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アメリカ憲法瞥見(連載第14回)

2014-11-07 | 〆アメリカ憲法瞥見

修正第一二条

選挙人は、各々の州で集会して、無記名投票により、大統領および副大統領を選出するための投票を行う。そのうち少なくとも一名は、選挙人と同じ州の住民であってはならない。選挙人は、一の投票用紙に大統領として投票する者の氏名を記し、他の投票用紙に副大統領として投票する者の氏名を記す。選挙人は、大統領として得票したすべての者および各々の得票数、ならびに副大統領として得票したすべての者および各々の得票数を記した別個の一覧表を作成し、これらに署名し認証した上で、封印をほどこして元老院議長に宛てて、合衆国政府の所在地に送付する。元老院議長は、元老院議員および代議院議員の出席の下に、すべての認証書を開封したのち、投票を計算する。大統領として最多数の投票を得た者の票数が選挙人総数の過半数に達しているときは、その者が大統領となる。過半数に達した者がいないときは、代議院は直ちに無記名投票により、大統領としての得票者一覧表の中の三名を超えない上位得票者の中から、大統領を選出しなければならない。但し、この方法により大統領を選出する場合には、投票は州を単位として行い、各州の議員団は一票を投じるものとする。この目的のための定足数は、全州の三分の二の州から一名または二名以上の議員が出席することを要し、大統領は全州の過半数をもって選出されるものとする。代議院にかかる選出権が発生した場合に、つぎの三月四日になる前に大統領を選出しないときは、大統領に死亡その他憲法上執務不能の事情が生じた場合と同様に、副大統領が大統領の職務を行う。副大統領として最多数の投票を得た者の票数が選挙人総数の過半数に達しているときは、その者が副大統領となる。過半数に達した者がいないときは、元老院が、得票者一覧表の中の上位二名の中から、副大統領を選出しなければならない。この目的のための定足数は、元老院議員の総数の三分の二とし、選出には総議員の過半数を要するものとする。但し、憲法上大統領の職に就く資格がない者は、合衆国副大統領の職に就くことはできない。

 本条を含む修正三か条は、主として大統領の選出等に関する憲法本文の規定を補充するものである。いずれも通常の国では議会の立法裁量に委ねるような細目的な事柄であるが、高度な連邦制を採るアメリカでは、連邦全体の元首たる大統領の選出は重要な憲法問題であるため、細目も憲法で規定される。
 本条は、正副大統領の選出方法について、第二条第一項第三号の規定を修正したものである。具体的には、大統領二名連記・副大統領次点制が正副大統領個別投票制に改められたものであるが、それに伴い、過半数得票者が存在しなかった場合の議会による決選投票の方法にも改正が加えられている。なお、本条のうち、代議院が決選投票で大統領を選出する期限は、さらに次の修正第二〇条第一項で、一月二〇日に修正されている。

修正第二〇条

1 大統領および副大統領の任期は、この修正条項が承認されていなければその任期が終了していたはずの年の一月二〇日の正午に終了し、元老院議員および代議院議員の任期は、同じ年の一月三日の正午に終了する。後任者の任期はその時に始まる。

2 連邦議会は、毎年少なくとも一回集会するものとする。会期の開始時期は、法律で別の日が指定されない限り、一月三日の正午とする。

3 大統領に選出された者が、大統領の任期の始期として定められた時に死亡していた場合には、副大統領として選出された者が大統領となる。大統領の任期の始期として定められた時までに大統領が選出されていない場合、または大統領として選出された者がその資格を備えていない場合には、副大統領として選出された者が、大統領がその資格を備えるに至るまで、大統領の職務を行う。連邦議会は、法律により、大統領として選出された者も副大統領として選出された者もともにその資格を備えていない場合について定めを設け、誰が大統領の職務を行うかについて、またはその職務を行う者を選出する方法について、宣明することができる。この者は、大統領または副大統領がその資格を備えるに至るまで、大統領の職務を行う。

4 連邦議会は、法律により代議院に大統領の選出権が発生した場合に大統領として選出することのできる者の中に死亡者が出たとき、および元老院に副大統領の選出権が発生した場合に副大統領として選出することのできる者の中に死亡者が出たときについて、定めを設けることができる。

5 第一項および第二項は、この修正条項が承認された後の一〇月一五日に効力を生ずる。

6 この修正条項は、提議された日から七年以内に、四分の三の州の立法府によりこの憲法の修正として承認されない場合には、その効力を生じない。

 本条は正副大統領の任期や死亡時の処理を中心に、併せて連邦議会議員の任期等についても、規定している。基本的に、一月期を任期の終始の基準としている。また正副大統領が無資格であった場合の処理について連邦議会の立法裁量に委ねている。

修正第二五条

1 大統領が免職され、死亡しまたは辞任した場合には、副大統領が大統領となる。

2 副大統領が欠けたときは、大統領が副大統領を指名し、指名された者は、連邦議会の両院の過半数の承認を経て、副大統領の職に就く。

3 大統領が、元老院の臨時議長および代議院の議長に対し、その職務上の権限および義務を遂行することができない旨を書面で通告したときは、その後大統領が権限および義務を遂行することができる旨を書面で通告するまで、副大統領が臨時大統領としてかかる権限および義務を遂行する。

4① 副大統領、および行政各部の長または連邦議会が法律で定める他の機関の長のいずれかの過半数が、元老院の臨時議長および代議院議長に対し、大統領がその職務上の権限および義務を遂行できない旨を書面で通告したときは、副大統領は、直ちに臨時大統領として、大統領職の権限および義務を遂行するものとする。

4② その後、大統領が元老院の臨時議長および代議院議長に対し、職務遂行不能状態は存在しない旨を書面で通告したときは、大統領はその職務上の権限および義務を回復する。但し、副大統領および行政各部の長または連邦議会が法律で定める他の機関の長のいずれかの過半数が、四日以内に、元老院の臨時議長と代議院議長に対し、大統領がその職務上の権限および義務を遂行できない旨を書面で通告したときは、この限りでない。この場合には、連邦議会は、開会中でないときには四八時間以内にその目的のために集会し、問題を決定するものとする。連邦議会が、大統領が職務上の権限および義務を遂行することができない旨を通告する書面を受理してから二一日以内に、または、連邦議会が開会中でないときは、集会の要請があってから二一日以内に、両議院の三分の二の投票により、大統領はその職務上の権限および義務を遂行することができない旨を決議したときは、引き続き副大統領が臨時大統領としてかかる権限および義務を遂行する。かかる決議がなされなかった場合には、大統領はその職務上の権限と義務を回復するものとする。

 本条は、主として大統領が死亡等により不在または職務遂行不能となった非常時の処理規定である。大統領関連の修正条項では最も新しく、ケネディ大統領暗殺から四年後の1967年に制定された。基本的に副大統領がすみやかに大統領職を継承または代行し、権力の空白を生まないよう配慮している。
 ちなみに、第四項①は、副大統領以下行政府の高官の判断だけで大統領の職務を停止できる「合法的なクーデター」を認めるに等しい独異な規定である。


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