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持続可能的計画経済論(連載最終回)

2018-09-11 | 〆持続可能的計画経済論

第10章 計画経済と政治制度

(4)世界共同体の構成単位
 本章の最後に、世界共同体全体における計画経済体制の概要をまとめておく。すでに述べたように、世界共同体は世界政府のような中央集権的な単一の主権団体ではなく、分権化された構造を持っている。
 そうした世界共同体の基礎構成単位となるのが領域圏であるが、領域圏は在来の国に相当する政治単位であるとともに、世界経済計画の枠内での計画経済主体でもある。例えば、日本領域圏は日本の政治単位であるとともに、日本領域の計画経済主体である。
 この領域圏のレベルにはそれぞれ単一の経済計画機関として経済計画会議が置かれ、世界経済計画機関が設定した経済計画に沿って、各領域圏内の経済計画を策定することになる。世界経済計画機関と領域圏経済計画会議とは完全な上下の指揮命令関係にはないが、後者は前者の受託機関のような関係に立つ。
 グローバル計画経済は、こうした縦関係の計画だけでなく、横のつながりとしての経済協調関係を内包しているが、そうした経済協調は地理的・文化的に共通項を共有する近隣領域圏がまとまる連関地域を単位に行なうことが合理的である。
 そのような領域圏の連関地域的な協力体となるのが、汎域圏である。汎域圏自体は、計画経済主体ではなく、計画経済を補充する相互経済協調主体であるので、固有の経済計画機関を持たない。
 汎域圏の分け方には種々あり得るが、筆者はかねてより、世界をアフリカ‐南大西洋、ヨーロッパ‐シベリア、アメリカ‐カリブ、東方アジア‐オセアニア、西方アジア‐インド洋の五つに区分することを提案している(拙稿参照)。
 このような連関地域の経済協力体は現在でも存在しているが、それはしばしば連関地域ごとの経済競争関係に転じ、最悪の場合、排他的な経済ブロックと化し、国際戦争の要因ともなる。他方で、国境を越えてグローバルに跋扈する多国籍資本はこうした連関地域経済協調とは調和しない。
 グローバル計画経済における汎域圏は競争的単位でもなければ、旧ソ連が主導した旧コメコンのような国際分業圏でもなく、相互補充的な経済協調に特化した、グローバル計画経済に特有の単位と言えるだろう。

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