節制の定義

2012年12月22日 | 節制・勇気と正義のちがい・・

2.節制とは
2-1. 節制の定義
 節制の節も制も制限することである。何をそうするのか。人間の動物的根本欲求、食と性の欲求の抑制である。個体の生は食欲をもって維持され、類の生は性欲をもって維持される。この二つの根本欲求がなくなれば、その生は滅びる。生維持をもたらすこの二つの欲求の充足には、大きな快楽のほうびが与えられる。この食と性の欲求と快楽への人間的に節度ある対応につとめるのが節制である。
 時代によって節制の内容自体は異なってくる。食糧難の時代の節制は、現代のような肥満に注意する節制ではなく、ゲテモノ食いはいけないとか、おいしい物ばかりを大食することはいけないといったものになる。性の節制も、時代と民族により相当に異なったものとなる。禁欲的宗教のもとでは、しばしば性の快楽自体が否定され、夫婦でも生殖目的以外の性交は控えるようにとか、不倫・同性愛はもとより自慰すらも止めるようにと説かれた。
 なお、現代の節制は、あそびやギャンブルも対象にしている。いずれも、快楽にのめりこんで生を乱すものである。食と性の節制では快楽の制限が中心になり、その快楽制御という点で、快楽(快感)のとりこになるギャンブルなども節制の領分とするのであろう。
 現代の節制は、古代・中世の食欲と性欲の制御から少し範囲をひろげて次のようにこれを定義しておけるのではないか。
 節制とは、「食欲・性欲、或いは嗜好のものごと・遊び等、快楽を目的とする欲求への耽溺で、生の健全さが損なわれるような時に、その欲求を理性でもって適正なものにと抑制して行くこと」である。