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共産教育論(連載第50回)

2019-04-09 | 〆共産教育論

Ⅸ 教育行政制度

(4)基礎教育教材開発機構  
 基礎教育教材開発機構(以下、教材機構と略す)は世界共同体専門機関である世界教育科学文化機関のガイドラインに準拠しつつ、各領域圏ごとに統一的な教材を開発・発行する民衆会議の専門機関である。言わば、公式の教科書発行機構である。  
 前節でも触れたように、教材機構は民衆会議の監督を受ける専門機関であるが、連合領域圏にあっては、教材機構を連合を構成する準領域圏民衆会議の専門機関として分権的に位置づけることも選択できる。いずれにせよ、教材機構は教育行政体系に組み込まれ、その運営委員(複数)は民衆会議教育委員会によって任免されるが、専門機関として独立性を有するから、民衆会議は教材の内容に関して介入することはできない。  
 一方、現場の教員は同機構が正式に発行した教材のみを使用しなければならず、民間発行にかかる教材や個人で作成した教材を用いてはならない。このような縛りは一見すると統制的だが、市民社会の担い手として共通的な素養の涵養を目的とする基礎教育課程においては、どの教員に付いたかにより生徒間に教育内容のばらつきが生じてはならないので、教材の統一が徹底されるのである。  
 こうした教材作成の唯一的な中枢機関として、教材機構は各科目ごとに教材開発グループを組織し、教材作成者には教員としての十分な経験を持つ者がそのつど選任される。つまり、教材作成者はその初版及び改訂版の作成ごとに選任され、同一人物が継続的に作成することはない。教材内容の惰性化を避けるためである。  
 ちなみに、教材作成者は必ず教員経験者でなければならず、研究者を充てることはできない。基礎教育課程の教材は研究素材ではないから、教員経験のある者が作成することが最もふさわしいからである。研究者の正当な役割は監修業務にある。  
 すなわち教材作成者が作成した各科目教材の素案は、当該科目に関連する熟練した研究者の入念な監修を経て、現時点での学問的な知見に照らして適格な内容を備えているかどうかのチェックを受けなければならない。その目的のため、各科目ごとに専門研究者から成る監修委員会が設置され、監修業務を担う。
 こうして専門研究者の監修に基づき、必要な補正が加えられたうえで教材が完成し、発行される。なお、以前述べたとおり、基礎教育課程の科目の多くが通信制で提供されるので、教材のほとんどは紙書籍ではなく、電子書籍やその他の電子文書の形で末端提供されることになる。


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