなくても、仮に空腹であっても、ひとは、食事を停止することができる。さらには、その自然の満腹中枢の感度を腹八分に慣れさせて、やがてこれを変えていくこともできる。もちろん、やみくもでは、自然の繊細で強力な制御機能を狂わせることにもなりかねない。理性は、自然を無理やりに従わせるのではない。その自然法則を知悉して因果法則にしたがいつつ、そこに理性目的を差し込み、目的実現のためにと狡知を働かせる。満腹中枢は、血糖値でうごく。はやく血糖値をあげる食べ方をすれば、あるいはゆっくり食べれば、過食の手前で満腹中枢をうごかすことができる。
 「自然の食欲に逆らってはならない」かのようなことをいうこともある。食欲を理性が制御し抑圧して我慢するのではなく、減量のために、薬などを使って、食欲自体を小さく、あるいはなくしていく。食欲に追随したままでは、理性の自律的意志など錆びついてしまいそうである。
 理性的な節制は、食欲の自然・生理をしっかり知って、生の健やかさを維持するに適正となるようにとこれを支配することができる。自律的理性は、おいしい物を早くたくさん食べたいという食欲の自然にしたがいつつも、これのほしいままにはさせない。野菜を多く食べたり、よく噛んで食べるなど食べ方の工夫もして、食欲を制御し、さらには適正なものにと変革していく。