住宅
【第26条】
1 何人も、適切な住宅を得る権利を有する。
2 国は、この権利の実現を推進するため、利用可能な財源の範囲内で、合理的な立法及びその他の手段を講じなければならない。
3 何人も、あらゆる関連状況を考慮した裁判所の命令なくしては、その住居から退去させられ、またはその住居を解体されることはない。立法は、恣意的な強制退去を許容することはない。
本条から第31条までは社会権に関する規定である。その筆頭に住居に関する権利が来ているのは、人間的な生存を支える第一の物質的基盤が住居であることからして的確な体系である。
住居の恣意的な剥奪を厳格に禁ずる第3項は住居権の自由権的側面を示すが、これはアパルトヘイト時代、黒人の住居権が著しく侵害されたことへの反省からであろう。
医療、食糧、水及び社会保障
【第27条】
1 何人も、次のものを得る権利を有する。
(a) 生殖医療を含む医療
(b) 充分な食糧及び水
(c) 自身及び扶養家族を支えることができない場合における社会的扶助を含む社会保障
2 国は、これらの各権利の実現を推進するため、利用可能な財源の範囲内で、合理的な立法及びその他の手段を講じなければならない。
3 何人も、救急医療を拒否されない。
本条は、生存権に関する規定である。第1項で食糧・水への権利が明記されるのは、食糧難・水不足が課題であるアフリカならではのことであろうが、本来は全世界共通課題である。
第1項の諸権利は、前項の社会権としての住居権とともに国が財源の範囲内で立法等の措置を講じて実現する抽象的な権利であるが、憲法規定としては比較的珍しい救急医療の拒否を禁止する第3項は自由権的な規定である。
子ども
【第28条】
1 子どもは、次の権利を有する。
(a) 出生時に名前及び国籍を得ること。
(b) 家族もしくは両親による養育または家族的環境から引き離された場合は適切な代替的養育を受けること。
(c) 基本的な栄養、養護、基本的な医療及び社会サービスを受けること。
(d) 不適切育児、育児放棄、虐待または堕落から保護されること。
(e) 搾取的な労働慣習から保護されること。
(f) 以下のような仕事の遂行もしくはサービスの提供を要求され、または許可されないこと。
(ⅰ) 当該の子どもの年齢にふさわしくないもの
(ⅱ) その子どもの福祉、教育、心身の健康または精神的、道徳的もしくは社会的な発達を危険にさらすもの
(g) 最後の手段として以外は、拘禁されないこと。その場合も、第12条[訳出者注:人身の自由条項]及び第35条[訳出者注:デュ―プロセス条項]の下で子どもが享受する諸権利に加え、子どもは最小限の期間のみ拘禁され、かつ次の権利を有する。
(ⅰ) 18歳以上の被拘禁者からは分離収容されること。
(ⅱ) その子どもの年齢を考慮した方法及び条件で処遇・収容されること。
(h) 子どもに影響を及ぼす民事手続きにおいて、実質的な不公平を結果する恐れがあるときは、国の費用で国選弁護士を付けられること。
(i) 武力紛争で直接に利用されないこと、かつ武力紛争時に保護されること。
2 子どもの最良の利益は、子どもに関わるあらゆる問題において、最高度の重要性を持つ。
3 本条において、「子ども」とは18歳未満の者をいう。
子どもの権利を包括的に厚く保障する本条は、南ア憲法の真髄の一つである。これも、しばしば子どもが過酷な状況に置かれてきたアフリカ的状況を反映しているが、内容上は国連子どもの権利条約にも沿った標準的・普遍的なものである。