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共産教育論(連載第11回)

2018-10-30 | 〆共産教育論

Ⅱ 義務保育制度

(4)保育師の役割及び養成
 保育の専門家は日本語では「保育士」と呼ばれ、公式資格化されてきた。資格呼称において接尾辞「師」と「士」を微妙に使い分けるのは日本の資格制度特有の慣例であるが、ここで「師」でなく、「士」が使われるのは、保育職が教育より福祉の領域に位置づけられている証左である。
 しかし、保育が義務化され、義務教育の前段階として位置づけられる共産教育における保育専門職は教育専門職の一環として位置づけられるべきであるので、「士」ではなく、「師」を用いて「保育師」と称されるのが適切である。
 この変化は単なる呼称の形式的な変更にとどまらず、その役割の変容をも反映する。すなわち、保育師は子どものケアのみならず、前回述べた三つの段階に応じて、それぞれにカリキュラム化された教育も実施する教師としての任務を負うことになる。
 加えて、保育師は保護者の育児に関する相談業務にも応ずる育児カウンセラー的な役割をも担う。前章で見たように、共産主義社会の教育では「社会が子どもを育てる」原則に従いつつ、保護者は社会の委託に基づき、一定の養育義務を負うため、公的な保育と家庭での養育とが分離されることなく、保育師は担当児の家庭内養育に関しても支援的に関与するのである。
 さらに、前回も触れたように、義務保育課程では障碍児・非障碍児の統合保育を行なうため、保育師は障碍児の療育に関する知識と技能をも持ち合わている必要がある。この場合、保育師が家庭訪問して保育する訪問保育も一部導入される。
 このように保育師が教師+カウンセラーとしての広範な役割を負うとなれば、その専門性は保育士よりも高いものが要求されることになるため、養成も教員に準じて正規の教員養成機関で行なわれなければならない。保育師の養成機関に関しては、次章で教員養成機関について述べる箇所にて改めて触れることにする。
 もっとも、義務保育制度となれば、対象児が多数にのぼることを考慮し、保育師の監督下にその業務を補助し、保護者との連絡業務なども担う保育助手のような補助職の配置も必要となろう。保育助手は専門資格の保育師とは異なり、一定の講習の受講だけで取得できる認定資格である。


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