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共産教育論(連載第10回)

2018-10-29 | 〆共産教育論

Ⅱ 義務保育制度

(3)義務保育課程の内容
 共産教育における義務保育課程は、義務教育としての基礎教育課程の準備段階として位置づけられるわけだが、前回述べたように、その対象年齢層としては生後6か月から満6歳までとなる。通算すれば、約6年というかなり長い年月にわたる。
 ただし、基礎教育課程のように1年ごとの標準学年制は採らず、0歳児から1歳児までを対象とする乳児課程、2歳児から3歳児までを対象とする早幼児課程、4歳児から5歳児までを対象とする幼児課程の年齢別三課程で構成される。
 このうち、乳児課程は対象者がまさに乳児であることからして、個別的な託児ケアの要素が強いことは否めないものの、共産教育における保育は教育的要素が軸であるため、乳児心理学や乳児教育学の知見を生かした第一言語(母語)の習得に重点を置いたプログラムが実施される。
 これに続く早幼児課程は、第一言語習得を本格的に展開するとともに、社会性を育てるための社会性教育が開始される義務保育の中間段階である。そのため、乳児課程に引き続き個別性を保ちながらも、徐々にグループ学習のような手法のウェートが増やされる。
 とはいえ、共産教育における社会性とは多様な他者の受容にあるから、強制的な集団同調ではなく、他者との対等かつ寛容な関わり方の体得に重点が置かれた教育となる。
 義務保育課程最終段階の幼児課程は、基礎教育課程へつなぐ橋渡しの課程であるから、継続的な社会性教育とともに、一定程度教科学習の予備的な内容も導入される。特に初歩の数理的な理解である。といっても形式的な計算力に重点を置く「算数」に偏らず、数という概念を根本的に理解させるための学習である。
 ところで、共産教育では、反差別の観点からも障碍児と非障碍児との統合教育が目指されながらも、障碍児の特性に配慮した特別教育も実施されるが、義務保育段階では障碍児と非障碍児を区別せず、完全な混合保育が行なわれる。これによって、事物弁別能力が未発達な乳幼児の段階から、障碍者に対する自然な受容的態度を涵養することが可能となる。
 ただし、障碍の原因となっている疾患に応じて常時医療的ケアを必要とする障碍児に対しても、障碍児専用保育所が用意されるのではなく、訪問看護師・ヘルパーなどが通常の保育所に付き添うサービスが提供される形で、統合保育が保障される。


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