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ソヴィエト連邦解体30周年に寄せて

2021-12-26 | 時評

1991年12月26日、それまで米国と並んで二大超大国として世界に君臨してきたソヴィエト連邦が解体されて、ちょうど30周年である。遡ること10年前の20周年―当ブログの開設年でもあった―にも、筆者は本時評欄で記銘の小論をものしたことがある。

20周年は単なる節目の一つに過ぎなかったが、30周年と言えば、一世代の経過を意味する。この間、ロシアをはじめとする旧ソ連圏でも、また全世界においても、旧ソ連時代を知る人は減少し、解体時には幼少だった世代や解体後に生まれた世代、すなわち「旧ソ連を歴史としてしか(としてさえ?)知らない世代」が育ってきている。

それでも、なお旧ソ連時代の記憶が残っている現時点では、ソ連は歴史上の失敗国家とみなされて、顧みられることもほとんどなく、忘却された状態となっている。用語チェックが厳しいはずのメディアの報道でさえ、ソヴィエトと言うべき文脈でロシアと誤称することも時に見られるほどである。

しかし、30周年という一世代の節目は、旧ソ連に対するノスタルジーを排した客観的な回顧―「懐古」でなく―の最大の好機である。なぜなら、二世代近くを経過する50周年では回顧するに遠くなりすぎるからである。「懐古」ならぬ「回顧」であるには、旧ソ連社会を構造的に特徴づけた二大基軸に関して、21世紀の新たな観点から再発見する作業が必要となる。

旧ソ連社会を構造的に特徴づけた二大基軸とは、計画経済と、まさにソヴィエトの名称由来でもある会議体民主主義であったから、この二本柱が回顧=再発見の二大対象ということになる。残念なことに、旧ソ連はこの二本柱を自ら活かすことができず、構造的に失敗したわけである。

そのうち、土台構造を成す計画経済は、旧ソ連式の経済開発一辺倒の視点ではなく、新たに地球環境保全、生態学的な持続可能性の視点からの再発見を待っている。

ソ連邦解体以降の過去30年、資本主義が絶対的テーゼとして世界に拡散する中、社会主義標榜国も一斉に資本主義に適応化していく過程で、地球環境危機の加速化が進んできた。

もはや資本主義経済と環境保全の両立などと言ってはいられない状況に追い込まれている。さらに追い打ちをかけているのが、なお出口の見えない感染症パンデミックである。これも、温暖化した環境に適応し、夏季や温暖な冬季にも構わず蔓延する温暖化適応ウイルスの誕生が一因となっている。

他方、上部構造を成す会議体民主主義は、旧ソ連式の一党支配制によって骨抜きにされることなく、真の民主主義を確立するうえでの再発見を待っている。

これまたソ連邦解体以降の世界で、疑問の余地なく民主主義の標準とみなされてきた選挙議会制が堕落し、議会は社会の革新を阻止する政治的保守装置として退化、ひいては世界の主要国の議会が扇動的かつ反動的な自国第一主義のポピュリスト勢力に占拠されつつある。

党派対立に明け暮れる議会はその諸祖国でも機能しておらず、地球環境問題はもちろん、日常的な課題に対してすら、まともな討議を通じた解決を導くことができず、民衆の信頼を失っているところである。そのことは、民主主義標榜国でも議会軽視の大衆扇動型独裁者が選挙を通じて出現する可能性を作り出している。

そうしたことから、次の重要な節目となるソ連邦解体50周年に向けては、経済開発でなく、環境保全を第一目的とする計画経済及び政党支配によらず、かつ選挙という方法にもよらない会議体民主主義の理論構築と制度設計が課題となる。

・・・とぶち上げたところで、50周年を迎える2041年の世界が実際どうなっているのか、予断は許さない。その頃には、当ブログはもはや存在しないだろうし、筆者が存命しているかもわからないが、現状が惰性的に継続しているなら、世界はより破綻に近づいているだろう。


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