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民衆会議/世界共同体論(連載第9回)

2017-09-22 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第2章 民衆会議の理念

(4)民衆会議とソヴィエトの異同
 前回は民衆会議と議会制を対比して、民衆会議の特質を明らかにしたが、今度は旧ソ連の国名にも冠されていたソヴィエト制との対比という視点からも、民衆会議の特質を示してみたい。
 民衆会議は民衆代表機関たる会議制という点では、ソヴィエト制により近い性格を持っている。ソヴィエト制に関しては、かつて『旧ソ連憲法評注』においても、憲法を通して詳しく見たところであるが、それは本来、議会制を超えた民主的な制度として構想されたものであった。
 ソヴィエトも単なる立法機関ではなく、国家の全権を統括する総合的な統治機関であったところ、ソ連では、周知の通り共産党が指導政党として全権を掌握していたため、本来の機能を果たせば議会より民主的たり得たはずのソヴィエトが共産党の追認機関と化してしまった。
 このような歪みを正すには、一党制であろうと、多党制であろうと、民衆と権力の間に政党が介在する政党政治を排さなければならない。民衆会議はいかなる形態であれ、政党政治と無縁であることを本質とする。前に半直接代的議制と規定したことには、そうした意味も込められている。
 さらに、ソヴィエト制の場合、議会制を超えるといいながら、そのメンバーの代議員は選挙によって選出される形態に落ち着いた。仮に非政党ベースで選挙するにせよ、有権者が意中の人に集団投票する選挙という手法には必ず党派的な要素を帯びてくるので、選挙制を採用すれば、それは議会と類似のものとなるだろう。
 そこで、民衆会議は選挙制でなく、抽選制による。つまり、代議員の選出に偶然性の要素を取り込むことで、党派性の混入を防ぐのである。ただし、代議員の適格性の担保は免許制のような能力証明を通じて行われる。
 また、ソヴィエトは総合的統治機関でありながら、行政府や司法府も別個に組織され、事実上は三権分立制に近い仕組みとなっていたが、民衆会議は行政や司法の機能も民衆会議が統合的に直接担当することを徹底する。
 より究極的には、ソヴィエトがなお国家の制度を前提に国家の最高権力機関と位置づけられていたのに対し、民衆会議は国家を前提としない民衆によるより直接的な統治の機関であることは、決定的な相違点となる。

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