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世界共同体憲章試案(連載第18回)

2019-12-12 | 〆世界共同体憲章試案

第12章 紛争の平和的解決

〈通則〉

【第64条】

1.世界共同体を構成する領域圏間または領域圏内の勢力間において、武力衝突に導くおそれのある紛争の発生を認識した場合、当事者たる領域圏は問題の発生を平和理事会及び総会並びに汎域圏全権代表者会議に通報しなければならない。

2.世界共同体に包摂されない領域主体は、自身を当事者とする武力衝突に導くおそれのある紛争の発生を認識した場合、この憲章の定める平和的解決の義務を当該紛争について予め受諾すれば、平和理事会及び総会に解決を要請することができる。

[注釈]
 世界共同体による平和的解決プロセスに入る端緒となる通報手続きである。世界共同体に包摂されない領域主体も、この憲章による平和的解決手続きに従う限り、解決を要請することができるというように、外部にも対してもオープンに開かれている。

【第65条】

1.前条の通報または要請を受けた平和理事会は、当該紛争が恒久平和を脅かしているかどうかを決定するために迅速に調査しなければならない。

2.その他、平和理事会は、いかなる紛争についても、また民際摩擦または紛争に導くおそれのあるいかなる事態についても、その紛争または事態の継続が恒久平和を脅かすおそれがあるかどうかを決定するために調査することができる。

[注釈]
 世界共同体による紛争解決は、当事者からの通報または要請を受けて、平和理事会が調査に着手することから始められる。他方、平和理事会は、職権によっても紛争の調査に着手できる(第2項)。

【第66条】

1.前条第1項の調査により、当該紛争が恒久平和を脅かしていると判断した場合、平和理事会はその解決を紛争当事者が包摂される汎域圏民衆会議に付託しなければならない。恒久平和を脅かすおそれがあると判断した場合は、その解決を汎域圏民衆会議に勧告することができる。

2.前条第1項の調査の結果、当該紛争が特に緊急的な解決を要すると判断した場合、または前項の規定によっても解決が困難な事情があると判断した場合、平和理事会は、当該紛争を直担案件に指定することができる。

[注釈]
 世界共同体における紛争解決の原則は、まず当該紛争が発生した汎域圏内での自律的な解決に委ねることである。例えば、アフリカでの紛争は、汎アフリカ‐南大西洋域圏での解決にまずは委ねられる。ただし、紛争内容が深刻で特に緊急性を要する場合や、複数の汎域圏にまたがるような紛争については、平和理事会の直担案件となる。

〈汎域圏による司法的解決〉

【第67条】

1.汎域圏民衆会議は、前条第一項の規定により付託され、または勧告された紛争の解決に当たるため、司法委員会(以下、「汎域圏司法委員会」という)を常置するものとする。

2.汎域圏司法委員会は、汎域圏に包摂される各領域圏から公平に選出された判事委員で構成されなければならない。その他汎域圏司法委員会の組織及び手続の細目については、各汎域圏の条約でこれを定める。

[注釈]
 各汎域圏には民際司法機関としての司法委員会が常置される。これは、現行国連制度で言えば、国際司法裁判所を地域的に分割したようなものと考えればよい。なお、「裁判所」という構制をとらないのは、民衆会議は司法権をも掌握する総合施政機関だからである。

【第68条】

1.汎域圏司法委員会は、平和理事会が第66条第1項の規定により紛争の解決を付託した場合、直ちに審理を開始しなければならない。

2.汎域圏司法委員会は、平和理事会が第66条第1項の規定により紛争の解決を勧告した場合、紛争当事者の少なくとも一つが正式に提訴することにより、審理を開始する。

3.汎域圏司法委員会の審決は、すべての紛争当事者を拘束する。審決に不服の当事者は、世界共同体司法理事会に上訴することができる。

[注釈]
 汎域圏司法委員会の審理は、平和理事会からの「付託」か「勧告」かで開始方法が異なり、「付託」なら即時に、「勧告」なら少なくとも一つの紛争当事者からの提訴を待って開始される。不服の際の上訴もできる。


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