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持続可能的計画経済論(連載第24回)

2018-07-03 | 〆持続可能的計画経済論

第5章 計画経済と企業経営

(5)三種の監査系統
 資本主義的市場経済下の企業監査は、しばしば利潤追求に傾斜する経営機関に対して従属的、微温的となりがちで、外部監査も含めて企業不祥事の防止に十全の機能を果しているとは言い難い。また、環境監査を独立させる発想も現状ほとんど見られない。 
 持続可能的計画経済下の企業体における監査業務は、大きく三系統に分かれる。一つは業務の法令順守状況や事業遂行状況全般を監査する業務監査で、もう一つは会計監査、三つ目は事業活動の環境的持続可能性への適合性を監査する環境監査である。
 このうち、二番目の会計監査は外部会計士に委託して中立的に行われる。厳密に言えば、会計監査は一般会計監査と環境会計監査とに分かれるが、このうち外部会計士が取り扱うのは一般会計監査である。
 一番目の業務監査と三番目の環境監査は、企業体の内部機関によって行われる。企業体の監査機関のあり方は、企業体の種類ごとに異なる。これについては前章で企業の内部構造を論じた際、すでに先取りしてあるが、ここで改めて整理すると―
 まず計画経済の対象となる公企業である生産事業機構にあっては、多人数の監査委員で構成される業務監査委員会と環境監査委員会が別個に設けられる。大規模な私企業である生産企業法人にあっても、同様に業務監査役会と環境監査役会が並置される。
 これら業務監査機関は、会計監査人の業務に対する監査も担う。環境監査機関は環境会計監査のほか、日常業務の環境的持続可能性適合も合わせて随時監査する。環境監査機関のメンバーには環境経済調査士(環境影響評価に基づいて経済予測・分析を行う公的専門資格)の資格を有する者を最低2名含まなければならない。
 こうした監査機関は緩やかな合議体であり、経営責任機関のように代表職を置かず、あえて各監査委員が重複して職務を行うが、必要に応じて経営責任機関に対して共同監査勧告を行うことができるほか、業務の差し止め請求訴訟を提起することもできる。
 他方、中小企業体の生産協同組合にあっては最低3名の監査役を置けば足りるが、そのうち最低1人は環境監査役でなければならない。なお、零細の協同労働グループにあっては、最低1名の外部監査人を任命するが、業務監査と環境監査は区別されない。

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