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世界共同体憲章試案(連載第19回)

2019-12-13 | 〆世界共同体憲章試案

〈司法理事会〉

【第69条】

1.司法理事会は、汎域圏司法委員会の審決に対する不服の審判を行う唯一かつ終審の機関である。

2.司法理事会は、上訴が行われたつど、もっぱら当該上訴案件を審理するために設置される。

3.司法理事会は、上訴案件の当事者が包摂されていない汎域圏に包摂される領域圏の中から、抽選により総会が選出した9の領域圏で構成される。

4.司法理事会の理事領域圏は、審理を担当する代表判事を各一名ずつ選任する。

[注釈]
 司法理事会は、汎域圏民衆会議司法委員会の審決に対する上訴がなされたつど上訴案件ごとに設置される点で、他の理事会とは大きく性格を異にする。従って、「〇〇案件に関する司法理事会」という形で、案件ごとに複数の理事会が並立することがあり得る。
 そのため、単一の事務局が常置され、各理事会の事務を管掌する。また、司法理事会の活動は司法審査であるため、実際の審理に当たるのは、専門家の中から理事領域圏が選任する判事である。

【第70条】

第66条第2項の規定により平和理事会が直担する案件のうち、司法的解決が相当と認められる場合、司法理事会が設置される。この場合、前条第3項の規定を準用する。

[注釈]
 司法理事会は、世界共同体直担案件においては、第一審かつ終審機関として設置される。主として、案件が複数の汎域圏内の領域圏にまたがっており、一つの汎域圏内では対処できない場合の対応である。

【第71条】

司法理事会は、当事者たる領域圏以外で、当該案件を審理するに適した場所に設置される。その他、司法理事会の審理に関する細目的な事項は、司法理事会規程でこれを定める。

[注釈]
 司法理事会は、上訴のつど設置される非常置型の理事会であるため、常設の事務局は別として、審理の場所はそのつど全当事者にとって中立的な場所に定められる。

【第72条】

1.司法理事会の審決は終局的であって、すべての当事者はこれに服さなければならない。

2.当事者が司法理事会の審決に反する行動をとった場合、平和理事会は当事者に対して、審決に従うよう求めることができる。当事者がその要求に従わない場合、第5条に基づく措置を発動することができる。

[注釈]
 司法理事会の審決には終局性と強制力があるため、これに従わない当事者に対して、総会は権利及び特権の停止の制裁を科すことができる。

〈緊急調停及び平和工作〉

【第73条】

1.平和理事会は、第47条第1項の規定により、特に緊急的な解決を要すると判断した紛争案件については、緊急的な調停を行うことができる。

2.前項の目的を達するために、平和理事会は、適格性及び中立性を備えた専門家で構成される調停団を組織する。

3.緊急的な調停が決定された紛争の当事者は、調停が行われている間は、武力行使、敵対的政治宣伝、諜報活動その他すべての紛争行動を停止しなければならない。また、調停を妨害するいかなる行動もしてはならない。

[注釈]
 世界共同体体制下では、紛争は前条まで見たような司法的な解決に委ねられることが原則として確立されるため、本条のような緊急調停は例外的な対応となるが、すでに武力紛争が本格化しているなど、司法的解決を待ついとまがない緊急性の高い案件では緊急調停の対象となる。

【第74条】

1.平和理事会は、汎域圏司法委員会もしくは司法理事会の審決を履行するため、または前条による調停の効力を維持するため、平和構築、利害調整、施政支援その他必要な平和工作を紛争地で実施することができる。

2.前項の目的を達するために、平和理事会は、適格性を備えた工作団を組織する。

3.何人も、平和工作団の活動を妨害する行動をしてはならない。

[注釈]
 平和工作は、司法的解決や緊急調停を担保する仕上げの段階と言える。平和工作は一定程度の内政干渉にも及ぶため、国際連合体制では国家主権の観念に阻まれて実施することの難しい対応と言える。


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