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共産教育論(連載最終回)

2019-04-09 | 〆共産教育論

Ⅸ 教育行政制度 

(5)「大学」の自治  
 民衆会議教育委員会は教育制度全般の立案・施行に関わるから、基礎教育課程のみならず、生涯教育課程をも所管する。しかし、生涯教育課程は基礎教育課程に比べても、成人を対象としたより自主的な学修を旨とするから、「大学の自治」のような原理による制度的な自主性の保障が必要である。  
 ただ、知識階級制をベースとしない共産主義的な教育課程にはいわゆる大学制度は存在しない。従って、論理的には「大学の自治」なる原理も存在しないはずである。とはいえ、生涯教育を担う中心的な二つの教育機関、すなわち多目的大学校及び専門職学院の内実は「大学」に近い。  
 しかし、いずれの教育機関も「大学」とは異なり、教授を頂点とした職階制に支配されない。教員はすべて同格的であり、教員としての身分に上下関係はない。また大学のように学部に分岐することもないため、学部長のような中間管理職も存在しない。  
 ただし、専門職学院は専門系統ごとに複数の学科に分かれることが多いため、各学科を束ねる学科長のような中間管理職が置かれる。一方、多様な講座が開設される多目的大学校は講座系統ごとに緩やかな学群を構成するのみで、学群ごとに中間管理職が置かれることもない。  
 多目的大学校も専門職学院も、その基本的な内部組織は共通する。すなわち教員会、一般職員会、学生会の三組織が常置される。一般職員会と学生会は任意団体としての自治会ではなく、教員会と同格的な正式の内部組織である。  
 教員会は常勤教員全員を自動的会員、非常勤教員のうち希望者を準会員とする組織で、教員会長たる常勤教員が自動的に学長となる。一般職員会と学生会は代議人で構成される代議機関であるが、それぞれの利害に関わる事項に関しては内部組織において教員会と同格であり、教員会がすべてにおいて支配権を持つものではない。 
 学内の最高意思決定は、上記三組織の代表者三名から成る代表者会で行なわれる。この決定には民衆会議も介入することはできない。私立の専門職学院の場合は、経営母体となる学校法人が存在するが、学校法人の理事会といえども、代表者会の決定に介入することは許されない。  
 このような意味で、多目的大学校と専門職学院には高度な自治が保障されることになる。これは形式的な意味での「大学の自治」ではないが、実質的・機能的な意味では大人が学ぶ「大学」の自治と呼ぶことができるだろう。それによって、二つの生涯教育機関は外部の干渉から護られるのである。


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